特別レポート

米国のBSE発生に対する
各国(地域)の動向およびその対応措置について

調査情報部調査情報第一課


はじめに

 米国は、世界最大の牛肉生産・輸入国であり、豪州に次ぐ世界第2位の牛肉輸出国である。

 2003年12月23日、米国で初の牛海綿状脳症(BSE)の発生が確認された。このことは、輸入牛肉の半量を米国に依存しているわが国はもとより、世界各国(地域)にさまざまな影響を及ぼしている。

 そこで今回は、米国のBSE発生にともなう最新の状況と、米国でのBSE確認以降、対米牛肉輸入停止措置による一部の代替供給が期待されている豪州やニュージーランドをはじめ、各国(地域)の動向を報告する。併せて、今回の米国BSE発生により、改めて関心が高まりつつある各国(地域)のBSEに対する監視(サーベイランス)体制や、と畜場における特定危険部位(SRM)除去義務の有無など、BSEへの対応措置を報告することとする。




資料:USDA「Livestock and Poultry:World Markets and Trade」
 注:枝肉換算ベース


1 米国−ワシントン駐在員事務所   犬飼 史郎、道免 昭仁

1 米国内で初のBSE発生を確認

 ベネマン米農務長官は2003年12月23日、同年12月9日にワシントン州内でと畜されたホルスタイン種のダウナー(歩行困難)牛について、アイオワ州にある連邦政府の検査機関でBSEに関する検査をした結果、陽性であったことを発表した。この牛の脳のサンプル等は12月15日に国際獣疫事務局(OIE)が指定するイギリスの同定機関に送られ、同時に携行した標本についてイギリスの専門家は陽性との米国による診断を支持した。

 同時に同長官は、今回の検出は米国のサーベイランスや検出システムが機能していることを明確に示すものであるとするとともに、2003年10月に公表されたハーバード大危険性評価センターのリスク評価により、既に講じられた安全対策等により仮に米国内にBSE感染牛が導入されたとしてもまん延の可能性は低いとされているとして安全を強調した。

2 発生牛はカナダで生産

 発生牛は当初、発生農場の記録から4歳または4歳半とされたがその後の疫学調査の結果、発生牛からと畜場で回収された金属製の耳標の番号と2001年9月にカナダから輸入された牛のカナダ側の衛生検疫証明書に記録してあった番号が一致することが判明した。米農務省(USDA)およびカナダ食品検査庁(CFIA)は共同で1月6日、生産農家の記録を基に発生牛の父牛および娘牛のとのDNA鑑定を行った結果、ともに親子関係が認められたことから発生牛は97年4月にカナダのアルバータ州産で生産されたことが相当高い確率で証明されたと発表した。なお、発生牛の生産農場とされる農場は既に農場主の健康上の理由から廃業している。発生牛はこの農場で生産された他の80頭の牛とともに米国に輸入されたことが判明したために、その後の米国内での疫学調査はこの80頭の牛の追跡に主眼が置かれることとなった。

3 牛発生牛の枝肉は市場に流通

 発生牛をと畜したと畜場で12月9日に生産された発生牛由来のものを含む枝肉は、最終的にオレゴン州内の2つの食肉加工施設で挽肉等に加工され、主としてワシントン州およびオレゴン州に販売されていたことが判明した。食品安全検査局(FSIS)は枝肉は脳をはじめとするSRMの多くが除外されていることから安全上の問題はないとしつつ、念のための措置として、当該食肉業者に発生牛由来の食肉を含む約4.7トンの食肉について自主的な回収を求める通知を行った。その後の調査により、流通の過程で他の牛肉等と混合されていたこともあり、回収の対象は最終的には、牛肉約17.3トンと牛骨等約1.4トンとされ、2月9日現在でこの半数に相当する約9.5トンの回収が行われた。

 発生牛の脳はUSDAのサーベイランスのために採材されたが、小腸等のSRMについてはレンダリングに回されていた。このレンダリング製品については、関連する2つのレンダリング施設で12月9日から同月23日までに製造された製品約2千トンが回収された。


4 米農務省による対策の強化

 ベネマン農務長官は2003年12月30日、同月23日にワシントン州内でと畜されたホルスタイン種の歩行困難牛がBSE陽性であることが確認されたことを受け、SRMの食用としての流通禁止等の対策の概要を発表した。

(1)ベネマン農務長官が公表した対応策を受けた連邦食肉検査規則の暫定改正

 (1) 1月12日FSISは、連邦食肉検査規則について以下の暫定的な改正を行った。この改正規則は緊急性が高いとして、官報掲載と同時に施行された。FSISは90日間この暫定規則に対する意見を公募し、最終的な規則にはこれを反映させるとしている。

(ア)30カ月齢以上の牛について、脳、頭蓋骨、眼、三叉神経節、脊髄、脊柱(尾椎、胸椎および腰椎の横突起、仙骨翼を除く)、背根神経節を、また、月齢を問わず扁桃および回腸遠位端(実行上は小腸全体の除去を要求)をそれぞれSRMとし、食用としての流通を禁ずる。連邦政府による検査が行われる食肉処理施設は、SRMの除去、分離、廃棄について既存のHACCPプラン等に新たな記載を行うことや記録の保管が求められる。

