米国農産物輸出、2002年度は微増の見込み


米ドル高と経済回復見込みで輸入額を上方修正

 米農務省(USDA)は2月21日、2002年度(2001年10月〜20
02年9月)における農産物貿易見通しを発表した。これによれば、全体の輸出
額は前年度比3.2%増の545億ドル(7兆3,575億円:1ドル=135円)で、前回
発表時(昨年11月)から変更はなかったものの、輸入額については約10億ドル
(約1,350億円)引き上げられ、前年度比2.6%増の400億ドル(約5兆4,000億
円)と予想されている。輸入額が引き上げられたのは、米ドル高の継続と米国経
済の回復に伴う消費者の支出増が見込まれるためである。


豚肉輸出は史上最高額に、牛肉は下方修正

 畜産物の輸出額については、豚肉、家きん肉製品および牛皮などの増加見込み
により、前回の予測値から2億5千万ドル(約338億円)引き上げられ、ほぼ前
年並みの127億ドル(約1兆7,145億円)と予想されている。

 豚肉の輸出は、史上最高の15億ドル(2,025億円)に達すると予測されている
が、これには牛肉の代替需要の強い日本向けの伸びが寄与するものと見られる。
米国の豚肉輸出増は、肥育豚販売価格にもプラスの影響を与えており、ミズーリ
大学のグリムス教授の研究によれば、2001年(暦年)は、輸出額の増加が一頭当
たり6.03ドル(約814円)の追加的な価値を与えたと試算されている。一方、米
国産豚肉は、ロシア、メキシコなどの市場では、引き続き他の輸出国との厳しい
競争にさらされるとUSDAは見ている。

 牛肉輸出については、日本向けの早急な回復はないとの見込みにより、前回発
表時から約2%下方修正され、26億ドル(3,484億円)とされた。

 家きん肉製品では、国内生産の増加に加えて、ロシア、中国およびメキシコな
どの輸出先の需要が堅調であることから、26億ドル(3,484億円)と高水準の輸
出が見込まれている。

 一方、レッドミート製品の輸入額については、前年より3億ドル(約402億円)
増の44億ドル(約5,896億円)と予測された。なお、USDAは長期予測において、
2009年には数量ベースでも米国が牛肉の純輸出国に転ずると試算している。


多国間から二国間まで、いずれの形の貿易協定も推進

 一方、USDAのペン次官は、USDA主催の農業観測会議において、米国農業生産者
の粗現金販売額の約4分の1が輸出によって生じており、輸出の依存度は米国経
済における平均値より2倍以上上回っていると述べ、農産物輸出の重要性を改め
て強調した。また、同次官は、農産物輸出を取り巻くアジェンダとして、@WTO
新ラウンドの推進、A米州自由貿易地域(FTAA)などの地域自由貿易協定の検討、
Bチリ、シンガポールその他の国との2国間自由貿易協定の推進、CEUとのホル
モン牛肉問題その他の2国間貿易問題の解決、DロシアのWTO加盟問題などを挙
げた。


今後の農産物貿易、特に中国を注視

 USDAのコリンズ首席エコノミストも同会議で演説を行い、米国の農産物貿
易に関し、今後数カ月において注目すべき項目として、@世界経済の動向、A南
米での作物生育状況、B米国の次期農業法案の動向、C米国で3月に発表される
作付意向調査結果などを指摘した。さらに、中国について、@その輸出入動向、
A3月20日から施行されるバイオテクノロジーに関する規制の透明性およびBW
TO協定の履行状況(特に国内生産に影響を及ぼす穀物や油糧種子作物の生産者
へのインセンティブに関するもの)に言及し、同国を特に注視していることをう
かがわせた。

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