難問が山積する今年のブロイラー業界(フィリピン)


業界団体が政府支援を求める内容の報告書を発表

 フィリピン養鶏業者連合会がこのほどまとめた報告書によると、今年の同国の
ブロイラー業界は、前年から続くひなの供給過剰や生産コスト増、安価な輸入鶏
肉への懸念などにより先行きに不安を募らせている。同連合会は、世界貿易機関
(WTO)農業合意などによって国内産業が苦境に立たされる中、こうした状況を
打開するための政府による支援の必要性を訴えている。

 フィリピンにおける2000年のブロイラー飼養羽数は前年比16.5%減の2,902万
羽で、97年の4,656万羽をピークに減少を続けている。他のアセアン各国との比
較でも、インドネシアの5億3,087万羽はもとより、タイの7,448万羽、マレーシ
アの7,951万羽(99年)より大幅に少ない。2000年の1人当たりの鶏肉消費量は
7.1kgで微増傾向にあるが、マレーシアの29.5kg(99年)、タイの13.5kgには
まだ大きく水をあけられている。


養鶏農家の損失を招く数々の要因

 同連合会がまとめた報告書によると、今年のブロイラー業界は、@ひなの供給
過剰、A経済不振による消費減退、B生産コストの上昇、C鶏肉の小売価格の上
昇、D米国産を中心とした安価な鶏肉輸入などの問題に直面し、不利なスタート
を切らざるを得ないとし、ひなの供給が高水準であることから、長期化する不況
の下で鶏肉消費が減退すれば養鶏農家の損失は、ますます大きくなると警告して
いる。さらに、そうした状況に陥る前に、増羽し過ぎたひなを出荷前に淘汰する
インテグレーターも出始めているとし、今のブロイラー業界の状態が極めて深刻
であるとの認識を示している。

 ここ数年のフィリピンの経済は、97〜98年に深刻化した経済危機の底を脱した
とはいえ、長引く不況の下で国民の経済活動には閉塞感が広がっている。通貨ペ
ソの下落は飼料など生産資材の輸入価格の上昇をもたらしており、現在、ブロイ
ラーの農家販売価格が1s当たり40ペソ(約112円:1ペソ=2.8円)であるの
に対し、生産コストは前年比26.3%高の同48ペソ(約134円)とコスト割れの状
況を引き起こしている。一方、労賃や光熱費などの引き上げでブロイラーの小売
価格は上昇傾向にあり、2000年の1s当たりの小売価格は、95年と比較して12.
4%高の80ペソ(約224円)となった。同連合会は、継続的な小売価格の高騰は消
費者の鶏肉離れにつながるとして警戒感を強めている。

 また、2000年に米国産を中心とした安価な鶏部分肉の輸入急増で市況が暴落し
た教訓から、業界関係者は輸入の動向にも神経を尖らせている。現在、米国産鶏
肉は、経済の回復が進むロシアへ再び仕向けられるケースが増え、フィリピンを
はじめとする東南アジア諸国への輸出は減退しつつあると言われる。しかし、業
界関係者は政府に対して、密輸を厳しく取り締まるとともに安価な鶏肉の輸入規
制に取り組むよう要請している。


業界の構造的な問題の解決に政府の支援を期待

 報告書は、同国のブロイラー業界が構造的に抱える問題として、@生産や価格
の動向を把握するための情報が不足しており、需給の変動に対する的確な対処が
困難であること、A飼料など国産の生産資材の品質が低く、割高な輸入品に頼ら
ざるを得ないこと、BWTO合意やアセアン自由貿易圏(AFTA)構想による自由化
の促進で国内産業の一層の衰退が進んでいることなどを挙げている。同連合会を
はじめとするブロイラー業界は、こうした状況の打開に向けて、アロヨ大統領に
対して輸入資材の関税率引き下げを要請するなど政府の支援に期待を寄せている。

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