 FSISは手作業による脊椎の除骨について、背根神経節の残留に関するデータを有しないことから今回これを禁止しないとし、この点についても意見を公募している。

(イ)FSISの検査官により歩行困難または歩行困難と判断された牛については、と畜場で処理することを禁止する。

(ウ)エアーインジェクション スタンニングについて、頭蓋骨内に注入された圧縮空気により脳や中枢神経の断片が循環器系に入り込む可能性があるとして、この使用を禁止する。

(エ)先進的食肉回収システム(AMR)について、30カ月齢以上の牛への使用を禁止する。また30カ月齢未満の牛についても、これを利用し生産された「食肉」と表示される製品に中枢神経組織が混入してはならないとされ、頭蓋および脊柱へのAMRの使用は禁止となる。

(オ)機械的除肉については牛の月齢を問わず食品への使用を禁ずる。

(カ)なお、30カ月齢以上であるかの確認は、FSISの検査官が行うこととされ、出生証明のような記録も考慮されるが、このような証明のないものについては切歯による月齢鑑定を行う。枝肉についてはと畜時の記録との照合により月齢の確認が行われるが、これが困難なものについては30カ月齢以上のものと同様の扱いがなされる。

(2)BSE検査牛の検査終了までの移動禁止に関する通知の発出

 1月12日、FSISは、動植物検査局(APHIS)によりBSE検査が行われている枝肉等について、BSE陰性との結果が判明するまでと畜検査合格の刻印を行わないとの通知を行った。これにより、BSE検査中の牛の枝肉等が食品として流通することが実質的に禁止されることとなった。

(3)サーベイランスの強化

 ディヘブンUSDA首席獣医官は1月2日、BSEのサーベイランスの対象頭数を約38,000頭に増加させ、特に3D(死亡(dead)、起立不能(downed)、病牛(diseased))についてサーベイランスを強化するとの考えを記者からの質問への回答の中で明らかにした。ただし、サーベイランスによるBSE検査はあくまでBSEの米国内への浸潤の程度を把握することを目的とするものであり、食品の安全性の確保を目的とする検査とは異なるとしている。

(4)BSEに関する外部の専門家の招へい

 ベネマン農務長官は12月30日、5月のカナダでのBSE発生に際しカナダ政府が招へいしたBSEの専門家4名を招き、意見や勧告を求めることを発表した(評価報告等については10を参照)。


5 カナダ政府のよる強化策

 カナダのスペラー農業・農産食料大臣は1月9日、米国でのBSE発生牛がDNA鑑定によりカナダ産とほぼ断定されたことなどを踏まえ、BSEサーベイランスの強化などの追加的な対策を講ずると発表した。BSEサーベイランスの強化として、BSEに感染している可能性が高いとされる歩行困難牛、病牛および農場死亡牛を中心として今後1年間で少なくとも8,000頭のBSEサーベイランスを実施するとともに、最終的にはサーベイランス頭数を30,000頭以上とする。併せて、これに対応するため、迅速検査をスクリーニングテストとして用いるとした。また、牛個体識別(ID)については、昨年5月のBSE発生時に発生牛の経歴に関する貴重な情報をもたらしたことやその後招へいしたBSEの国際的な専門家からもID強化の勧告がなされたことから、新たな技術を導入した制度の強化を図るとした。

6 米国、カナダ、メキシコの3カ国農業大臣がBSEに関する共同声明発表

 ベネマン農務長官、カナダのスペラー農業・農産食料大臣、メキシコのウサビアガ農務長官は1月16日、米国、カナダでのBSE発生を踏まえた今後の北米3カ国での協力などについての共同声明を発表した。3カ国の農相は、(1)北米地域の食料供給における安全性の確保を継続することを目標に北米地域で発生したBSEに対しBSEに関する規制の調和や同等のための努力を促進させること(2)牛肉に対する消費者の信頼を確保すること(3)北米地域の牛肉産業が緊密な関係を持つことを認識し、BSEへの規制と貿易の双方の観点から協調する必要があること(4)OIEのガイドラインを科学に基づいたものに改定し、国際貿易において適用されることを目標にした意見交換を進めること(5)副大臣クラスによる牛肉の輸出再開に向けた調整を行うこと−について同意したとしている。また、メキシコのウサビアガ農務長官は会見で、「米国がBSEに対する追加的な対策を実施し、これらがわれわれを満足させるものであれば、すぐに米国からの輸入を再開する予定である」と述べた。

