豪州、豚肉製品の輸入規制緩和方針に業界が反発


輸入リスク分析が最終報告

 豪州連邦政府農漁林業省下で輸入リスク分析を実施するバイオセキュリティー・オーストラリア(BA)は2月19日、新たな国から豚肉製品輸入に関するリスク分析の最終報告を発表した。昨年8月に発表された草案通り輸出国の家畜疾病の清浄状況に応じて、実質的には加工・調理済みや骨抜き製品などに限り輸入を認可する内容で、30日間(3月22日期限)の異議申し立て期間を経て最終的に決定される。

 併せてBAは同日、豚肉以外にもフィリピン産バナナ、ニュージーランド(NZ)産リンゴの輸入について、感染病管理を前提とした検疫条件の下での禁輸見直しを内容とするリスク分析報告書を発表している。

 なお、BAは2000年に豪州検疫検査局(AQIS)から分離独立して設立された機関で、輸入リスク分析に当たっては関連する州政府機関や連邦科学産業調査機構(CSIRO)、大学からの専門家が参加して行われる。

 豪州は現在、カナダ、デンマーク、NZ南島産について未調理豚肉の輸入を認可している。ただし、カナダとデンマーク産は豪州到着時に骨抜き・調理する条件が付されている。また、カナダ産については調理済みの豚肉の輸入も認めている。なお、豚肉輸入量は、カナダとデンマーク産で全体の約95%を占める。今回の分析に当たってBAは、ブラジル、カナダ、チリ、EU、ハンガリー、韓国、メキシコ、NZ、南アフリカ、台湾、米国の11ヵ国(地域)からの輸入認可(あるいは緩和)の要請への対応を基本に実施した。

 最終報告では、口蹄疫や豚コレラをはじめとする10の重要な防疫対象疾病ごとに、(1)疾病の清浄性、(2)枝肉検査、(3)調理済み(一定の加熱条件など)、(4)冷凍、(5)乾燥・塩漬け、(6)缶詰、(7)骨や特定部位除去−などの条件を組み合わせたリスク管理方法が示された。

業界は分析報告に反発

 リスク分析については、いずれも草案の段階から関連する各業界が強く反対していた。今回の最終報告が発表されると直ちに、関係業界からは、重大な病害の侵入に対する懸念を理由にBAの分析が甘いとの批判が起きている。

 中でも豚肉は、前回草案とほぼ同内容で最終報告として発表されたため、豚肉業界団体であるオーストラリアン・ポーク・リミティッド(APL)は、CSIROの調査結果をBAが全く考慮していないと批判している。APLによれば、CSIROの調査は「BAの分析報告による検疫条件では10年以内に95%の確率で外来の疾病をもたらす」というものである。APLは、CSIROの調査に対してBAが十分な検討を行わなかったとして、BAの決定を覆すことを目的とした諮問委員会の設置を要求するとみられている。

 また、今回の最終報告が先般合意した米国との自由貿易協定(FTA)の直後だけに、その相関に疑念を抱く関係者も多く、クインズランド州の生産者団体は、将来的に大量の米国産豚肉製品が豪州市場に入ってくる可能性について懸念を表明している。

農相は経済的影響調査実施を表明

 関係業界からの強い反発の可能性があらかじめ予想されたためか、トラス農相は最終報告発表の同日、豚肉をはじめリンゴ、バナナの輸入拡大に伴う業界への経済的な影響を調査することを表明した。これは、BAの分析が経済的な影響などは考慮しない科学的な見地で実施されたことから、業界の反発や懸念に配慮したものとみられる。

 ただし、同農相は「米国をはじめとする各国との豪州の貿易交渉が今回のリスク分析報告に影響を与えたという最近の主張は明らかに間違いである」とした上で、「豚肉の輸入リスク分析は、米国とのFTAが検討される以前の1998年に開始されたもので、貿易や政治的な考慮から独立して行われており、透明性を確保した科学的根拠に基づく評価である」ことを強調している。


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