ブロイラー企業の寡占化の進行に懸念広がる ● インドネシア



生産者団体、大規模インテグレーターの操作でひな価格が高騰と指摘

 インドネシアのブロイラー産業は、90年代後半の経済危機の影響で、いったん
は再生不可能かと思われるレベルにまで規模が縮小した。99年のブロイラーの飼
養羽数は3億2,400万羽に落ち込み、経済危機の影響が現れる直前の97年の6億4,1
00万羽からほぼ半減した。しかし、鶏肉は同国で最も好まれる食肉であることか
ら産業の再構築が急がれ、2001年には5億2,400万羽(予測値)にまで回復するな
ど力強い復活を遂げつつある。

 こうした中、同国では初生ひな価格が急騰し、ブロイラー業界に今後の鶏肉価
格への影響を懸念する声が広がっている。首都ジャカルタに隣接し、同国最大の
養鶏地帯である西ジャワ州の8月の初生ひな価格は、1羽当たり3,200ルピア(約4
8円:100ルピア=1.5円)となり、7月と比較して77.8%もの大幅な上昇を記録し
た。インドネシア養鶏農家協会(PPUI)や全国養鶏農家協会(PPAN)などの生産
者団体は、これは大規模インテグレーターが意図的にひな価格を操作した結果で
あるとして、寡占化を急速に進める大企業が自らの利益のみを追求する姿勢に遺
憾の意を表明している。また、これらの団体は、一般の養鶏農家の平均飼養羽数
は約2千羽であり、そうした小規模農家の経営コストにおけるひなの損益分岐点
は1,600ルピア(約24円)前後であることから、一刻も早く妥当な価格でひなの
供給を行うよう求めている。

インテグレーターは関与を否定、価格上昇は需給バランスの結果と主張

 これに対し、大規模インテグレーターで作る鶏飼養者協会(GPPU)は、現在の
ひな価格は純粋な需給バランスの下で形成されているとして、価格操作への関与
を否定する姿勢を崩していない。同協会は、鶏肉の国内需要が急増する一方、初
生ひなの供給は現在のところ、1週間当り2,500万羽が限界であるとしている。ま
た、大規模インテグレーターは近年、傘下の契約農家との関係強化を進めており、
そちらに優先的にひなを供給せざるを得ないため、一般の小規模農家へ供給でき
る羽数の減少を避けることは困難になりつつあると弁明している。

 さらに、ひな需要を増大させる一因として、最近は日本をはじめとした海外へ
鶏肉を輸出する企業が現れ始めていることが挙げられる。こうした企業は、近年
の世界的な鶏肉の需要増を背景に鶏肉生産を拡大する動きを見せており、このこ
ともひな価格の高騰に一層拍車をかけているものと思われる。

生産者団体は種卵の輸入に踏み切る動き

 ひな価格の高騰が長期化する事態を防ぐため、PPANは種卵の輸入に踏み切る動
きを見せている。種卵の輸入価格は1個当り0.16ドル(約20円:1ドル=124円)
で、ふ化に係るコストを勘案しても、採算が確保できると試算されている。また、
西ジャワ州政府も、通関時検査の迅速化など種卵の輸入をサポートする体制を早
急に整えていくことを表明している。

 しかし、業界の一部からは、種卵を輸入しても、ひなの供給までに一定の時間
を要すことから、現状を打開する切り札にはなり得ないとの悲観的な意見も上っ
ている。また、小規模農家の多くから、今回の初生ひなの価格高騰に対する政府
の関与の希薄さが指摘されている。このため、PPUIをはじめとした生産者団体は、
ひな価格を米やガソリンなどと同様に政府のコントロール下に置くことを要望し
ている。生産者団体は、現在の状況が続けば15〜20%の小規模農家が淘汰される
として、ようやく実現されつつあるブロイラー産業の再生を後退させないために
も、政府による力強いイニシアチブを求めている。


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