7 米国下院農業委員会によるBSE発生に関する公聴会

 米国下院農業委員会は1月21日、BSEに関するUSDAに対する公聴会を実施しベネマン農務長官からBSE調査の状況などを聴取した。公聴会では、初めに下院議長からクリスマスや年末年始の休暇を返上してBSE発生後の疫学調査やBSE対策のための規則の改正等にUSDAが鋭意取り組んできたことに対する感謝の意が述べられた。その後の各委員から、日本をはじめとする貿易相手国に対する適時の輸入再開の要請、米国にBSE発生牛とともに輸入された牛の追跡調査状況、カナダからの生体の輸入再開のための規則案の状況およびサーベイランスの強化や歩行困難牛等の食用の禁止等について質疑がなされた。ベネマン農務長官は、米国産牛肉の輸出再開は最優先事項である等とした。

8 米国食品医薬品局(FDA)による追加的な対策

 FDAは1月26日、ベネマン農務長官が12月30日に公表したBSEまん延防止のための具体的な対策に加え、食料・化粧品等への歩行困難牛由来原料の使用禁止、反すう家畜由来動物たんぱくの反すう家畜への給与禁止に関する例外の廃止など、対策の概要を発表した。これらの改正規則は近日中に公表され、これと同時に施行されるとともに意見公募が行われる。

(1)食料(栄養補助剤を含む)および化粧品について、歩行困難牛・死亡牛由来の原料、SRM、既にUSDAにより食用が禁止された機械的除肉・先進的食肉回収システム(AMR)による肉の使用を禁止する。

(2)最近の科学により血液がBSEの感染源を媒介する可能性が示唆されているとして、反すう家畜由来動物たんぱくの反すう家畜への給与禁止の例外規定であったほ乳類の血液・血液製品を牛以外の反すう家畜用の飼料のたんぱく源として使用を禁止する。

(3)家きんの飼料残さはこれまで肉用牛と大規模な家きんの農場が隣接して存在する国内の幾つかの地域で反すう家畜への飼料原料として利用されてきたが、肉骨粉などの反すう家畜への給与が禁止されている飼料を含む可能性があることからこれを禁止する。

(4)大規模なレストラン等からレンダリングに回されていた食料残さについて、禁止されている飼料との区別が困難であることから、家畜飼料に関する規則の強化の観点から、反すう家畜の飼料原料としての使用を禁止する。

(5)飼料の交差汚染の防止を強化するため、反すう家畜への飼料としての使用が禁止されている製品を用いて非反すう家畜用の飼料を製造している施設等が反すう家畜用飼料も製造する場合にあっては、施設、工場、製造ライン等の分離を求める。

(6)なお、FDAは(2)から(5)の遵守の確保のために飼料工場やレンダリング施設への査察を実施する。

9 米国上院農業、栄養、森林委員会によるBSE発生に関する公聴会

  米国上院議会農業、栄養、森林委員会は1月27日、BSE発生後の近況に間する公聴会を開催した。ベネマン農務長官は、輸出再開問題に関連し、ゼーリック通商代表が、2月上旬にWTOとBSE問題について議論するために日本を訪問する予定であることを明らかにした。また、委員からはサーベイランスやSRMの扱いなどについてその適正を問う質問がなされたが、ベネマン長官は、既にサーベイランスの対象頭数はこれまでの約2万頭でもOIEの基準をはるかに上回る水準にあること、SRMの30カ月齢以上と未満の扱いが異なるのはOIEの基準に基づくものであることなど従来からの説明を繰り返した。

10 海外家畜疾病諮問委員会・BSE小委員会は米国政府のBSE対策の評価報告を公表

  米国農務長官の諮問委員会である海外家畜疾病諮問委員会のBSE小委員会は2月4日、米国政府のBSE対策を評価する報告書を公表した。報告書では政策立案に際して、科学を基にアプローチを試みる米国政府の基本的な姿勢を評価しているものの、今回の発生を「単一の輸入された事例」として排除するのではなく、北米地域土着のケースとして認識すべきであるとして、追加的な対策の実施を提言した。

(1)疫学調査

 発生牛は成牛になるまで飼育されたカナダで感染した可能性が高いものの、カナダ等から他の感染牛が輸入され米国産牛にも感染が生じている可能性がある。疫学調査を継続しても成果は漸減するのでこれを終了し、その労力をサーベイランスの強化や他の措置の企画や実施に振り向けるべきである。

(2)対策

 今回の発生を北米における発生事例として認識し、北米自由貿易協定地域における適当な政府機関間での密接な協力を行うこと。政策が科学的に妥当な形で首尾一貫して進められるよう、USDAの指導の下に政府および非政府関係者を含むBSEタスクフォースを設置する。

(3)SRM

 米国のBSEのリスクがOIEの基準に照らし最小限のものであると証明されるまで、12カ月齢を超えるすべての牛について、脳、脊髄、頭蓋、脊柱およびすべての腸管をSRMとして食料と飼料の双方から排除することを提言する。ただし、当面の間30カ月齢を超える牛の中枢神経組織、頭蓋、脊柱、小腸を食品から排除する妥協策を採ることはやむを得ないと考える。SRMの除去の際の枝肉の交差汚染防止に留意する必要がある。スタンニングの方法や機械的除骨についても国際的な基準に整合させるべきである。

(4)ダウナー(歩行困難牛)

