中国の食品小売部門の動向


 米農務省海外農業局(USDA/FAS)が公表した報告書によれば、中国の食品小
売部門には、伝統的ないわゆる「ウェット・マーケット」が地方都市を中心に
根強く存在する一方で、大・中都市ではスーパーマーケット、ハイパーマーケ
ット(超大規模店)およびコンビニエンス・ストアなどの業態が確実に増加し
ている。中国のチェーン・ストア協会の統計に基づくと、2001年に同国で食品
小売チェーン店を展開している会社の数は91で、これらの収入額の合計は1,16
0億元(約1兆7,400億円:1元=約15円)に達した。店舗数については7,953で、
うちスーパーマーケットが3,328、ハイパーマーケットが271、コンビニエンス
・ストアが3,342、ウェアハウス・ストア(店内装飾をほとんど省いた低コス
トの店舗作りで、商品を安く提供する小売業の形態)が60、などとなっている。

 主要な業態ごとの動向の概要は次の通り。



スーパーマーケットは中小都市で展開、外資は少数派

 スーパーマーケットのチェーンは、タイのCPグループが所有する「ロータ
ス(Lotus)」などの例外を除き、そのほとんどをLianhua(中国最大の小売会
社)やHualianといった中国の企業が占めている。ハイパーマーケットやコン
ビニエンス・ストアの店舗展開が大都市中心であるのに対し、スーパーマーケ
ットは中小都市が主となっている。スーパーマーケットは、一般的に冷凍・冷
蔵食品の広範な品揃えを特色としているが、野菜や食肉などの生鮮食料品につ
いては、品質が一定ではないことから、顧客の多くはウェット・マーケットな
ども併用しているものとみられる。


外資主導のハイパーマーケット、米ウォルマートの進出も

 ハイパーマーケットは、フランスのカルフール(Carrefour)、ドイツのメト
ロ(Metro)、オランダのマクロ(Makro)などの外資系小売会社が中国に導入
したものである。LianhuaやNong Gong Shangなどの中国企業も独自のチェーン
展開を始めたものの、外資系企業が依然として主要な位置を占めている。小売
業界の巨人と称される米国のウォルマート(Wal-Mart)も中国南部を皮切りに、
大連、ハルビンなどの北部都市での店舗展開を行っている。

 また、ハイパーマーケットでは、通常の品ぞろえに加えて、さまざまな種類
のインスタント食品(ready-to-eat products:すぐに食べられる食品)や、
売店での作りたての軽食販売を特色として打ち出しているところもある。


コンビニエンス・ストア、上海ではほぼ飽和状態に

 コンビニエンス・ストアは、Lianhuaなどの中国企業が大半を占めるほか、日
本のローソンとHualianのジョイント・ベンチャーなども見られる。コンビニエ
ンス・ストアのほぼ半数が上海に集中していることから、同市場をすでに飽和
状態と判断し、北京、江蘇省や浙江省にある比較的裕福な都市などでの出店を
計画する企業がある一方で、外資系コンビニエンス・ストアの中には、上海で
の出店をいまだに計画しているところもあるようだ。

 コンビニエンス・ストアの販売品目は、スペースなどの問題で限られたもの
となっているが、通常食品の冷蔵、冷凍設備が完備され、また、店内に電子レ
ンジを設置しているところも増加している。これらの店舗では、インスタント
食品、乳飲料、タバコなどの販売に重点が置かれているほか、日本と同様に、
店舗への集客を促進するため、請求書支払いの取り扱いやテレホン・カードの
販売などのサービスも行われている。

(参考)中国の主要食品小売会社(2001年)

資料:USDA/FASがチェーン・ストア協会(CSA)の統計資料に基づき作成
 注:CarrefourとWal-Martは推計

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