韓国の牛肉事情

企画情報部企画課


 代表的な牛肉料理の1つである骨付
きカルビの焼肉。肉が焼け始めると店
員が手際よくハサミで切り分ける。

    
 牛肉のみならず牛骨も貴重な食材の1つ。
街の食堂では、牛や豚の骨を使ったスープで
さまざまな食材が煮込まれる。
 首都ソウルの繁華街:明洞(ミョンド
ン)には焼肉店の看板がひしめき合い、
24時間営業の店も登場している。1人当
たり3万〜4万ウォン(約3〜4千円)
も出せば十分にお腹が満たされる。最近
では、競争の激化により肉質をアピール
するために韓牛と掲げる店が増えている。
ひとくちメモ

 韓国の「食」のイメージを問われれば、一般的には“キムチ”や“カルビ”な
どの姿が思い浮かぶはずである。しかし、“カルビ”などの焼肉料理に代表され
る牛肉が韓国の食生活に広く浸透し始めたのは、ここ20年程のことといわれてい
る。

 韓国の牛肉需要は、1988年のソウルオリンピック開催に伴う国内経済の発
展が、大きな影響を与えたとされている。1980年代当時の1人当たりの年間牛肉
消費量を見ると、わずか2.6kgであったものが、90年には4.1kgに増加し、2000
年には8.5kgとこの20年間で3倍以上の伸びを見せている。

 2001年1月には、韓国の牛肉市場が自由化されたことで、牛肉の輸入量増加が
見込まれており、消費量はさらに拡大すると見込まれている。しかし、一方では、
輸入牛肉に対抗して国内各地で「高級肉」としての韓牛(韓国原産の肉牛)の積
極的な品種改良や育成が進められている。
 韓牛の市場セリ風景。格付等級は枝肉重量
と肉質により決められる。重量では重いクラ
スからA〜Dの4つに区分され、品質では脂肪
交雑などに応じて1+〜3までの4つに区分
される。最上級とされるのは「A1+」とな
る。

 韓国では、現在、国内に114ヵ所のと畜場
が設置されているが、このような枝肉市場を
併設しているものは、わずか14ヵ所となって
いる。このうち6ヵ所が農協により運営され、
残り8ヵ所は民間での運営となっている。

 セリにかけられる枝肉の重量は平均して17
0〜200kg程度。枝肉価格で見ると、韓国原産
の「韓牛」が「ホルスタイン種」に比べ2倍
程度となることから、市場運営費をまかなう
上でも、市場セリは「韓牛」が中心となる。

 現在の平均相場は、韓牛の枝肉ベースでキ
ロ当たり14,000〜15,000ウォン(約1,400〜1
,500円)程度。最上級とされる「A1+」ク
ラスではキロ当たり17,000ウォン(約1,700
円)以上に跳ね上がる。このところの堅調な
生体価格を反映して、枝肉価格は上昇傾向に
ある。


 最近では、韓国産農畜産物を専門に扱うスーパーも登場した。このスーパーで
は主に「韓牛」を中心に販売し、その量は1日に約20頭分になる。

 2001年1月の牛肉輸入自由化に伴い牛肉の原産地表示が義務化されたことから、
販売される製品には、「韓牛」の表示が付けられている。

 新鮮さをアピールすることで、このスーパーでの牛肉の販売量は2〜3年前に
比べ2倍近く伸びている。最近では、贈答用の詰め合わせ製品の販売も始まった。


 ソウル市内の百貨店。近郊3ヵ所
の契約農場で、生産から肥育までを
一元的に管理している。出荷される
韓牛の肉質を高めるため、日本の和
牛の遺伝子を用いた品種改良が行わ
れている。年間約3,000頭が出荷さ
れ、これらはすべてこの店の各店頭
で販売される。

 販売する牛肉の品質をアピールす
るために、店頭のビデオを用いて韓
牛の生産過程を説明し、消費者の購
入意欲をかき立てている。この百貨
店では、1日当たり約1頭分の韓牛
を販売し、その売上げは1,200万ウ
ォン(約120万円)に達する。


 自由化以前は、専門店でのみ販売が許可された輸入牛肉であったが、自由化に
伴いどの店でも販売が可能となった。味付け製品などの多くは、安価な輸入牛肉
が用いられている。一方で、高級志向も徐々に広がりつつあり、30代後半の公務
員の年間平均所得が3千万ウォン(約300万円)といわれる中で、100グラム当た
り8,500ウォン(約850円)という高級牛肉も登場している。


 街中の食肉販売店。かつての食肉
販売の中心であったが、消費者の食
肉購入が、生鮮食品を扱うスーパー
やデパート中心になるに従い、都市
部を中心に年々、減少傾向にある。

 赤い室内灯は、肉の色を新鮮に見
せるための手段であるが、実際には
ショーケースにはあまり製品を置か
ず、注文を受けて冷蔵庫から取り出
す場合が多い。


 韓国で韓牛肥育が本格的に開始されたのは、1970年代に入ってからと言わ
れている。その後、経済の急激な成長を背景に、国内各地では積極的な生産基盤
の整備が進められている。最近では、京畿道(キョンキドウ)、江原道(カンウ
ォンドウ)など北部地域を中心に、輸入牛肉に負けないための韓牛のブランド化
も始まった。


 ソウルから南へ約60km、京畿道安城(アンソン)市で200戸の韓牛肥育農家
を束ねる「韓牛会」会長の禹(ウー)さん。自らも350頭の韓牛を肥育し、
「韓牛会」としては年間2,000頭を出荷する。平均出荷体重は約650〜700kg、大
手百貨店との契約により販路は安定している。最近の韓牛価格の上昇で、農家の
生産意欲も高まっており、100頭以上を肥育する大規模経営が増えてきた。韓牛
に対する消費者の信頼感を維持することが大切と訴えている。

元のページに戻る