 歩行困難牛が一般のと畜ラインから排除されることにより、適切なサンプルの採取ができなくなる恐れがある。このため、死亡牛および歩行困難牛の適切なサンプルを確保するための追加措置をUSDAは講ずるべきである。また、このようなリスクのある牛のサンプルのための農家への指導等も検討すべきである。

(5)サーベイランス

 歩行困難牛等が一般のと畜ラインから排除されることによりBSEの感染因子が北米内で循環していることが明白なので、サーベイランスをその程度が確認できるよう大幅に拡大すべきである。サーベイランスは歩行困難牛等の高リスク牛を対象とし、特に30カ月齢を超える高リスク牛については全頭を対象とする。この際の月齢の鑑定には歯列の鑑別が有効である。食用目的でと畜される牛の全頭検査は公衆衛生・家畜衛生の観点からは正当化されない。

(6)検査

 一時的なスクリーニングとして急速免疫診断検査法を採用すべきである。検査材料の受領と検査の期間の短縮、全国にスクリーニング検査を行う施設の設置が必要である。全国獣医研究所(NVSL)内にBSE研究施設を残し、確定診断や専門的検査を担当させる。

(7)飼料規制

 すべてのSRMは、ペットフードを含めたすべての動物用飼料から排除されるべきである。現行の米国の部分的な規制では不十分であり、すべてのほ乳類および家きんのたんぱくをすべての反すう家畜飼料から排除する。この禁止措置および交差汚染防止措置が強力に実施されるべきである。

(8)トレーサビリティ

 北米の農業に適合した全国的な個体識別制度を実施すべきである。

(9)教育

 法規制の遵守の達成のためには効果的な教育プログラムが必要である。BSEの症状に関する情報の普及やBSEやその対策に関する教材の開発や大学等の教育課程への導入が必要である。

  (10)その他

 北米でのBSEの発生は、輸入国が国際基準を示さない場合に輸出国が多大な社会的影響を受けることを示した。米国が国際基準に沿った輸出入政策を採用し、貿易問題においてリーダシップを発揮すべきである。米国が肉骨粉等の潜在的な汚染物質を輸出するに際し、引き続き責任のある行動を継続することを希望する。

11 ベネマン長官は小委員会の指摘を踏まえた追加的な対策の実施は未定

 ベネマン農務長官は2月2日、米国政府が議会に提出する2005会計年度予算のうち、農務省所管分野の予算内容について発表した。このうち今回のBSE発生を踏まえた対策として、対前年377%増の総額6千万ドル(約64億2千万円、1ドル=107円)が計上された。内訳としては、農業研究所における最先端のBSE診断技術の研究開発(約5億3千万円)、サーベイランスの強化(4万頭、約18億2千万円)、全国個体識別システムの開発促進(約35億3千万円)となっている。

 また、同長官は2月5日、海外家畜疾病諮問委員会のBSE小委員会が4日に公表した報告では追加的な対策の期限が設定されていないこともあり、今後これを受けて新たな追加的な対策を講ずるかどうか分からないとした。特に、同報告とハーバード大危険性評価センターのリスク評価とに大きな隔たりがあることから、ハーバード大危険性評価センターの関係者とも議論したとした。

 全国牛肉生産者・牛肉協会(NCBA)は、BSE小委員会の報告は米国がこれまでに実施してきたBSE対策が適切に評価されていない等の懸念を明らかにしている。

12 USDAは疫学調査の終了を宣言

 ディヘイブンUSDA首席獣医官は2月9日、今回の米国内でのBSEの発生に関する疫学調査を終了したと発表した。BSE発生牛とともに米国に輸入された81頭の追跡調査については、総数で255頭の所在確認を実施し、この中に28頭が含まれているとした。発生牛との出生同期牛(Birth cohort)は81頭のうち25頭であり、14頭の確認ができたとしている。追跡については、米国への輸入から数年が経過しており、これ以上の書類による追跡は困難であり、かつ、個体識別用の耳標も外されていると考えられ、また、何頭かについては既にと畜されている可能性もあるとして調査の継続が困難であるとした。特に、推計からは11頭のみが生存とされていた中、14頭の確認が行われたのは追跡調査が鋭意進められた証であるとし、海外家畜疾病諮問委員会のBSE小委員会からも過去のリスクの追跡ではなく将来に目を向けるようにと言われているとして調査の終了が妥当であるとした。また、未発見牛については、30カ月齢以上のSRM除去等の措置が既に講じられており安全上の問題はないとした。


2 EU−ブリュッセル駐在員事務所   山崎良人、関 将弘

米国に対する評価に基づく措置を既に実施

 欧州委員会のデビッド・バーン委員(保健・消費者保護担当)は2003年12月24日、米国においてBSEの発生が確認されたことに関するコメントを発表した。「EUに対しBSEを持ち込む危険がある牛肉等が輸入されないようにするため、EUが実施している数多くの予防対策が正しかったということを立証できた。これらの措置は、99年10月以降実施されているものであるが、これらの措置は、科学的なリスク評価に基づいたものである。この科学的な評価において、米国についてもBSEの発生のリスクを有する国であるとして評価していた」と述べている。

