米国内で初のBSE発生(その対応)


ベネマン農務長官が公表した対応策を受け、連邦食肉検査規則を暫定改正

 ベネマン農務長官は2003年12月30日、同月23日にワシントン州内でと畜されたホルスタイン種の起立不能牛がBSE陽性であることが確認されたことを受け、SRMの食用としての流通禁止等の対策の概要を発表した。

 1月12日米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、連邦食肉検査規則について以下の暫定的な改正を行った。この改正規則は緊急性が高いとして、官報掲載と同時に施行された。FSISは90日間この暫定規則に対する意見を公募し、最終的な規則にはこれを反映させるとしている。  

(1) 30カ月齢以上の牛について、脳、頭蓋骨、眼、三叉神経節、脊髄、脊柱(尾椎、胸椎及び腰椎の横突起、仙骨翼を除く)、背根神経節を、また、月齢を問わず扁桃および回腸遠位端(実行上は小腸全体の除去を要求)をそれぞれ特定危険部位(SRM)とし、食用としての流通を禁ずる。連邦政府による検査が行われる食肉処理施設は、SRMの除去、分離、廃棄について既存のHACCPプラン等に新たな記載を行うことや記録の保管が求められる。  

(2) FSISは手作業による脊椎の除骨について、背根神経節の残留に関するデータを有しないことから今回これを禁止しないとし、この点についても意見を公募している。  

(3) エアーインジェクション スタンニングについて、頭蓋骨内に注入された圧縮空気により脳や中枢神経の断片が循環器系に入り込む可能性があるとして、この使用を禁止する。  

(4) 先進的食肉回収システム(AMR)について、30カ月齢以上の牛への使用を禁止する。また30カ月齢未満の牛についても、これを利用し生産された「食肉」と表示される製品に中枢神経組織が混入してはならないとされ、頭蓋および脊柱へのAMRの使用は禁止となる。連邦政府による検査が行われる食肉処理施設は、SRMの除去、分離、廃棄について既存のHACCPプラン等に新たな記載を行うことや記録の保管が求められる。  

(5) 機械的除肉については牛の月齢を問わず食品への使用を禁ずる。

(6) なお、30カ月齢以上であるかの確認には、FSISの検査官が行うこととされ、出生証明のような記録も考慮されるが、このような証明のないものについては切歯による鑑定を行う。枝肉等についてはと畜時の記録との照合により月齢の確認が行われるが、これが困難なものについては30カ月齢以上のものと同様の扱いがなされる。

BSE検査牛の検査終了までの移動禁止

 1月12日、FSISは、動植物検査局(APHIS)によりBSE検査が行われている枝肉等について、BSE陰性との結果が判明するまでと畜検査合格の刻印を行わないとの通知を行った。これにより、BSE検査中の牛の枝肉等が食品として流通することが実質的に禁止される。

サーベイランスの強化

 USDAディヘブン首席獣医官は1月2日、BSEのサーベイランスの対象頭数を約38,000頭に増加させ、特に3D(死亡(dead)、起立不能(downed)、病牛(diseased))についてサーベイランスを強化するとの考えを記者からの質問への回答の中で明らかにした。ただし、サーベイランスによるBSE検査はあくまでBSEの米国内への浸潤の程度を把握することを目的とするものであり、食品の安全性の確保を目的とする検査とは異なるとしている。


元のページに戻る