NZ牛肉産業の中期予測を見直し


牛肉生産量、輸出量の減少見込をさらに下方修正

 先頃、ニュージーランド(NZ)農林省(MAF)は、昨年行った2006/07年度(10月〜9月)までの中期牛肉需給予測の見直し結果を発表した。今回の予測見直しは、米国でのBSE発生後に行われたものであり、BSEの影響がどう反映されるか注目されていた。予測では、BSEの影響は米国内の牛肉価格の低下に伴って米国向け輸出価格が低下し、米国向け輸出量が減少するとみているが、中期的にみると、牛肉産業に大きく影響を与える要素としては、酪農など他産業に比較し利益が少ないことやNZドル高などとしており、牛肉生産量及び輸出量は当初予測より減少すると見ている。

・ 牛肉生産量

  肉牛農家は、収益悪化により、2004年6月時点の肉牛飼養頭数466万頭が、2007年6月時点では約15%減の397万頭に減少すると予測している。

  2003/04年度の牛肉生産量は、前年度比7%減の61万7千トンと当初の予測(64万6千トン)を下方修正した。以降、生産量は徐々に減少し、2006/07年度には52万7千トンとなり、当初予測(61万8千トン)を大きく下回るとみている。 

  MAFによると、この要因は、新しい計算モデルの採用と、当初の予測では、酪農経営の拡大に伴って、酪農家から乳用種経産牛が大幅に増加すると見込んでいたためとしている。

・ 牛肉輸出量

  2003/04年度の牛肉輸出量は前年度比4.8%減の51万7千トンと当初の予測(53万9千トン)を下回る見込みとなっている。生産量の減少に伴って輸出量も年々減少し、2006/07年では42万4千トンと当初の予測(50万8千トン)から大幅に減少するとみている。

  当初予測を下回った要因は、生産量の減少のほか、人口増に比例した国内消費の増加、輸出量の6割近くを占める米国でのBSE発生による牛肉価格の低下に伴って、NZの牛肉輸出価格が低下することが見込まれたためとしている。

  NZの米国向け加工用牛肉の輸出価格は、米国市場の動向(USチョイスの価格)を基に決定されているが、米国におけるBSEの影響で2004年は低価格を予想するとともに、為替相場も当初見込みよりもUSドルに対しNZドル高が継続し価格に悪影響を及ぼすとみられている。

現時点では日本や韓国向けなど輸出量大幅増

 一方、MAFの予測に反し、現時点での牛肉輸出は好調に推移している。2004年1月から4月の間の日本向け輸出量は、前年同期比で88%増の約12,500トンと大幅に増加した。NZ食肉公社では、2月初旬、米国でのBSEの発生による日本の米国産牛肉輸入停止を受けて、2004年の対日年間牛肉輸出量を昨年の2倍に当たる3万5,000トンに増やす用意があると発表し、日本国内で積極的な販促活動を行っていた。

 また、韓国向け牛肉輸出量も2004年1月から4月の間で21,730トンと約2倍増加している。さらに、米国向けも米国の強い需要に支えられ、同期間で前年同期比3%増の89,700トンとなっている。NZ食肉公社では、韓国向けの輸出増について、「韓国内の霜降り牛肉し好がNZ産の健康的な牧草飼育牛に変化した」と述べ、米国産やカナダ産の牛肉輸入解禁後も韓国の輸入牛肉市場の少なくとも1割は確保できる(2003年のシエア8.5%)と自信を示している。

NZ牛肉需給中期見通し(改訂版)

 

◎中国、NZ産輸入牛肉の検査体制を変更か

 NZ産や豪州産のラベルを貼った粗悪な食肉が輸入されるという事件が中国国内で発覚したことに端を発し、6月初め、中国は6月末に切れる輸入食品に関する品質管理システム適用の免除措置を延長しない旨、NZ政府に通告した。これによると、中国政府の審査に合格した食肉工場だけが中国に食肉を輸出することができることとなる。さらに、これを受けて、最近NZに来訪した中国の検査官が、調査した9食肉工場のうち5工場を不合格とした。これについて、NZ政府は、中国の検査官の来訪目的がNZの食品安全システムの調査と思い込んでいたため、当惑感を示し個別工場の審査と理解していなかったことが背景にあるとして、今後相互の密接な対話が必要としている。NZ政府は、品質管理についてはEUと同じように中国もNZの食品安全システムの同等性を認めることを望んでいる。

 NZは、中国に年間約4万トンの食肉を輸出しおり、さらにFTA締結などにより輸出量の急増という期待もある。NZ政府及び食肉業界は、牛肉生産の季節が始まる春をめどにこの問題の解決に向け努力するとしている。


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