 なお、バーン委員の発言にある科学的なリスク評価とは、EUの科学運営委員会(SSC:Scientific Steering Committee)が開発した「BSEの地理的リスク(GBR: Geographical BSE Risk)」と呼ばれているものである。このGBRとは、一国のある時点におけるBSEに感染した一頭あるいは複数の牛が存在する可能性を示す定性的指標であり、この指標は、BSEの症状を示した牛の有無のみならず、貿易のデータなども含めた可能性のある危険因子を系統的に評価したものである。SSCは2000年8月1日、米国を含む23カ国のGBRを発表した。これによると、米国のGBRレベルは、GBRII(BSEに感染した牛はありそうにないが、ないとは断言できない)という評価であった。EUは、この評価に基づいて措置を講じてきたということである。


成長促進ホルモン投与の肉牛の輸入を禁止

 一方、EUは、消費者の強い反対により、成長促進ホルモンを投与した牛から生産された牛肉の輸入を89年1月から禁止している。これにより、EUには、米国、カナダなどを含む第3国からの牛肉は、ホルモンフリーが証明できるものしか輸入されていない(EUにおける米国からの牛肉輸入量(製品重量ベース)は、2001年 355トン、2002年 249トン、2003年(1〜4月)135トン)。

 米国に対するGBRに基づいた措置を講じてきたこと、また米国からの牛肉がほとんどないことから、今回の米国でのBSE発生に対するEUにおける反応は、日本におけるそれと比べ、非常に小さなものであった。


FAO、BSE対策強化の必要性を強調

 イタリアのローマに本部がある国連食料農業機関(FAO)は1月12日、2003年12月の米国内における初のBSE発生を受け、各国におけるBSE対策の強化を求める声明を発表した。

 FAOは、「消費者を安心させるための必要最低限の対策について、多くの国がいまだに混乱している。また、多くの国で、BSE対策の実施がいまだに不十分な状況である」とし、各国政府および業界団体に対し、以下の対策の厳格な実施を求めた。

・家畜、少なくとも反すう動物への肉骨粉給与の禁止

・飼料製造過程における交差汚染の防止措置の実施

・30カ月齢以上の牛からのSRMの除去および適切な処分

・BSEやスクレイピーの病原体を十分に不活化する条件(3気圧、133度20分)の下でのレンダリング処理の実行

・牛の飼養頭数に応じた有効なサーベイランスの実施および家畜の生産、加工、流通を通じた確実な個体の確認とトレーサビリティの確保

・脊柱などからの機械的除肉(Mechanically removed meat)の利用の禁止

 FAOは、これらの対策の中で、特に「肉骨粉の給与禁止」、「SRMの除去」の実施により、フードチェーンにおけるBSEの危険性は極めて低くなるとしている。

 また、FAOは、「もし、国内でBSEが確認されているにもかかわらず、厳格な対策が講じられていないのであれば、広範なBSE検査が必要である。30カ月齢以上の食用にと畜される牛全頭についてBSE検査を実施することは、消費者の信頼を高めることになる。BSE検査に要する費用は、1頭当たり約50米ドル(約5,350円)であり、人の健康そして食肉市場での損失と比べると、BSE検査の経済的効果はとても高いものである」と述べている。


3 オセアニア−シドニー駐在員事務所   粂川 俊一、井上 敦司

 米国において初のBSE発生が確認されたことで、日本では今後の供給のひっ迫見込みを反映し、昨年末から輸入牛肉価格が急騰したことは各種報道の通りである。日本政府も年明け早々、豪州とニュージーランドに牛肉需給事情調査団を派遣し、1月15日に調査結果が公表され、同日、豪州側も豪州大使館と豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の共同声明を日本で発表した。

○ 豪州およびニュージーランドにおける牛肉需給事情調査について
  (農林水産省プレスリリース)
http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20040115press_6.htm

○ 豪州、牛肉対日輸出拡大に最大限の努力
(豪州大使館・MLA共同リリース)
http://www.aussiebeef.jp/media/pdf/pressrelease/15Jan04.pdf

 この日本政府の調査団の訪豪に呼応するかのように豪州でも業界と政府がそれぞれ声明を発表したので紹介する。

業界団体は早期市場安定を切望

 MLA、豪州フィードロット協会(ALFA)、豪州食肉産業協議会(AMIC)、豪州肉牛協議会(CCA)は1月12日、共同声明を発表した。4団体を代表してMLAのクロンビー会長は次のように述べた。

(1) 豪州にとって米国は牛肉の国際市場における競争相手であるが、現在の米国牛肉業界に同情

 豪州は、米国の業界と政府がこの問題の対応に努力していることを評価しており、米国において牛肉に対する消費者の信頼を確保することは、米国の生産者だけでなく、米国市場に供給する他の国々の生産者にとっても重要である。

(2) 豪州牛肉業界に対する米国のBSEの影響を判断するには時期尚早

 短期的には、一時的な輸入停止措置で日本や韓国からの追加需要があるかもしれない。しかし、環太平洋の牛肉市場は複雑に融合しているため、一つの市場の混乱はすべての市場に影響を与える。従って、米国のBSEによる貿易中断が早期に解決され、市場の安定を速やかに回復することがすべての供給者と消費者にとって重要である。

