豪州酪農家の経営実態


◇絵でみる需給動向◇


●●●酪農業の環境は厳しさを増す●●●

 豪州酪農産業は、ここ十数年において産出価格の下落と投入価格の上昇に直面している。デイリー・オーストリア(DA)によると、産出価格(生乳価格など、農家が生産に対して受け取った価格)はここ10年間において年平均でわずかに0.2%の上昇にとどまる一方で、投入価格(飼料価格など、農家が生産に対して支払った価格)の高騰は著しく、年平均で2.4%の上昇となった。前者を後者で割った割合は一般に交易条件といわれるが、交易条件も年平均2.2%の下落が続いており、豪州の酪農産業を取り巻く環境が年々厳しさを増していることが明らかになった。

表 過去10〜20年間における生産性の変化
資料:DA「Australian Dairy」

●●●農家の経営努力で生産拡大●●●

 酪農経営を取り巻く環境が厳しくなる中、収益を維持できない農家は離農を余儀なくされている。2002/03年度の酪農家数は10,650戸と20年前の2分の1となっており、減少傾向に歯止めがかからない。

 しかし一方で、生き残りの道を選択した農家は、家畜保有率を上げ、飼料穀物など中間投入量を増加させるなど、規模の拡大を志向している。過去10年間においても、酪農家の規模は、36%増加しており、農家当たりの乳用牛飼養頭数は同45%増と、その生産能力の強化をみてとれる。また、生産性の向上も近年目覚しく、過去10年における1頭当たりの泌乳量は23%の上昇となっており、その結果、1農家当たりの生乳生産量は同78%増と驚異的な伸びをみせている。

●●●生産性の向上も目覚しい●●●

 酪農家の生産性は、技術革新や農法の改善により上昇している。産出に係る生産性は過去10年間で年平均5.9%の増加、投入に係る生産性は同4.7%の増加となっており、酪農産業全体では同1.2%の増加となっている。生産性の向上は、交易条件の下落の一部を補う形で伸びており、農家の収入維持に寄与している。とりわけ、1農家当たりの飼養頭数の増加は、規模のメリットを活用して、飼料コストなどの生乳生産に費やす間接費用をより多くの産出に分散させる可能であり、コスト圧縮に多大な貢献をしている。

 こうした生産性の向上が、国際競争の中で豪州酪農家のパフォーマンスの強化に役立っている。


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