口蹄疫模擬演習「ミノタウロス」実施      ● 豪 州



連邦、州政府、業界団体などから1,100人以上が参加

 豪州では9月9日から13日までの1週間にわたって、口蹄疫発生を想定した机上の
模擬演習、「ミノタウロス」(ミノタウロス:ギリシア神話における人身牛頭の
怪物)が実施された。これは、昨年7月の豪州政府評議会(COAG)でその実施につ
いて合意され、今年3月にその計画が公表されていたものである。また、今回の演
習に先立つ5月には、発生時の隔離措置や内外の貿易・取引問題の責任分担体制な
どを検証するために、ミニ演習も実施されていた。

 今回の演習は、今まで豪州で実施されたこの種のものとしては最大規模とされ、
連邦や州・準州政府、業界代表団体などから1,100人以上が参加した。演習のシナ
リオは、口蹄疫がクインズランド州南東部ボゥデザート近郊の農家で発生し、ニ
ューサウスウェールズ(NSW)州北部に広がった後、患畜の運搬車両を通じてビク
トリア州にまで拡大。最終的に、感染農場が454戸、殺処分家畜が82万2,504頭と
いう大規模な発生を想定したものとなった。

緊急時の手続きは現実に即し、想定外のコンピュータの故障も

 演習の初日と2日目においては、主に最初の撲滅と制御行動に関する意思決定プ
ロセスが試され、3日目以降は、貿易・取引上の問題や影響の緩和に関する問題に
焦点があてられた。

 演習では、主要な輸出市場が豪州産食肉の輸入を禁止したり、人間には影響が
ないにもかかわらず国内の食肉消費が1週間で30%も減少するなどのような、さま
ざまな仮想情報にも対応した模様である。

 また、NSW州の情報連絡センターや業界団体で、シナリオでは想定されていなか
ったコンピュータの故障が実際に起きたため、代替通信システムとして電話やフ
ァクシミリを使わざるを得なかったような事態が起きたことも報道されており、
机上の模擬演習であっても、緊急時の連絡手続きなどは現実に即して実施された
ようだ。

農相、演習の成功と参加者の取り組み意識に満足

 連邦政府のトラス農相は、この演習の終了に際して、「今後の豪州家畜産業に
とって非常に価値あるもので、豪州が家畜疾病対応への国際的な水準を確立する
ために有効であった」としており、演習の成功と、参加者の取り組みに対するプ
ロ精神や真剣な態度に対して満足の意を表している。

 また、同農相は、今回の演習が、各政府間の意思決定に焦点を合わせて実施さ
れたものであったため、現実の家畜疾病に対する迅速で効果的な対応には、疑わ
しい兆候を報告する農家の行動が不可欠であることから、個々の農家に非常に大
きな役割があると強調している。

 総じて演習の目的は達成されたとみられているが、一部には、模擬演習として
は大規模なものであったものの、ワクチン接種の実施時期や場所、殺処分された
家畜の処理、野生動物による疾病の拡大など、未解決あるいは検証されていない
問題が多く残っているという意見もあるようだ。

 なお、この演習に関する報告は、今年11月のCOAGの会議で実施される予定であ
る。


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