フランス・ドイツの牛飼養頭数は減少傾向


◇絵でみる需給動向◇


 EUにおける肉牛および牛肉生産については、近年の加盟各国における牛飼養頭数の減少傾向が続く中、2003年6月に合意された共通農業政策(CAP)改革で導入された生産と切り離した単一の直接支払いの実施などにより、今後、肉用牛分野への支援が弱まるなどさらに厳しい状況が見込まれている。そこで今回は、両国でEU15カ国全体における牛肉生産量の約4割を占めるフランスとドイツの最近の生産動向などについてみることとする。

●●●飼養頭数、フランスは2.0%減、ドイツは3.3%減●●●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、EUで最大の牛肉生産国であるフランスの2004年5月時点における牛飼養頭数は前年同期に比べて2.0%減の1,964万9千頭となった。カテゴリー別にみると、すべての部門で減少しており、中でも「乳用経産牛」は、生乳生産割当枠(クオータ)内に生乳生産量を抑制するためと畜が増加したことなどから、同3.2%減の380万3千頭となった。また、「1歳以上の雄・去勢牛」は同2.8%減の135万1千頭、「肉用経産牛」は同1.2%減の416万6千頭となった。なお、2004年のフランスにおける国産牛(子牛を含む)と畜頭数は、前年の繁殖用めす牛の減少による子牛生産の低下などから、前年に比べ3.0%減の約700万頭、また、2005年においてもその減少傾向は続くと見込まれている。

 一方、フランスに次ぐ生産国であるドイツの同時点における牛飼養頭数は、昨年約5千戸の酪農家が廃業するなど、牛飼養農家戸数が全体で前年に比べて5.0%以上減少したことなどから、前年同期に比べて3.3%減の1,319万6千頭となった。カテゴリー別にみると、「1〜2歳の若齢雄・去勢牛」で同6.7%減、「1歳以下の雄子牛」で同3.5%減と若齢雄牛の減少傾向が大きかった。なお、2004年のドイツにおける牛と畜頭数は、前年に比べ5.0%程度増加するものの、2005年には減少傾向に転じると見込まれている。

表1 フランス・ドイツのカテゴリー別牛飼養頭数
(単位:千頭、%)
資料:MLC
 注:各年5月時点の頭数

●●●フランス、生体牛の輸入が増加●●●

 このように飼養頭数が減少を続けるフランスの牛肉輸出入についてみると、2004年前半の牛肉(冷蔵・冷凍、製品重量ベース)の輸入量は前年同期に比べて9.3%増の24万4千トンとなった。主な輸入先はドイツとオランダで、それぞれ6万4千トン(同8.9%増)、6万3千トン(同3.6%増)となった。また、近年はスペインとイタリアからの加工品向け牛肉の輸入が増加している。さらに、同国における繁殖めす牛飼養頭数の減少から、生体牛(子牛含む)の輸入が同33.5%増の17万2千頭と大幅に増加し、中でもドイツからは同69.2%増の6万8千頭、スペインからは同19.7%増の3万4千頭と顕著であった。一方、EU域内向け輸出量は、イタリアやギリシャなどにおける冷蔵牛肉への強い需要により同12.2%増の26万トンとなった。

表2 フランスの牛肉等輸出入量
(単位:千頭、%)
資料:MLC
 注:製品重量ベース、各年1〜6月期

●●●2005年ドイツ、牛肉需給予測●●●

 また、ZMPによるドイツの牛肉需給予測をみると、2004年における牛肉生産量は、下半期において、クオータ制度による生乳生産抑制のため増加した乳用経産牛のと畜傾向にも歯止めがかかることや、生体牛輸出が減少することなどから前年と比べて2.6%増の125万8千トンと見込まれている。また、輸出入についてみると、輸入は新規加盟国最大の牛肉生産国であるポーランドなどから同8.7%増の30万トン、輸出は、ロシアにおけるEU産牛肉の輸入一時停止措置にもかかわらず堅調で、0.4%増の50万トンと見込まれている。なお、2005年の国内牛肉生産は、CAP改革による肉用牛分野への影響などから減少し、牛肉の介入在庫も解消された現在、今後、不足分については輸入により賄われると見込まれている。

表3 ドイツの牛肉需給予測
(単位:千トン)
資料:ZMP

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