農産物直売市場数、8年前の約1.8倍に増加   ● 米 国



市場数増加の理由は、農家と都市住民をつなぐ役目を果たしていること

 米農務省(USDA)は9月30日、「National Directory of Farmers Markets 200
2」を公表した。これは、全米の農産物直売市場(ファーマーズ・マーケット)の
開設者、場所、開催日程などを州別に掲載しているもので2年ごとに公表されてい
る。市場数は、94年の1,755から毎回増加し、2002年には約1.8倍の3,137となって
いる。ベネマン農務長官は会見で、「農家と都市住民をつなぐ役目を果たしている
ことが、ファーマーズ・マーケットの人気をますます高めている要因かも知れな
い。このような取り組みは、農家にとって、新鮮な地元の農産物を直接消費者に
提供する場を与えるとともに、副収入を得る良い機会となっている。一方、消費
者にとっては、日々の生活において農業の果たす役割の重要性を理解できる場で
もある」と述べた。

生産者の参加は、中小規模農家が中心

 USDAの2000年のファーマーズ・マーケット調査によれば、参加するのは中小規
模の農家が多く、1万9千戸の農家が、収入源はファーマーズ・マーケットからの
みと報告しており、中小規模農家の重要な収入源となっている。また、ファーマ
ーズ・マーケットの82%は、マーケットすべての運営費用を売上収入で賄うこと
ができ、補助金などの助成は受けずに自立運営が行われている。さらに、ファー
マーズ・マーケットの58%においては、フード・スタンプ・プログラム(低所得
者などにクーポン券を給付し、これを用いての食料品との引き換えが可能。)や
USDAが92年から行っているWIC(Women, Infants, and Children:低所得層の妊
婦、出産直後の母親および5歳以下の幼児の栄養改善のためのプログラム)の参
加者を対象にしたFMNP(Farmers Market Nutrition Program:ファーマーズ・マ
ーケットで利用可能なフード・スタンプ・プログラムと同様のクーポン券の給付
)などの利用が可能となっている。

USDAもファーマーズ・マーケットを開催、生産者と消費者の両方
に軸足をおいた取り組み

 USDAでは、96年以降、自らもファーマーズ・マーケットの運営を行っている。
USDA本部(ワシントンDC)などで開催されるファーマーズ・マーケットについて
も、USDAのホームページ(http://www.ams.usda.gov/farmeresmarkets)で参加希
望農家の要件などを掲載している。それによれば、自ら地元で生産した新鮮で高
品質な農産物(野菜、果実、卵、チーズなど)を販売することを目的としている
農家が、参加資格を有しており、参加者はすべての開催日において農産物を販売
するよう求められている。また、参加費用の代わりとしてフード・スタンプ・プ
ログラムなどのための農産物を寄付するよう求めている。このように、ファーマ
ーズ・マーケットに対し、行政側が、自らあるいはFMNPなどの実施を通じて積極
的に関与していることは、生産者と消費者の両方に軸足をおいた取り組みとして、
非常に興味深いものがある。

 米国民は、スーパーマーケットに陳列された商品を巨大なカートに山のように
購入するというイメージがあるものの、全米各地に広がるファーマーズ・マーケ
ットの人気は、生産者の「顔の見える農産物」を購入したいという消費者の気持
ちが表れたものではないだろうか。


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