農相、米国向け牛肉に割当枠配分へ      ● 豪 州



豪州牛肉業界で懸案となっていた米国向けの牛肉輸出枠の配分方法を発表

 トラス農相は5月15日、かねてから豪州牛肉業界で懸案となっていた米国向け
の牛肉輸出枠の配分方法を発表した。これによると、輸出業者ごとに、米国向け
輸出実績を基に全体枠の6割を配分し、残りの4割をその他向け輸出実績を基に配
分することを基本とし、さらに一部の業者については調整するしくみとなってい
る。

 その輸出枠配分に用いる過去の輸出実績は、2000年11月1日から2001年10月31
日とし、配分の適用は、2002年1月1日に遡り実施されるものである。また、2003
年度中に2004年度以降についての配分方法を再検討するという決定となった。

 食肉諮問協議会(RMAC)は、今年3月に一度勧告したが、業界の合意不足を理
由にトラス農相が再検討のため棄却したため、4月に14項目からなる再勧告をし
ており、今回の決定はこれを受けたものとなっている。


配分方法に関する追加項目の概要

 トラス農相による追加項目のポイントは、RMACの前回勧告時に牛肉業界内部で
調整できなかった対米輸出を主体とする輸出業者の取り扱いであり、それらに対
して、対米向け牛肉輸出量が前年輸出実績で9割以上の輸出業者に対し優先的に9
割を配分すること、不公平感を是正するため、6割:4割配分を行った後、前年度
実績に対し下限として85%以下および上限として140%以上の激変緩和的な制限
措置を設けたことの2点である。

 最終的な概要は次のとおりである。

・今回の輸出割当て方法は2002年および2003年に適用する。2004年については20
  03年度中に、配分方法を見直す。
 その場合は、政府がRMACに意見を聞く。
・枠の配分は、2000年11月1日から2001年10月31日間の輸出業者ごとの輸出船積
 み記録を基礎に算出し、2001年1月1日から適用する。枠は取引可能とする。
・枠の配分は米国向け6割、米国以外4割を基本に、輸出業者ごとに対前年比で8
 5%の下限および140%の上限を設けて行う。
・政府保留分として、2002年および2003年は約1万5千トンを不測の事態に備え政
 府が管理する。その配分申請は、枠の告示後30日以内に受け付ける。
・枠の管理経費は枠の使用者が負担する。
・連邦政府は引き続き米国政府に対し枠を広げることまたは撤廃することを要求
 する。


実施は9月以降との見通し

 今回のトラス農相の発表に対して、上院では、野党の労働党と民主党が結果と
して一部の米国向け輸出業者に配分が手厚くされたことに対し6月に聴聞会を開
くことを決定し、反意を表している。また、豪州肉牛生産者協議会(CCA)も3年
に満たない期間での配分方法を見直すトラス農相案について、牛肉業界に混乱を
来すとし嫌悪を顕にしている。

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、本年4月末時点での米国向け船積
数量は、121,974トンとなっており、米国の輸入割当数量378,214トンに対し32%
を消化しており、米国の良好な輸入価格と生産の減少による品薄感や日本の需要
の低迷により、米国への牛肉輸出数量は増加し、今年度は昨年よりも早い時期に
輸入割当数量を超過するとの見方もあり、早期実施が待たれているが、本件は、
現国会会期中には審議に必要な日数を確保できず、8月に再開される国会に持ち
越されるとみられており、配分の実施は9月以降となる公算が大きい。



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