大手食肉パッカーに損害賠償金支払いの評決   ● 米 国


タイソンフーズ社に対し、約13億ドルの損害賠償金を求める評決

 アラバマ州の連邦地方裁判所は2月17日、肥育牛生産者が米大手食肉パッカーであるタイソンフーズ社を相手取り、事前供給確保(Captive Supply:と畜2週間以上前の事前購入契約、特定期間に一定数量を供給する契約、パッカー所有牛の預託契約など)に基づく取引が市場の競争力を阻害し現物市場価格を押し下げたとして損害賠償を求めていた訴訟について、陪審員は肥育牛生産者に対する損害賠償金支払いの評決を下した。この訴訟は、1996年にアラバマ州の肥育牛生産者5名と1農場が当時のIBP社(同社は2000年にタイソンフーズ社に吸収合併)を相手取り始まったものである。訴訟で肥育牛生産者は、事前供給確保による取引方法は、1921年に反競争的な取引の抑制などを目的に制定された「Packers and Stockyards法」(パブリックマーケットにおける家畜取引、食肉パッカーの取引方法、取引手数料、支払方法、取引結果の報告などについて規定)における不公正な取引方法となるのではないかと主張していた。評決では、(1)事前供給確保取引は、肥育牛現物市場に競争阻害効果を及ぼした(2)タイソンフーズ社は、合法的な商売の良識あるいは競争の正当性に欠けていた(3)事前供給確保による取引は現物市場価格が低落するのを招いた(4)事前供給確保の取引が原告である肥育牛生産者に損害を与えた(5)1994年2月から2002年10月までの損害賠償額は12億8,169万ドル(約1,423億円、1ドル=111円)−などとなっている。

タイソンフーズ社、評決廃棄を要請する声明を発表

 同日、タイソンフーズ社は今回の評決に対し、「評決は我が社とこれまでの方法が正しいと支持してくれている数千の家畜生産者の期待に背くものであった。幸運にもこれは、暫定的な法律上の敗北である。われわれはこの評決を廃棄するよう裁判官に要請する予定である。これが受け入れなかった場合、上訴し第11巡回控訴裁判所でこの評決を無効にする手続きを行う予定である」との声明を発表した。

食肉流通段階でのインテグレーション(垂直的調整)は進行

 現在、肥育牛生産者と食肉パッカーとの事前供給確保に基づく取引は増加傾向にあり、2000年には約38%となっている。この背景には高品質で均一な肥育牛の確保を目的とする食肉パッカーと枝肉情報のフィードバックや契約割増金(ボーナス)制度を期待する肥育牛生産者の思惑が一致しているためであるとされている。また、豚肉や鶏肉部門では、肥育豚の約83%(2001年)、ブロイラーの約90%(2001年)が事前供給確保取引によるものとされている。(「畜産の情報海外編」2003年8月号参照)この生産者と食肉処理加工段階での垂直的調整が進行している中での今回の評決は、今後の食肉業界の流通システムに大きな波紋を投げかける可能性もある。

◎米農務省、テキサス州で発生した鳥インフルエンザは高病原性と発表

 米農務省動植物検査局(USDA/APHIS)は2月23日、テキサス州で20日に発生した鳥インフルエンザは、病原性試験の結果、高病原性鳥インフルエンザ(H5N2型)であったと発表した。米国内で高病原性の鳥インフルエンザが発生するのは20年ぶりとのことである。発生農場のブロイラー6,608羽はとう汰・廃棄され、発生農場から10マイル(約16km)以内にある農場でのサーベイランス調査を開始するとしている。また、現時点において今回の鳥インフルエンザの人への感染の徴候はないとしている。


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