食品基準庁、OTM処分対策の見直しを勧告 ● イギリス


処分から検査に切り替えて良いとする勧告

 イギリス食品基準庁(FSA)は7月10日、政府に対して同国で現在実施されて
いる30カ月齢以上(Over Thirty Month : OTM)の牛の処分対策を牛海綿状脳
症(BSE)検査に切り替えて良いとする勧告を行った。イギリスでは現在、OTM
処分対策に基づき、30カ月齢以上の牛はと畜後焼却処分されており、市場に流
出することはない。今回の勧告は、30カ月齢以上の牛も、BSE検査により陰性
と判断されれば、食肉として市場に流通できるようにするというものである。

 OTM処分対策は、消費者をBSEの危険から防ぎ、消費者の牛肉に対する信頼を
回復するため、イギリスで実施されている3つの主なBSE対策の1つである。導
入されたきっかけは、96年3月、海綿状脳症諮問委員会(SEAC)による報告で
あった。この報告では、30カ月齢以上の牛肉は、すべての骨の除去を義務付け
るべきであるとされたが、イギリス政府はすべての骨を除去することは難しい
と判断し、同年3月に30カ月齢以上の牛肉を市場に流通させず処分する規則を
制定した。これに基づき、EUではイギリスの行うOTM 処分対策に係る費用につ
いて、財政支援する計画を定めた規則が制定され、96年5月からOTM処分対策が
実施されている。なお、イギリスで現在実施されているその他の主な防疫対策
るは、と畜時におけ特定危険部位(SRM)の除去および肉骨粉飼料の使用禁止
措置である。

BSE発生件数減少で見直しを開始

 FSA は2002年7月、OTM 処分対策などをはじめとして、BSE 対策の実施により
BSE患畜の発生が減少していることから、OTM 処分対策の見直しを開始した。
FSAはOTM処分対策見直しについての専門グループを設け、BSE検査の信頼度など
について調査・検討を重ねてきた。その結果、現在実施されている BSE検査は、
厳格な検査実施により、誤った診断結果を示していないとして、今回の勧告と
なった。

 今回の勧告内容は、肉骨粉給与の禁止が導入された 96年 8月1日以降に生まれ
た牛については、早ければ 2004年の1月以降、30カ月齢以上の牛の肉であっても、
BSE検査により陰性と判断されれば、市場に流通される。また、 96年 8月以前に
生まれた牛については、これらの牛を処分するにはまだ約 2年かかるとして、30
カ月齢以上のすべての牛の肉は、2005年7月以降、BSE検査により陰性と判断され
れば、市場に流通されるというものである。
今回の勧告に関して、イングランド農業者連合 (NFU)は、イギリス産牛肉が安
全である証明になると今回の勧告を大変歓迎している。

費用削減効果大

 また、FSAはOTM処分対策をBSE検査に切り替えた場合の、費用削減効果を示して
いる。現在OTM処分対策実施に当たり、イギリス政府の当該牛買い上げに係る費用
は、年間3億6千万ポンド(約712億8千万円:1ポンド=198円)である。今回勧告さ
れたBSE検査への切り替えが実行されれば、費用は年間6千万ポンド(約 118億8千
万円)となり、594億円の大幅な費用削減になるとしている。
ただし、イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、今回の勧告が実行されれば、
30カ月齢以上の牛肉が年間18〜22万トン程度市場に出回ることになるため、牛肉
価格は低下する可能性があると見ている。

今後のイギリス政府の対応に注目

 今回の勧告を受け、イギリス政府がOTM処分対策からBSE検査への切り替えを行
う場合、OTM 処分対策を財政支援しているEU委員会との協議が必要となる。今後
のイギリス政府の対応に注目したい。

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