中国向けブラジル産大豆に薬品処理済み種子が混入


ブラジルのルラ大統領、中国を公式訪問

 ブラジルのルラ大統領は、5月22〜27日まで中国を公式訪問した。胡錦濤国家主席との会談の後、5月24日には(1)平等原則に立脚する政治的相互信頼の強化(2)両国互恵の経済交流と貿易振興(3)交渉の調整に重点をおいた国際協力の促進(4)両国の民間交流を促進し相互理解を深める−などの共同声明を発表した。また、この公式訪問には関係閣僚や州知事のほかに、民間企業の代表400名以上が同行し、中国との貿易を拡大しようとする意気込みが感じられるものとなっていた。

農相、大豆の荷揚げ禁止措置について交渉

 このような中、公式訪問団に参加したロドリゲス農相には、ブラジル産大豆の荷揚げが中国から禁止されている問題を解決することが目的の一つとなっていた。

 この荷揚げ禁止措置は、4月18日に中国衛生当局がブラジル産大豆の中に、薬品で処理された種子用大豆が混入していたことを検出したことによるもので、中国側は4月30日にこのことを在北京ブラジル大使館に通告し、5月11日にはブラジル政府に、「同大豆を輸出した4社の大豆輸入を暫定的に許可しない措置を講じた」ことが公式に伝えられた。(なお現地では、5月上旬から荷揚げできない状況であり、5月下旬には2社に対し、その後も数十社に対し同様の措置が取られたと報じている)。

 これに対しロドリゲス農相は5月12日、中国向け大豆の汚染状況調査を指示し、同14日には種子向けに薬品処理されたものが混入した大豆5.6万トンが衛生証明書なしに再び同じ積み出し港であったリオグランデ港からすでに出港したことを受け検査を強化する方針を報じ、同19日には大豆の検査基準を話し合うためのミッションを中国に派遣している。

 ロドリゲス農相などは今回の訪問で、輸出用大豆の中にごく少量の種子用大豆が混入することを中国側が許容することや、輸出用大豆の衛生検査の強化および当問題については再発させないことを保証する旨を申し出たが、中国側は今回問題となっている薬品の混入は許容しない旨を回答したとされる。

大豆に関する衛生管理規制を定めるため、ワーキンググループを結成

 5月25日付けの政府系広報機関紙は、農務省は輸出向け穀物に薬品などが混入することを避けるため訓令を定めることを検討していると報じており、同28日に農務省は大豆の衛生管理規制を定めるためのワーキンググループを結成して、同31日には訓令を作成する旨を発表した。

 5月31日の農務省コミニュケでは、6月1日には中国政府に提出する報告書を補完するためにリオグランデ港へ大豆の輸出状況の視察に向うととともに、ワーキンググループは週末までに作業を完了する予定であるとしている。また併せて、4月14日にサントス港から出港した大豆6.1万トンも中国によって荷揚げが停止させられた旨が報じられた。

 なお現地では、ロドリゲス農相が薬品処理済み種子の混入許容度について世界保健機関(WHO)に照会中であるとか、中国では搾油業界の経営が悪化しているため最高値で契約した中国の輸入業者が価格再交渉の手段として本問題を持ち出しているなどの報道もされている。

新たな衛生管理規定により中国と交渉

 当初の予定より多少遅れた6月11日、農務省は大豆の汚染基準等を示した訓令15号(6月9日付け)を公布した。これによると問題となった薬品処理済み種子の混入限度は、抽出サンプルの加重平均において1キログラム当たり1粒と定められ(食用を除く)、その他に(1)カビのはえた豆(2)昆虫の死がい(3)不純物一の混入限度基準も定められた。

 農務省はこの訓令をもって中国と交渉を行い、同月21日にはコミニュケにおいて「中国がブラジルの大豆輸出企業23社に下した輸出停止処分を撤回し、輸入を再開することを決定した」と発表した。


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