(3) 豪州はBSE清浄国であるが、米国の経験は重要な教訓

 今回の米国の対応ですべての家畜は出生牧場からと畜場まで迅速かつ正確に追跡されることの必要性が強調されており、いかなる家畜疾病においてもトレースバックが確実なシステムを実施することは極めて重要である。

政府は対日輸出増に努力を表明

 一方、豪州連邦政府のトラス農相は1月9日、日本の調査団の訪豪に関連し、「米国産牛肉の対日輸出再開までの間、牛肉の輸出増に最大限の努力をする」と表明し、次のように述べた。

(1) 豪州は米国産牛肉の輸入停止から生じる供給問題を利用するつもりはないが、日本は重要な市場であり、日本の消費者が高品質な牛肉を入手する手段を維持することは重要であるため、豪州はこの困難な期間に最大限の努力をする。

(2) 豪州は米国産の不足分すべてを補うことはできないが、日本市場が求める追加の輸入量をある程度供給する能力を持っている。

(3) ただし、日本の牛肉関税緊急措置については、特に2005年における発動の可能性を懸念しており、日本政府に対して再考を促していく(ベール貿易相も1月8日、中川経産相に牛肉関税緊急措置について即時の撤回と将来的な発動基準数量の低下の懸念から本措置の再考を要請する書簡を送付している)。

豪州にとってもカギを握る米国の対応

 豪州は総じて、国際的な牛肉貿易が早期に回復することを望みつつ、日本市場への供給増の可能性を示唆している。ただし、豪州にとって米国は日本と同様に重要な市場であることは間違いなく、特に米国業界に配慮したコメントが印象的である。

 豪州業界内では、米国のBSE発生確認のニュースが飛び込んだ以降の数週間でかなりの利益を上げたとの話も流布されるが、中・長期的には米国の輸出再開の時期がカギを握っており、計画的に導入を考える必要のあるフィードロット業界をはじめとする関係業者は、今後の見通しに頭を悩ませているのも現状の一面である。

 MLAのバーナード部長は、豪州にとって今回の貿易中断は長期的にはほとんど追い風にならないとした上で、「豪州は短期的には利益を得るだろうが、真の利益ではない」と語っており、このコメントに豪州の置かれている立場が如実に表されている。


豪州の対日牛肉輸出、1月としては過去最高

 このような中、MLAは2月3日、2004年1月の日本向け牛肉輸出が2万3,701トンと1月としては過去最高を記録したことを発表した。内訳は、冷蔵品1万3,233トン(グラスフェッド6,288トン、グレインフェッド6,946トン)、冷凍品1万468トン(グラスフェッド8,652トン、グレインフェッド1,816トン)。

 MLAでは、豪州の主要パッカーが本格的に稼動し始めたのが1月中旬以降で、輸出は月後半まで限定的であったが、カナダに続く米国からの輸入停止に伴い、日本市場の牛肉供給を部分的に補う傾向が表れているとしており、短期的には日本市場からの強い需要は継続するとみている。


4 南米−ブエノスアイレス駐在員事務所   犬塚 明伸、玉井 明雄

米国のBSE問題に対し、ブラジル政府は米国からの反すう動物や製品の輸入を停止

 ブラジル農務省は12月24日、米国でBSEの感染が疑われる牛が確認されたことを受け、同国からの反すう動物、反すう動物由来の製品および受精卵の輸入を停止した。なお、一定の温度で高熱処理された肥料原料用の骨粉、牛乳・乳製品、精液などについては輸入を認めている。

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、米国からの生鮮牛肉(冷蔵、冷凍肉)輸入量(製品重量ベース)は、98年が4,295トン、99年が958トン、2000年が130トン、2001年が22トン、2002年以降は数トン、また、96年から2003年11月までの米国からの生体牛輸入頭数は、1,444頭(累計)となっている。


BSE対策として生体牛に関する訓令を公布

 さらに、ブラジル農務省は12月24日、BSE対策として訓令第18号(2003年12月15日付け)を公布した。なお、同訓令は、米国でBSEの感染牛が確認される以前に、BSEの発生国やBSE発生のリスクがある国から輸入された生体牛(牛または水牛)の取り扱いに関して規定されたものである。その概要は以下の通りである。

(1) BSEが発生した国またはBSE発生のリスクがある国から輸入された牛または水牛のと畜を禁じる。

(2) 衛生当局の許可なく、(1)の家畜を他の飼育場に販売、移動することを禁じる。

(3) (1)の家畜が死亡した場合、衛生当局に報告し、許可を得た後、処分することができる。

(4) (1)の家畜が、繁殖能力を失った場合、衛生当局の監視の下、殺処分するものとする。

(5) (4)により殺処分された家畜は政府による補償の対象となる。ただし、本訓令の公布後に、BSEが発生した国またはBSE発生のリスクがある国から輸入された家畜は補償の対象外とする。


