鳥インフルエンザ対策を強化        ● マレーシア


鳥インフルエンザ対策を強化

 近隣のタイやインドネシアで高病原性鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の発生が確認されているが、現時点ではマレーシアでの発生は確認されていない。マレーシアから日本への家きん肉輸出の実績は2002年で約2,200トンと少量であるが、隣のシンガポールへは生産量の1割に当たる12万羽が日々輸出されており、万一、鳥インフルエンザの発生が確認された場合には大量の鶏が行き場を失い、大きな混乱が予想される。

強化対策の内容

 マレーシア農業相は2月6日、これまでの鳥インフルエンザ発生国からの家きん肉の輸入禁止措置に加え、次の強化対策を打ち出した。

○ 人員の省庁間活用

  防疫対策を実施する上で必要に応じて他省庁間であっても人員を活用する。

○ 定期的検査の実施

  定期的に家きんの飼養施設、他の鳥および動物の飼養施設への検査を行う。

○ メディアへの毎日の情報開示

  すべての地区および州の家畜衛生機関は、管轄地域内の農場、鳥類保護区域、ウェットマーケット、食鳥処理場およびその他の鳥の飼養場所について日々報告を行うよう指示されており、これに基づいてメディアに情報を開示する。

○ 渡り鳥の緊急調査

  渡り鳥の種類、羽数、時期、渡来地等に関して緊急に調査を行う。

○ ペットとしての飼養の抑制

  鳥をペットとして飼養することを、全国的に抑制する運動を行う。

○ ウェットマーケットの調査

  ウェットマーケットで行われている食鳥処理実態について調査を行う。

○ 継続的な監視

  農業省と保健省とで24時間体制で疫病発生に対する監視とモニタリングを行う。

○ 対策の実施期間

 以上の対策を東南アジア地域において鳥インフルエンザに対する安全宣言がなされるまで継続する。

対策実施と問題点

 また、農業相は現在の状況において、次のような対策に関連した問題点も指摘した。

○ 正確な農場の登録

  2月初め時点の全国で登録されているのは、家きんおよびブロイラーの養鶏場が約3千カ所そして採卵鶏の養鶏場が約500カ所であるが、正確なデータとは言えず、担当官に登録作業を急がせている。

○ 渡り鳥に関する情報

  渡り鳥が病気を伝播すると言われているにも関わらず、関係情報を農業省は持っておらず、渡り鳥が一体どこから飛来してどこに留まるのか現時点では不明であり、対策が立てられない。

○ 鶏肉価格の下落

  マレーシアでは鳥インフルエンザは発生していないものの、タイでの発生により消費者への心理的影響により鶏肉消費が大きく減退し、鶏肉業界は消費者へ安全をアピールする必要があると考えているが、価格が下落していること。(季節的要因もあるが、タイでの発生の前後で鶏の農家販売価格がキログラム当たり3.5リンギ(98円:1リンギ=28円)から2月6日には2.5リンギ(70円)に下落した。)

○ 農家の衛生意識の向上

  最近、河川に鶏の死がいを捨てている農家の実態が報じられたが、このよう行為は厳しく罰せられるべきで、農家の衛生意識の向上が必要なこと。

○ 密貿易の撲滅

  タイからの鶏肉の輸入停止措置がとられているにもかかわらず、タイとの国境で食肉と卵の3件の密貿易について捜査中であり、今後も発生が懸念されること。

 なお、国内で鳥インフルエンザが発生した場合には、世界保健機関(WHO)などが行った提言に基づき、第一には殺処分によって対応することとしている。


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