EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○増加するバターの介入在庫量


● ● ● 政府在庫は10年ぶりの高水準 ● ● ●

 EU委員会によると、2002年11月のバター介入在庫量は、政府在庫が前年同月
比338%増の18万7,500トンと大幅に増加し、92年6月以来の高い水準を記録し
た。一方、民間在庫については、10月には15万5,900トンと今年最高となった
が、11月には8万3,700トンと前年同月を24.3%下回った。

 バターの介入在庫制度(政府在庫)は、市場価格支持を目的として、一定条
件以上の製品について、市場価格が2週間連続で介入価格の92%を下回ったと
きに、入札により買い上げる制度である。買い上げ価格は介入価格の90%以下
で、市場価格が92%に達したときには買い上げは停止される。また、民間在庫
は、バターの夏期の余剰と冬季の不足の調整を目的として、毎年3月15日(200
2年は3月1日)から8月15日までの間に買い上げ、最低90日、最高210日間の保
管を行った業者に対して助成される民間在庫補助制度(APS)に基づくもので
ある。

◇図:バターの介入在庫量の推移◇


● ● ● 好調な生産と消費の低迷が要因 ● ● ●

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、バターの在庫量が増加し
た要因としては、フランスやドイツ、イギリスなどの主要生産国において2002
年前半の生産量が増加したことや、消費が低迷していることなどが挙げられる。
特に消費の低迷については、加工向けの減少が顕著であるとしている。これは、
EUにおける食品業者のバター使用に対する助成金が2001年中頃から下落してい
ることが要因とみている。

 消費量は国別の格差が大きく、2001年の消費量が、スペインが1人当たり0.7
キログラムであるのに対し、ドイツでは同6.5%、フランスでは同8.2%となっ
ており、スペインなどでの消費量が増加すれば、在庫の減少につながる可能性
もあるとしている。


● ● ● 国際的な需要は停滞、価格は回復の兆し ● ● ●

 ZMPが公表している乳製品国際価格の推移を見ると(左ページグラフを参照)、
バター価格は、2001年末頃から極めて低い水準で推移していたが、2002年4〜7
月を底に上昇に転じている。世界的な経済の停滞や乳脂肪を嫌う傾向にあるこ
とから、バターの国際需要は停滞している。一方で、豪州では干ばつによる生
乳の大幅な減産なども伝えられており、バター輸出地域であるオセアニアの生
産動向によっては、国際価格が上昇し、在庫量に影響する可能性もある。

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