アルゼンチン牛肉振興機関、具体化の動き


2001年12月、牛肉振興機関設置法が国会を通過

 アルゼンチン政府は97年以降、国産牛肉の輸出振興および牛肉の国内需要促
進などを目的とした新しい機関の設置法案の審議を重ねてきたが、昨年末ようや
くアルゼンチン牛肉振興機関(協会)設置法が国会を通過し、2001年12月11日に
公布された。17日の官報掲載から数日後にデ・ラ・ルア政権が崩壊、その後の政
治経済の混乱で同設置法は事実上の動きが見られなかったが、2002年2月1日に
EU向け生鮮牛肉の輸出が解禁されたことを契機に、農牧水産食糧庁は新機関の具
体化に向けて動き出したようだ。

 新機関設置の背景には、アルゼンチンの牛肉生産量および消費量の低下、97年
の口蹄疫ワクチン接種清浄国の認定とそれに続く米国の生鮮、冷蔵および冷凍牛
肉の輸入解禁(米国枠設定)が挙げられる。


牛肉振興基金を設置し、宣伝活動や調査研究などの各種事業を実施

 同設置法では、国家機関ではない公的機関としてアルゼンチン牛肉振興協会を
設置し、生産者や食肉処理加工業の競争力を向上させ、国産牛肉の輸出と国内の
牛肉需要促進のための助成を行うとし、同協会が直接もしくは間接的に牛肉取引
を行うことは禁止されている。
 また、後述する同協会理事会の管理下に牛肉振興基金が置かれ、以下の目的に
基金が充てられる。@協会の目的達成に必要な手続きや協定締結の促進と実施、
Aバランスの取れた食生活に牛肉消費をどう位置付けるかといった視点での調査
研究、B畜産業界の利害調整を行い宣伝活動や国内外の牛肉製品などの見本市へ
の参画、C各種会議やセミナーの開催、D人材育成のための研修制度創設、E国
内外の関係機関との人的・技術的交流の促進と実施、などである。


牛肉振興基金の財源は、肉牛生産者及び食肉処理加工業者から徴収

 牛肉振興基金の財源は、肉牛生産者から、取引頭数に対し国が公表する生体牛
指標価格の0.20%を、また、と畜を行う食肉処理加工業者から、同0.09%をそ
れぞれ上限として徴収した金額を充当し、年間約1,200万ペソ(約8億1,600万円
:1ペソ=68円)が見込まれている。徴収細則は別途定められるようである。

 協会の運営管理は理事会が行い、8名の理事は、生産者代表として農業4団体
から4名、産業界代表として食肉処理加工業者からなる主要5団体から3名、農
牧水産食糧庁の代表1名が選ばれる。理事会は年度予算、活動計画の作成と牛肉
振興基金の管理を行う。

 アルゼンチン経済が完全変動相場制に移行した初日の2月11日の為替相場は1
ドルが1.8〜2.2ペソで売買され、当初懸念されたペソ暴落は起こらなかった。
しかし今後の為替相場や物価の動きは不安含みである。去勢牛価格は、昨年末か
ら最安値を記録したが、今年に入り持ち直し、今のところ堅調に推移している。

 不安定で厳しい政治経済情勢の中で新機関設立の土台は準備されたが、新しい
機関が具体的な姿となる時期が注目される。

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