家畜の輸入禁止措置に輸入業者が反発    ● マレーシア


口蹄疫侵入阻止と発生原因経路の洗い出しが目的

 マレーシア農業省は、家畜疾病防除の観点から、3月8日以降におけるすべて
の家畜の輸入を一時的に禁止する措置を講じた。これに対し、生体牛などの輸入
に携わる家畜輸入業者グループは、輸送中の家畜に係る損失が全く考慮されてお
らず、経営が破たんする可能性があるとして、同省にその再考を強く求めた。

 今回の措置は、主に口蹄疫の侵入阻止を念頭にとられたものであり、9日に輸
入業者をはじめとした畜産関係者に公示された。この措置は、すでに売買契約が
成立し、輸出港に係留されている家畜はもとより、現在輸送中の家畜にも適用さ
れる極めて厳しいものとなっている。また、同時に、過去3年間の輸入申請書等
を精査し、これまでに国内で確認された口蹄疫などの原因となった輸送経路を洗
い出す作業も行うとしている。この輸入禁止規則に違反した輸入業者は、5千リ
ンギ(約17万5千円:1リンギ=35円)の罰金または懲役2年、あるいはその両方
が科せられるとしているが、先に政府間の輸出入協定が締結されたミャンマー産
の家畜については、その禁止対象から除外されている。


タイ、ミャンマーと協同歩調で口蹄疫撲滅の計画

 当措置の発表に先立つ3月4〜9日、マレーシアのペナン島で国際獣疫事務局
(OIE)の第8回アセアン地域分科委員会が開催された。これに出席したエフェン
ディ農業大臣は、隣接するタイおよびミャンマーと協同歩調をとり、2007年まで
の5年間で3ヵ国内の口蹄疫を撲滅する計画が進行中であることを明らかにした。
同大臣によると、ボルネオ島北部に位置する東マレーシア地域(サバ州およびサ
ラワク州)はすでに口蹄疫の撲滅宣言を行っており、近隣諸国との農産物貿易を
促進していく上では、国内だけではなくアセアン全域での口蹄疫撲滅を図る必要
があるとしている。今回の輸入禁止措置は同委員会の閉会後直ちに出されており、
エフェンディ農業大臣が掲げる口蹄疫撲滅施策の第一弾に位置付けられるものと
思われる。


輸送中の家畜も対象で輸入業者に甚大な被害

 一方、唐突に輸入禁止の事実を突きつけられた家畜輸入業者は、同措置の発効
がその公示とほぼ同時期であったとして当惑を隠せないでいる。多くの生体牛な
どが輸送の途上にあり、そうした在庫の整理のための猶予期間が与えられなかっ
たことが農業省への不満をかき立てる結果となった。家畜輸入業者で作るグルー
プは3月12日、タイとの間で売買が成立した約1,400頭の生体牛に係る損失は170
万リンギ(約6千万円)に上るとして、農業省に対し同措置の再考を強く求めた。
また、豪州から700頭の生体牛を輸送中であった別グループは、もし、豪州へ牛
を返却せざるを得ない場合には、輸送中に要した飼料と併せて莫大な損失を計上
することになると訴えた。


疾病防除のための監視機関も設置

 輸入禁止措置の公示とともに、農業省獣医局の下に疾病防除のための監視機関
が置かれることも発表されている。今回の措置が解除された後も、輸入業者は同
監視機関から衛生証明書など新たな書類の提出を義務付けられることになってお
り、このことも政府に対して不信感を抱かせる原因の一つになっているものと思
われる。

 輸入業者のこうした強い抗議に対して、農業省は今のところコメントを避けて
いるが、同省が打ち出した今回の措置は、口蹄疫撲滅の第一歩として強硬な手段
を用いた例と言え、同国のこの問題の解決に向けた意気込みがうかがえるものと
なっている。口蹄疫撲滅は、東南アジア各国の畜産に携わる人々の悲願であるだ
けに、2007年の目標に向けて、今後も厳しい施策が続くものと思われる。

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