新たな市場獲得は家畜衛生対策の強化がカギ

 米国のBSE問題に対するブラジル政府の反応として、ロドリゲス農相は12月24日、同国は今回の問題を契機に、牛肉だけではなく鶏肉や豚肉についても新たな市場を獲得できる可能性があることを示唆した。しかし、その一方で、食肉輸入国が防疫対策を強化すると見込まれることから、新市場の獲得はさらに困難になるとみており、政府と民間部門が連携して家畜衛生対策を強化する必要性があると訴えた。

 また、業界の反応として、ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)のプラチニデモラエス会長(前農相)は、牛肉輸出を拡大するには家畜衛生対策への投資が前提となることから、米国のBSE問題が直ちに輸出増加につながるわけではないとした上で、業界は輸出量の増加よりも輸出製品の高付加価値化に重点を置くべきであると指摘した。


牛肉輸出市場の開拓を積極的に行う方針

 一方、ブラジル農務省は1月5日、米国のBSE問題を契機に、民間部門と連携してブラジル産牛肉輸出市場の開拓を積極的に行うことを表明した。農務省によると、その一環として、同省で行われた牛肉関連産業の代表者を集めた協議会において、・BSEを予防するための技術指導要領の作成・ブラジル産牛肉の優位性を外国市場にアピールするためのマーケティング戦略の立案・家畜衛生に関する戦略の立案と予算措置−について検討する作業部会がそれぞれ結成された。

 また、農相は同協議会の席上、・家畜衛生対策関連予算の増額を要求していること・今年の牛肉輸出額は前年比15%増と見込まれること・植物性飼料の需要増加に伴い大豆の輸出増加が見込まれること─などのコメントを併せて発表した。

 なお、同省は1月9日、食肉部門の輸出増を図るため、アジア諸国などとの交渉を行う一方、家畜衛生対策関連予算について、国家予算として承認されている6,800万レアル(約24億4,800万円:1レアル=約36円)のほかに、口蹄疫、豚コレラ、ニューカッスル病の予防対策として、6,000万レアル(約21億6,000万円)の増額を要求中であるほか、家畜衛生分野における技術者500名の緊急採用も検討中であると発表した。


アジアへ派遣したミッションの成果は鶏肉のみ

 また1月26日〜2月3日に日本、韓国、台湾にブラジル産牛肉のプロモーション等を行うため、ブラジル農務省のタダノ農牧防疫局長を中心に企業家を伴ってミッションが構成された。

 奇しくもタイで高病原性鳥インフルエンザが発生し、各国がタイ産鶏肉の輸入を停止ししたため、今回のミッションの最大の成果は、韓国がブラジル産生鮮鶏肉5万トン、約8千万ドル(約85億6千万円)相当を輸入する可能性があることである。ジマルジオ次官によると契約が成立すれば、ブラジル産生鮮鶏肉が初めて韓国に輸出されることになる。

 なお、生鮮牛肉の輸出に係る成果についてコメントはなされていないが、2月6日の農務省コメントによると「ブラジルは既に加工牛肉と生鮮鶏肉を日本に輸出しているが、それ以外に米国が日本に輸出していた生鮮牛肉の一部を代替して輸出したい」としている(参考:ブラジルは、口蹄疫に係る衛生条件のため日本への生鮮牛肉の輸出は認められていない)。

5 東南アジア−シンガポール駐在員事務所  木田 秀一郎、斎藤 孝弘

米国でのBSE発生とアセアン諸国の反応

  アセアン(東南アジア諸国連合)加盟10カ国は米国で2003年12月23日にBSE発生の確認が報じられたのを受けて、相次いで輸入禁止措置等の対応を行っている。当地域の米国産牛肉輸入量は国により差はあるものの概して少量もしくは皆無で、輸入禁止措置が需給に及ぼす影響は他地域に比べ限定的である。各国の対応状況は以下の通り。

インドネシア

 農業省畜産総局は12月24日、前日の米国でのBSE発生確認の報告を受けて、ヤギ・羊等を含む反すう獣家畜全般の生体および肉・肉製品の米国からの輸入を禁止する措置を発令(2003年12月24日No.96/KL.050/F/12.03)した。

 農業相の説明によると、例年の米国産牛肉の輸入量は約8,500トンであり、豪州などから生体で輸入され、フィードロットで飼養された後に流通する形態が多くを占める同国の牛肉・牛肉製品流通事情においては、米国産牛肉の輸入禁止措置による需給への影響は少ないとされている。

フィリピン

 農務省は米国のBSE発生確認の報道を受け、当面の措置として12月23日以降、米国産牛肉の輸入検疫証明書の発行を停止することにより対応していたが、2004年1月12日に、12月29日付けの措置として米国産牛肉に関する輸入制限措置を発令(Memorandum Order.No33)した。それによると、(1)30カ月齢未満で、SRM とされる部位をすべて除去した牛肉に限る(2)歩行困難牛由来のものを除く(3)USDAもしくはフィリピン農務省がそれに準じると認定する第3者証明機関によって30カ月齢未満と認定された牛由来であること(4)と畜日がラベル等により表示されていること(5)以上の条件を満たさないと判断された米国産牛肉・牛肉製品は検査により没収される─としている。12月末の農務省による発表では2003年の同国の牛肉輸入量は約3万3千トン、うち米国産はその約8%に当たる2,800トン程度とされている。

