成長が期待される酪農業           ● ベトナム


酪農振興計画の推進

 1960年代に中国から30頭の乳牛が導入されてから、ベトナムは徐々に酪農業の生産規模を拡大してきた。

 もともと乳製品に対する需要の少なかった同国であるが、近年の急激な国内需要の増加に伴い、本格的な乳牛頭数規模の拡大を図るため、2001年の10月に酪農振興計画が定められた。同計画推進担当者によると、その進捗状況は、2001年の計画当初の乳牛頭数6万4,700頭から、2002年には5万6千頭まで減少したものの、今年10月現在7万4千頭まで増頭したとしている。計画では2005年までに10万頭、国内消費の約20%の供給体制を目指すとし、さらに2010年には約40%の自給率、100万トンの生乳生産を確保するとしている。

 現在、同国内で飼養される乳用牛のうち約70%は、ホーチミン市近郊を中心とする南部地域に集中している。

 同国は乳用牛育種改良の方針として、暑熱環境への適応性を確保するため、意図的にホルスタイン種とオーストラリアン・フリージアン・サヒワール種等とを交配することによるF1、F2牛の作出を奨励している。

 しかし、過去3年間で約8千5百頭の乳牛を輸入、これらオーストラリア等から導入されたホルスタイン種は現在2千頭程度を占めており、泌乳量増加を目指してホルスタインの血量は高まる傾向にある。それに伴いより高度な飼養管理が要求されるため、暑熱対策の必要性が高く、良質飼料の確保が困難なメコンデルタを中心とする南部地域における酪農振興は今後解決すべき問題が多い。

ビナミルク社、株式を公開

 同国最大の乳業メーカーであるビナミルク社は今年創立26周年を迎え、10月中旬には一般投資家に対し株式の公開を始めている。ビナミルク側は当初、株式の49%を公開するよう求めていたが、10月初旬、監督官庁である産業省により政府持ち株率80%を確保することが決定されたため、これに従い、残り20%のうち720億ベトナムドン(5億4千万円:1ドン=0.752円、全体の4.8%)の株式が公募による入札に付され、額面10万ドン(752円)に対し32の投資家に13万5千〜18万1千ドン(1,015〜1,361円)で売却された。また残りの12.5%は、同社従業員へ、2.7%は生乳生産者に配分されることとなった。

 同社は現在、ホーチミン市の3工場を含め全国に7カ所の工場と1,400の代理店を持ち、国内市場占有率はおよそ70%、年成長率は20%と言われ、今年上半期の売り上げは3兆ドン(226億円:年間目標の68%)、うち輸出によるものが加糖練乳を中心として約1億3千万米ドル(143億円、1ドル=110円:同85%)に達している。輸出先はアメリカ、インド、フランス、カンボジア、中東等となっている。

海外資本の参入

 一方、同国農業・農村開発省筋によると、首都ハノイ市北西部山岳地帯にあるソンラ県およびライチャウ県でニュージーランドの乳業会社が新規投資の意向を表明しているとされた。これによると、これらの地域で育種改良プログラムの実施と併せ、日量100トンの生乳処理能力を持つ乳業工場の建設を行う計画であり、実現の可否はともかく現地はこの申し出に歓迎の意向を示している。

 また同国酪農の中心地である南部の、ホーチミン市に隣接するドンナイ県では、タイの食品大手であるCP(チャロン・ポカパン)グループが酪農業への本格参入を計画しているとしている。同社は93年以降、同県で家畜飼料、冷凍水産品、飼料種子などの生産プロジェクトに投資を行っており、ベトナム全体への投資総額は1億2千万米ドル(132億円)に達する。同社は今後、同県で酪農家への投資・乳業工場の建設などを計画しており、今後の動向が注目される。


元のページに戻る