FAO、BSEの冷静な対応を求める声明を発表


FAO、散発的なBSEの事例で声明を発表

 国連食料農業機関(FAO)は2月7日、カナダや米国で発生したBSEについて、消費者、生産者は動揺すべきではないとした声明を発表した。

 この声明は、カナダでのBSE感染牛の発見、フランスのヤギでのBSEの確認、また日本での初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病による死者が出たことを受けたものと考えられる。

 また、FAOは、BSE未発生国においても、落ち着いて科学的な耳標や電子システムを使用した個体の確認、国内での個体の登録と移動履歴、BSEの疑いのある牛での義務的なテストなどの取り組みを行うことが必要であるとしている。特に、生産者や獣医師の総合的な認識はそれぞれ不可欠な対策の一部であるとしている。意識の向上は、疑いのある牛の発見の促進につながるとしている。

 

BSEの理解不足を指摘

 FAOシニアオフィサーのスピーディ氏は、 BSEについて理解不足の面があると次のことを指摘している。「BSEは成牛でのみ確認されるものであり、BSE検査を受けなければならないのは、緊急と畜牛やへい死牛である。と畜場ですべての牛をテストすることは重要ではない。なぜなら、と畜される牛の大半は病気を発見するには若すぎるからである。なお、感染した牛のBSEの神経系症状はさまざまであることを覚えておくべきである。」

 

米国、カナダの対策は機能

 カナダでの3例、米国での輸入された牛での1例のBSE発生については、現在両国で機能しているサーベイランスにより発見されたものであり、これらは散発的な事例であるとしている。2004年には、米国で約9,500万頭のうち17万6千頭に、また、カナダでは、1,450万頭のうち2万1千頭に対してBSE検査を実施した。反すう動物への反すう動物由来のたんぱく質の給与も両国ともに1997年以降禁止しており、両国での対策は機能しているとしている。

 

フランスでのBSEのヤギも特異な例

 フランスのヤギで1月末、牛以外の食料動物で初めてのBSEが確認された。FAOは、今回発見されたヤギは数百万頭のうちの1例であり、欧州で2001年1月から開始した肉骨紛(MBM)の給与禁止(フィードバン)の実施前の2000年に生まれたものであることを強調している。

 

SRM除去、交差汚染防止を推進

 FAOは、BSE対策について、フィードバンだけでは十分でないとしている。このほかの不可欠な対策は、潜在的なBSEの伝染性の物質である特定危険部位(SRM)のフードチェーンからの除去、レンダリングや飼料業界における交差汚染の防止であるとしている。飼料の製造工場については、牛と豚や家きんに係るラインを完全に分けて実施しなければならないとしている。

 

◎イギリスでもヤギでのBSEの可能性

 イギリス環境・食料・地域開発省(DEFRA)は2月8日、同省の研究機関である獣医研究庁(VLA)から、1990年にスクレイピーであると判断されたヤギのサンプルにBSEと思われるものが存在するとの報告があったことを発表した。

 さらに詳しい検査により、このヤギのサンプルは、実験的にBSEを感染させたヤギのサンプルとよく似たものであることが判明した。VLAの報告は、先般のフランスでの事例に続くものである。

 このサンプルを解明するために、さらなる調査を実施する必要があり、そのためには早くても1〜2年は要すると見込んでいる。

 その後、3月3日に開催された海綿状脳症諮問委員会では、当該ヤギは、孤発例であると考えられること、MBMの給与禁止(フィードバン)が講じられていることから、BSEのヤギが存在する証拠はなく、BSEに汚染された食料を給与された可能性は低いという結論に達した。また、これまでの調査頭数が限られたものであることからヤギのサーベイランスの頭類を増やすことなどの計画を歓迎している。


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