牛肉輸出拡大に向け、促進活動を強化    ● ブラジル


ブラジリアンビーフの販売促進を再強化

 ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)は6月1日、ブラジル輸出振興事業団(APEX−Brasil)と協定を結び、356万レアル(約1億3千万円:1レアル=36円)を投資し、ブラジル産牛肉の輸出を促進する計画を発表した。

 これは、2001年に定められた商標「ブラジリアン・ビーフ」の販売促進活動の再強化を図り、ブラジル産牛肉の特徴である牧草肥育主体の安全性を国際的にアピールし、EU、東欧、中東、南米といった従来の市場においての地位を確立した上で、さらなる輸出拡大を図るとともに、日本、メキシコ、中国および米国など新規市場への進出を目指すことを目的にしている。そのため、向こう1年間に、在外大使館での試食会の実施やロシア、フランス、中国、マレーシア、米国で開催されるフェアなどへの参加が予定されている。

1−4月の輸出額は前年同期比54.8%増

 ABIECによると、ブラジルの1〜4月の輸出量(生鮮肉および加工肉:枝肉ベース)は、前年同期比19.5%増の50.3万トンとなった。輸出額は6億7千万ドル(約740億円:1ドル=111円)に達し、前年同期の4億3千万ドル(約477億円)を54.9%上回った。国別にみると、エジプトが同119.7%増の6千9百万ドル(約77億円)、次いでチリが同60.4%増の6千3百万ドル(約70億円)、となり、その他イギリス、オランダ、米国が主要な輸出相手国となっている。

 輸出額が大幅に増加した要因として、EUなどの主要市場で消費が回復している一方で、米国のBSE発生による輸出停止に伴う供給減から在庫が減少し、ブラジル産牛肉の国際市場価格が上昇していることが挙げられる。4月の生鮮肉1トン当たりの平均価格は前年同月比35.8%高の2,186ドル(約24万3千円)、加工肉は同14.5%高の2,157ドル(約23万9千円)となった。

 ABIECでは、2004年の輸出について、前年に比べ30%以上の増加を見込んでおり、輸出量を150万トン、輸出額は18〜20億ドル(約2〜2千2百億円)と予測している。さらに、2005年には輸出額は22億ドル(約2千4百億円)に達するとしている。

 現在、ブラジルの輸出相手国は104カ国に及び、米農務省(USDA)によると2003年はオーストラリアに次ぐ輸出国であったが、2004年は世界最大の輸出国として、全輸出量の2割を占めると見込まれている。

米国の生鮮肉輸入解禁に向けた交渉を開始

 一方、ブラジル農務省のジマルジオ事務次官は、6月15日からカナダのウィニペク市で開催される世界食肉会議に出席した後、米国を訪問し、昨年4月にロドリゲス農相が訪米した際に開始された生鮮牛肉の輸出解禁に向けた交渉を行う予定となっている。現在、米国向け輸出は加工肉のみが認められており、2003年には4万2千トンが輸出されている。

 ブラジル政府は、国際獣疫事務局(OIE)の承認を受けたブラジルが適用する畜産圏ごとの口蹄疫ステータスを米国が受け入れることを期待しており、交渉の進展が注目される。




ブラジル北部の肉牛生産



ひとくちMemo

 ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)によると、2002年における同国の牛(水牛を含む。)飼養頭数は1億8,646万頭で、うち北部地域は3,113万頭で全国に占めるシェアは16.7%となっている。中でもパラ州は、北部地域最大の肉牛生産州であり、北部地域の約4割を占めている。北部地域における肉牛は、ブラジル全土で幅広く飼養されているゼブー系の牛が主体であるが、水牛生産も盛んで、全国の水牛飼養頭数の6割に当たる約70万頭が飼養されている。EMBRAPAによると、北部地域は、良好な天候、適切に改良すれば良好な牧草生産が可能となる土壌、豊富な量が得られる熱帯牧草、広大で安価な土地などから、潜在力は大きいとしており、今回、こうした同地域の肉牛生産を紹介する。


 
(写真1)パラ州の州都ベレン市郊外の肉牛牧場
北部地域で多く飼養されているネローレ種。同地域における伝統的な肉牛経営では、と畜重量が450〜500キログラム、と畜月齢が42〜48カ月齢である。一方、同牧場では、飼養管理などの技術レベルが高く、と畜月齢は24〜36カ月齢である。


 
(写真2)ベレン市郊外の食肉パッカー
 同パッカーでは、枝肉を外部から仕入れ、カットする。カット能力は1日当たり30トン。カットされた製品は、6割がパラ州内、4割が北東部など州外に出荷される。北部は口蹄疫非清浄地域であるため、サンパウロなどワクチン接種清浄地域に出荷するには、骨なし肉でなければならない。同パッカーのカット工賃は税込みで月額約370レアル(約13,700円:1レアル=約37円)。
  (写真3)ベレン郊外の種牛競売場
 競売を待つネローレ種の繁殖用雌牛。同競売場の所有者は、受精卵の販売も行っている。


 
(写真4)マラジョ島の水牛牧場
ベレンより約80kmに所在するパラ州マラジョ島のボンジェズス牧場の水牛。牧場面積は6,600ヘクタール。同牧場では、約1,000頭の水牛のほか、ネローレ種450頭、作業用の馬450頭が飼養されている。水牛は移動距離が長いため、多くの馬を必要とするという。

  (写真5)マラジョ島の水牛牧場
 同牧場の水牛は、約24カ月齢で出荷され、主にマラジョ島内の郡営と畜場でと畜される。水牛の枝肉歩留は45〜48%であり、ネローレ種の50〜55%に比べて低い。また、水牛の生体価格は1キログラム当たり1.2レアル(約44円)でネローレ種に比べ15〜20%安い。


 
(写真6)水牛牧場の食卓
 同牧場の食卓には、水牛の牛乳やチーズが並ぶ。EMBRAPAの関係者によると水牛の年間平均乳量は約3,000リットル程度とされ、一般的な乳牛の平均値(約1,140リットル:2002年)よりも高く、乳脂肪率は11〜14%ときわめて高いという。
  (写真7)スーパーの水牛の肉
「ライトな肉」というキャッチフレーズの入った水牛(去勢牛)肉。EMBRAPAによると、水牛の肉質は、たんぱく質やミネラルが多く、かつ、コレステロールが低い。こうした特性を生かし、水牛の肉がヘルシーさを売り物に販売されている。価格は、ストリップロイン1キログラム当たり7.08レアル(約262円)。一般的に、水牛の肉は牛肉に比べ小売価格が安いが、18〜24カ月齢の水牛肉の場合、通常の牛肉よりも価格が若干高めである。


元のページに戻る