2002年の生乳生産、3年連続の減少 ● アルゼンチン


2002年の生乳生産量は前年比で大幅減

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)によると、2002年における同国の生
乳生産量は、前年比14.0%減の815万キロリットルと大幅な減産となる見込み
である。同国の生乳生産量は、99年に1,033万キロリットルに達したが、2000
年に前年比5.0%減、2001年も同3.5%減となり、2002年は減少率がさらに拡大
した。また、2002年における主要乳業メーカーの生乳取扱数量(全国の生乳生
産量の約60〜65%に相当)は、前年比14.4%減の488万キロリットルとなった。

 SAGPyAは、2002年の大幅な減産要因として、@近年の乳価低迷による収益性
の悪化により酪農家の廃業や酪農から大豆などの耕種への転換が進んだこと
(この背景には、国際的な穀物相場の上昇に加え、2002年1月の通貨切り下げ
後、ペソ建ての穀物生産者価格が上昇したことなどがある)、A通貨切り下げ
でコスト高となった輸入資材や補助飼料への依存度が減少し、結果的に、生産
性の低下につながったこと、B水害や厳冬により酪農生産地帯において牧草の
生育状態が悪化したこと、C経済危機による消費者の購買力の減退、粉乳やチ
ーズなどの輸出価格の下落などにより、酪農家の生産意欲が減退したこと、な
どを挙げている。


生乳の大幅な減産などで乳価は上昇

 アルゼンチンでは、近年における乳価低迷で酪農家の収益性が著しく悪化し、
さらに通貨切り下げで、生産コストが高騰したが、2月の乳価(乳業メーカー
による生乳1リットル当たりの生産者支払価格)は0.145ペソ(約6円:1ペソ=
約39円)と低水準に抑えられたことから、酪農家は3月、乳価引き上げを求め、
乳業メーカーによる製品の出荷を妨害するなど、示威行動を全国規模で展開し
た。しかし、5月には、主要酪農生産州において当事者間の合意で、4月に納入
された生乳の価格を0.24ペソ(約9円)とすることが決定されるなど事態は収
拾に向った。こうした動きに加え、水害や厳冬などによる生乳の減産により、
2002年におけるペソ建ての乳価は、5月が前年同月比63.6%高の0.27ペソ(約
11円)、12月が同約3倍の0.38ペソ(約15円)と上昇傾向で推移した。


牛乳・乳製品輸出は増

 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)の統計によると、2002年におけ
る牛乳・乳製品の輸出量(製品重量ベース。ただし、牛乳は粉乳換算)は、前
年比48.5%増の157,400トンと大幅に増加した。SAGPyAでは、この増加要因と
して、@通貨切り下げによる価格競争力の向上、A経済危機による国内需要の
大幅な減少、B主要企業の膨大なドル債務返済に必要なドル貨の確保などを挙
げている。輸出量を国別に見ると、ブラジル向けが78.8%増の6万8,500トン、
アルジェリア向けが約3.3倍の2万4,600トン、ヨルダン向けが71.7%増の8,900
トンなどとなった。


2003年の生乳生産はやや回復か

 SAGPyAでは、2003年の生乳生産量は、乳業メーカーが生乳の供給確保を図る
ために、乳価を0.40ペソ(約16円)程度で維持するとみられること、粉乳の輸
出価格が上昇していることなどから、約860万キロリットルと前年に比べ、や
や回復するものと予測している。

 また、国内需要が低迷する一方、最大の輸出先であるブラジル向け輸出が増
加するとみている。これは、ブラジル新政権が優先課題に掲げる飢餓対策の実
施に伴い同国の需要が増大することが見込まれるためである。ブラジルでは、
99年の通貨切り下げ後、生産資材の価格が高騰したが、それを吸収できるだけ
の乳価引き上げが行われていないことから、今後、乳価に対する最低保証価格
制度などが導入されない限り、飢餓対策を実施するに十分な需要を自国で賄う
のは難しいとSAGPyAはみている。

元のページに戻る