バターおよび脱脂粉乳の域外向け輸出が大幅に増加


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● バターの輸出量は、15カ国になって過去最高を記録 ● ● ●

 欧州の業界誌によると、2003年の第3四半期までのEUのバターおよび脱脂粉乳の域外向け輸出量は、大幅に増加した。バターの輸出量は、前年同期比66.2%増の21万6千トンとEUが15カ国(95年)になって過去最高を記録した(これまでの最高は97年の約18万トン)。また、脱脂粉乳の輸出量も、65.0%増の16万8千トンと2001年および2002年を上回った。なお、2003年第3四半期までのEUの乳製品の域外向け輸出は、全粉乳を除いて増加しており、チーズは4.3%増の33万8千トン、ホウェイパウダーは15.0%増の13万1千トンなどとなった。

バターおよび脱脂粉乳の域外向け輸出量
資料:ZMP(ドイツ市場価格情報センター)
 注:2003年は第3四半期まで

● ● ● 活発であった国際市況が原因 ● ● ●

 この原因は、2003年前半におけるイラク戦争の勃発や全般的なユーロ高などの影響が懸念されたにもかかわらず、バターおよび脱脂粉乳の国際市況が近年になく活発であったことが挙げられる。バターの2003年第3四半期までの国際価格(月ごとの単純平均)は、前年同期比27.3%高の1トン当たり1,327米ドル(約14万2千円、1米ドル=107円)、脱脂粉乳の価格は18.4%高の1,462米ドル(約15万6千円)となった(左図:乳製品の国際価格参照)。バターはロシアやモロッコなど、脱脂粉乳はアルジェリアやインドネシア向けなどを中心に輸出量が大幅に増加したとみられる。

 なお、2003年(1月〜12月)のバターの国際価格は、前年比31.0%高の1,393米ドル(約14万9千円)、脱脂粉乳の価格は28.9%高の1,665米ドル(約17万8千円)となった。

● ● ● ユーロ高が今後の輸出の懸念材料 ● ● ●

 一時期米ドルなどに対して低下傾向であったユーロは、2003年11月以降再び上昇傾向となり、今後、一層ユーロ高が進めば農産物等の域外向け輸出に影響が出てくることが懸念されている。こうした中、欧州酪農管理委員会は、1月16日付けで脱脂粉乳の輸出補助金を100キログラム当たり57.0ユーロ(約7,600円、1ユーロ=133円)から64.5ユーロ(約8,600円)に引き上げた。しかし、業界関係者の間では、現在のユーロ高の状況からすると、あまり輸出促進の効果は期待できないとの声が大きい。今後の国際市況の動向にもよるが、ユーロ高が進み輸出が停滞すれば、EUのバターや脱脂粉乳などの乳製品の生産は季節的に増産に向かうだけに、域内需給への影響が懸念される。

 なお、EUのバターの最大の輸出先であるロシアが、牛肉や豚肉などのように関税割当制度を乳製品に対しても導入するのではないかとの危惧する見方は依然として残っており、その動向も注目される。


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