養鶏農家支援予算を承認         ● インドネシア


関連業界への配慮から発表を延期

 インドネシア政府は1月25日に同国での高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)発生を発表したが、同国農業省畜産総局長によると政府は昨年8月29日の段階で、中央ジャワ州ペカロンガン県で既に最初の感染が確認されていたとされた。

 政府はHPAIの発生を公表しなかった理由として、関連業界に多大な損失を与えることや、人への感染が報告されていないことをあげている。昨年8月以降の被害状況については、少なくとも400以上の養鶏場で被害が確認されたとし、そのうち6割がニューカッスル病による被害、4割が鳥インフルエンザによるものとしている。また2月末現在の被害総数は約600万羽とされている。国連食糧農業機関(FAO)は2月13日の発表で、インドネシアのHPAI対策によるとう汰羽数が1,500万羽に達したと報告しているが、消息筋によるとこれは最終的に同国全体でとう汰が見込まれる羽数で、現在その予測はおよそ1,000万羽に収まるとされている。また、1月末の発表の段階で深刻な被害が生じているとされた地域は、中央ジャワ州の17県、東ジャワ州の13県、西ジャワ州の3県、ジョグジャカルタの6県、ランプン州の3県、バリ州の5県、バンテン州1県、南、東、中央カリマンタン州の各1県となっている。

養鶏産業の現状

 同国農業省畜産総局(DGLS)発表による2003年(暫定値)の鶏飼養羽数は大手企業によるブロイラーが約9億2千万羽、採卵鶏で8千5百万羽、零細農家による庭先養鶏の雑種を含むいわゆる地鶏が2億9千万羽となっている。

 一方、DGLS発表による2002年の鶏関連製品等の輸出状況は鶏肉が2,346トン、鶏卵が49万8千個、初生ひながペアレント・ストック仕向けで25万6千羽、コマーシャル仕向けで37万羽、生体鶏が2,200羽とされている。なお、これらのうち生体で取引されるものの主な輸出先は、純粋種が主にタイ、ブルネイ、韓国などへ、それ以外の雑種のものがブルネイ、ベトナム、ミャンマーなどへ流通している。

選択的とう汰の方針を決定

 同国政府は当初、養鶏農家への配慮から大量殺処分による防疫措置を行わず、ワクチンの接種のみにより対策を進めるとし、ワクチンを製造する国内3工場の生産効率の向上を図ると同時に海外からの輸入を手配するなどの対策を行っていた。

 その後、29日にメガワティ大統領は全国でり患鶏の選択的とう汰とワクチン接種を組み合わせた制圧を行うと発表し、農業相は同日の閣議で養鶏農家緊急支援対策としてとう汰補助、ワクチンの確保、検査機材の拡充などのため2,120億ルピア(約30億円:100ルピア=1.42円)の予算が承認されたと発表した。当面は事業計画承認後、500億ルピア(約7億1千万円:100ルピア=1.42円)の支出が予定されている。また、HPAIによる財政的損失は7兆7千億ルピア(約1,093億円)に上り、全国で約125万人が職を失うと試算している。

FAO等、ワクチンの戦略的使用を奨励へ

 アジア地域で猛威を振るうHPAIの対策を検討するFAO本部で開催された国際会議において2月5日、FAOは世界保健機構(WHO)および国際獣疫事務局(OIE)との共同声明として、同病まん延の猛威にさらされている国々においてり患した鶏のとう汰とワクチンの使用を戦略的に組み合わせることが効果的であるという内容の発表を行った。

 り患鶏が発生している地域でワクチンの使用により疾病の防疫措置を行おうとした場合、ワクチン接種個体には抗体が産生されるため、新たなり患との区別がつかなくなる。そのため従来の国際基準ではワクチンの使用は疾病撲滅が困難になるとして、ワクチンを使用しない大量とう汰が最善の策とされていた。

 今回の発表はこれから一歩後退し、各国養鶏産業の現状を考慮した内容となっている。


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