供給過剰によりブロイラー価格が下落    ● ブラジル



海外需要の増加などから生産量は増加傾向が続く

 ブラジルブロイラー用ひな生産者協会(APINCO)によると、2001年1〜12月の
鶏肉生産量(骨付きベース。以下同じ)は、海外需要の増加などから生産意欲が
高まり、前年比9.8%増の656万7千トンと過去最大となった。こうした傾向は今
年に入っても引き続き、2002年第1四半期(1〜3月)の鶏肉生産量は、前年同期
比14.5%増の174万4千トンとなった。これを月別に見ると、3月は前年同月比17.
8%の62万トンとなり、月間生産量では過去最大となった。

 しかし、消費者の購買力が低下する中、輸出需要を当て込んだ生産増が急ピッ
チで進んだことから、需給のバランスが崩れ、ブロイラー生産者価格が下落した。
パウリスタ養鶏協会(APA)の統計によると、サンパウロ州における生体1kg当た
りのブロイラー生産者価格は、1月の1.12レアル(約55円:1レアル=約49円)か
ら3月は0.97レアル(約48円)、4月はさらに下落し、0.89レアル(約44円)とな
った。

 また、ブロイラーの主要飼料であるトウモロコシや大豆粕の価格上昇などから、
2002年1〜4月のブロイラー生産コストは、前年同期比19.5%高の0.98レアル(約
48円)となり、月別に見ると、3月と4月は生産コストが生産者価格を上回った。
国内需要が低迷する中、飼料価格の上昇によるコスト増加分を生産者価格に転化
することは困難とされ、生産量の増加傾向が今後も続けば、養鶏部門の収益性は
さらに悪化するものとみられる。


鶏肉輸出量は増加、輸出価格は下落

 一方、ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)が発表した輸出動向によると、2002
年1〜3月の鶏肉輸出量(骨付きベース。以下同じ)は、前年比18%増の32万2千
トン、同輸出額(FOBベース。以下同じ)は、11%増の3億1,170万ドル(約383億
4千万円:1ドル=約123円)となったものの、1トン当たりの平均輸出価格は、5.
5%安の968ドル(約11万9千円)となった。また、4月の輸出量は、3%増の10万3
千トンと前年同期をかろうじて上回ったが、輸出額は、13%減の9,290万ドル(
約114億3千万円)、平均輸出価格は15.5%安の902ドル(約11万1千円)となった。
こうした輸出価格の下落要因としては、輸出市場へのブラジル産鶏肉の供給量が
増加したことに加え、欧州において牛海綿状脳症(BSE)問題で減退していた牛
肉需要が回復傾向にあることなどを挙げている。


国内生産者は生産調整への対応に着手

 サンタカタリナ州農業経済企画院(ICEPA)の報告書によると、2002年の鶏肉
需給について、生産量は前年比9.6%増の720万トンと予測しているが、需給のバ
ランスを保つには、輸出量が10〜15%、国内消費量が6.0〜8.0%の増加が必要で
あるとしている。しかし、生産が増加傾向にある中で、消費者の購買力は低く、
昨年の輸出市場は活況を呈したが、最盛期は過ぎている。国際市場における鶏肉
在庫は増加し、国内のスーパーも鶏肉を客引きの目玉商品に使っている。

 こうした状況の中、同報告書によると、ブラジル鶏肉業界では、生産調整の話
し合いが始まっており、同国の鶏肉主要生産州であるパラナ州の生産者団体は、
すでに生産調整に着手しているとしている。5月における生体1kg当たりのブロイ
ラー生産者価格は0.91レアルと前月をわずかに上回ったものの、上昇幅が少ない
ことから価格が回復傾向にあるとはいえないが、APINCOによると、主要生産州で
4月にひなの飼養羽数を減少させる動きが始まり、5月にさらにその動きが強まっ
たとし、今後供給量の減少に伴い価格が回復する可能性があるとしている。また、
欧州における牛肉需要の回復傾向などの影響で輸出市場に昨年のような勢いはな
いものの、ABEFの統計では、2002年第1四半期のロシア向けは約2.7倍の3万トン
と急増しており、同期に限って見れば、ロシアは、サウジアラビア、日本に続く
第3番目の輸出先となっている。需給バランスの安定が望まれる中、鶏肉業界に
よる生産調整への対応やロシアなど新興市場向け輸出拡大が今後の需給動向にど
のような影響を及ぼすか注目されるところである。



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