ベルギーのフォアグラ生産

ブラッセル駐在員事務所 山田 理、吉江 昭、関 将弘


グリム村:ブラッセルの東50キロメートル
ユピニー村:ブラッセルの南東45キロメートル
ひとくちMemo

 フォアグラといえばベリゴール地方やアルザス地方などフランス産が有名で
ある。しかし、隣国のベルギーやハンガリー、ブルガリアなどの東欧諸国でも、
フォアグラ生産が盛んに行われている。ベルギーでは、南東部のワロン地方
(フランス語が公用語の地域)が産地として知られており、12の農場がフォア
グラ生産に取り組み、地域の特産品の1つとなっている。
 ガチョウから得られたフォア
グラが最高級品として知られて
いるが、ベルギーでは主にアイ
ガモ(バーバリー種(雄)のカ
モと北京種(雌)のアヒルの交
雑種)を用いてフォアグラ生産
が行われている。S農場(ブラ
ッセルの東50キロメートルのグ
リム村)では、95年からフォア
グラ生産に取り組んでおり、多
いときで400羽以上のアイガモを
飼育している。

ひなの導入
 アイガモのひなは、生後すぐに主にフランスから輸入され、到着後、約3週
間は温度管理された屋内で飼育される。U農場(ブラッセルの南東45キロメー
トルのユピニー村)は84年からフォアグラ生産を始めた。徐々に規模を拡大し
た結果、現在ではフォアグラの生産から加工、販売も手がけ、直売店舗25店を
抱える会社組織に成長している。
ガヴァージュへの準備期間
 屋内で飼育された後、ガヴァー
ジュと呼ばれるえさの強制給与に
耐えられる体力をつけるため、約
10週間、主に屋外で飼育される。
アイガモに十分な運動をさせるた
め、えさ場と水飲み場は意図的に
離れた場所に設置されている。U
農場では、年間8〜10万羽を飼養
し、約5トンのフォアグラを生産
している。
ガヴァージュ
 準備期間が終わると、自由に運動できない
ような狭いケージに移され、約14日間のガヴ
ァージュが開始される(S農場からガヴァー
ジュを委託されているB農場)。

    
 アイガモには1日2回、蒸したトウモロコシ
を主体としたえさが与えられる。同じ人間が、
決まった時間にえさを与えることで、ガヴァ
ージュのストレスが軽減される。
 えさの強制給与の前に、砂のうの状態(前
に給与したえさの残り具合)を確認し、給与
量を調整する。ベルギーでは、ガヴァージュ
を行うためには、農林大臣の許可書が必要で、
動物福祉の観点から、カモの快適性を重視し
たさまざまな規則が設けられている(B農場)。
 
 ガヴァージュを終えたアイガモは、と殺時
の苦痛を与えないため、電気ショックで失神
させた上で失血死させる。通常約5キログラ
ム前後のアイガモから、約500グラムのフォ
アグラが得られる。生のまま真空包装で販売
されるほか、アンティエと呼ばれるフォアグ
ラを丸ごと加工(コニャックなどでの風味づ
け)したものや、パテなどの加工品に使用さ
れる。(U農場)

    
 フォアグラを取り出した後のと体も、薫製
各種の加工品の原料として活用される。(U
農場)
 動物福祉の観点からフォアグラ生産に対し、
マイナスイメージを持つ人もいるが、フォアグ
ラ生産で最も大切な点は、ガチョウやカモにで
きるだけストレスを与えないことだという。豊
かな自然環境があって初めて、ガチョウやカモ
の特性を活用したフォアグラ生産が可能となる。

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