タイ

 農業協同組合省畜産開発局は公衆衛生・保健省と共同で12月24日、米国産牛肉および牛肉製品(乳製品やゼラチン、コラーゲン等危険性のないとされる製品を除く)の輸入を禁止するとした。2002年の米国産冷凍牛肉輸入量は299トン、最大の豪州産が同844トン程度とされている。同国全体の牛肉輸入量は1千トン台と少なく、また同国では牛肉に対する需要自体が鶏肉と比べても6分の1程度と少ないため、国内食肉需給に及ぼす影響は限定的なものとなっている。

 その他同国における輸入牛肉の安全性確保の点で、近年低価格故にマレーシア国境から密輸されるインド産牛肉の流通が問題となっている。 マレーシア  農業省獣医局は12月24日、米国産牛肉および牛肉製品(ゼラチン、その他を含む)の輸入を一時停止すると発表した。同局局長の説明によると近年同国は年間約8万4千トンの牛肉を輸入しており、そのうち約0.3%に相当する290トン程度が米国産で、全体の約80%はインドから、残りは豪州およびNZ産であるとしている。また、輸入停止解除の時期については状況を見ながら対応したいとしている。

 同国内では、今回の米国でのBSE発生確認の影響は需給面よりむしろ消費者の感情面での反応が大きく、首都クアラルンプール近郊のセランゴール州のある消費者団体は米系ファーストフードチェーンを特定し、米国産牛肉を使用していないことを明確化するよう求めるなどの混乱が生じたと報じられている。

シンガポール

 農産食品・獣医庁(AVA)は12月24日、米国産牛肉および牛肉製品(牛肉エキス、ゼラチンを使用したすべての加工食品を含む)の輸入を禁止するとし、同日現在、既に積出港をたった未着の洋上貨物についても同様の措置を適用するとした。AVAは現在、同国に牛肉および牛肉製品を輸出するすべての国に対し輸出日、と畜日からさかのぼって6年間、BSE汚染が無かったことを証明するよう義務付けている。

 AVAの発表によると、同国は2003年1〜11月期の牛肉輸入総量は約1万8千トンで、その多くは豪州、NZ、ブラジル産としている。また2003年の米国産牛肉輸入量は988トンとしている。

 また同国内3牧場で飼養される全約700頭の牛はすべて乳用種で、動物性飼料は給与されていない。 ベトナム  農業・農村開発省は12月25日、在越米国大使館による説明を受け、同日付で米国産牛肉製品の輸入を停止するとした。同省の発表によるとベトナムの牛肉輸入は主に豪州・NZ産で、米国産輸入品の多くは家畜飼料用の肉骨粉であるとし、これらの反すう獣家畜への給与についても禁止するとした。

 米国貿易委員会の資料によると、同国産牛肉製品の2003年1〜10月期の輸入額は12万5千ドル(約1,338万円)とされている。 ブルネイ  政府は12月29日付けの通達により、米国産牛肉製品(牛肉エキス、缶詰品等を含む)の輸入を一時停止するとした。また、既に輸入許可を与えたものについてもこれら許可を無効にするとした。同国保健省は予防措置として、牛肉製品を同国に輸出するすべての国に対し、輸出の6カ月前までにBSE未発生の確認を義務付けると発表している。

カンボジア

 政府は公式には他国からの牛肉の輸入を原則全面禁止しており、首都プノンペン周辺で各国大使館関係者向けの牛肉が少量流通しているほか、わずかに密輸牛肉の流通が確認されているとされる。肉骨粉については、輸入禁止とはされていないが、同国では畜産用飼料としての給与は一般的ではないとされる。

ミャンマー

 肉骨粉を含むすべての牛肉輸入は輸出先を問わず現在禁止されており、加工品についてもマレーシア、シンガポールからの缶詰製品などがわずかに流通する程度である。国内と畜場における検査は現在症状の現れたものについてのみ病理組織検査を行っているが、サンプル抽出検査の計画もあるとのことである。

 ただし、同国では16歳未満の牛のと畜を原則的に禁止しており、一部地域・品種を除き、と場に出る牛はすべて16歳以上のものとなっている。

ラオス

 欧州でのBSE発生以来、政府はBSE発生国からの生体牛、牛肉製品(肉骨粉を含む)の輸入を禁止しており、12月の米国での発生確認を受けて米国産についても同様の措置を採るとしている。同国では肉骨粉の畜産用飼料としての利用は家きん・豚用以外では従来一般的ではなく、2003年11月以降は家畜飼料としての使用を全面的に禁止している。

 政府はBSEサーベイランスが既に開始されているとする一方、技術者と予算の不足が原因で機能するには至っていないとしている。


各国(地域)のBSEの対応措置


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