卵用鶏種鶏の輸入枠制度により卵価回復    ● タ イ


減羽による生産調整が奏功せず、種鶏の供給削減による生産抑制へ

  タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、今年1月、卵用鶏の原原種の輸入枠
制度を導入したが、制度の導入後、7ヵ月余が経過した現在、養鶏業界ではいくつ
かの問題が生じている。同局は、この輸入枠制度は、輸入割当(IQ)ではなく、
局と大手輸入各社との合意に基づく「自主的な」制度であるとしており、何ら強
制力を持たないため、世界貿易機関(WTO)の協定上の問題はないとしている。し
かし、同国の畜産分野では、同局が検疫などを通じて強い影響力を有しているた
め、同局の指導は、事実上の強制力を有している。

  タイでは、昨年来、鶏卵の供給過剰が続いており、DLDは、生産者に減羽によ
る生産調整を指導し、需給の安定化を図ろうとしてきた。しかし、需給状況が
一向に安定化に向かわないため、同局は、種鶏の供給を絞ることを目的として、
原原種鶏の輸入枠制度を導入した。同局によれば、原原種鶏の雌1羽は平均55羽
の原種鶏を生産するため、原原種鶏の輸入制限による卵用鶏の削減効果は高いと
している。さらに、同局は、この制度の導入により、原原種鶏の輸入状況を継続
的にモニターして大手インテグレーターによる種鶏・鶏卵市場の独占を阻止する
こともねらっている。

枠は使用目的に応じて割当、4ヵ月間ですでに6割を消化

  今回導入された輸入枠制度は、生産した原種鶏ひなやコマーシャル鶏ひなの使
用目的により、@自家使用目的の輸入(希望数量の全量を割当)、A販売目的の
輸入(希望数量の7割を割当)の2種類に分かれており、さらに、需給の変動対策
用としてDLDが一定数を留保している。今年の割当実績は、@の自家使用目的の
ものはSTPCとウドムチャイ農場のみで、Aの販売目的のものは7社で合計208,362
羽、局の留保分は10万羽となっている。なお、各農場等の希望羽数、配分羽数、
1〜4月の輸入状況は、以下のとおりであり、年当初の4ヵ月間で、すでに配分数量
の6割が輸入されているため、今後、各業者から追加配分要請が見込まれている。



一般農家のひな不足で価格は上昇、それに伴うひな生産の増加で供給
過剰への懸念も

  一方、養鶏振興協会は、DLDに対し、一般農家では、たとえ種鶏場に購入予約し
ていても、卵用鶏のひなが入手できないほどのひな不足が生じていることを報告
し、卵用鶏のひなや幼鳥の価格の継続的な上昇に対し、何らかの措置が必要であ
るとしている。7月末現在の卵用鶏ひなの市場価格は、1羽当たり19〜22バーツ
(約55〜64円:1バーツ=2.9円)となっており、DLDの推計によるひなの平均生産
費である10〜12バーツ(約29〜35円)を大幅に上回る高値となっている。このた
め、大手種鶏場ではひなの生産を増やしており、このまま推移すれば6〜7ヵ月後に
は再び供給過剰に陥り、卵価が大幅に下落する懸念がある。


  今回の輸入枠制度の導入により、鶏卵価格が3割程度押し上げられたとの見方が
ある一方、政府が保護しようとしている一般農家でひなが入手困難になっており、
このまま推移すればDLDの目的とは裏腹に、鶏卵生産の大手への集中化が加速され
るおそれがある。


元のページに戻る