ベネズエラへ初の生体牛を輸出      ● アルゼンチン


890頭の乳牛がベネズエラへ

 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)によると2月1日、ホルスタイン種の未経産牛890頭が初めてベネズエラへ向けて船積みされた。これは昨年のアルゼンチンにおける天然ガス・電力不足のエネルギー危機に際し合意された、ベネズエラから燃料油を輸入する一方、アルゼンチンから食料品などを輸出するという協定によるもので、ベネズエラのチャベス大統領のアルゼンチン訪問に合せて実現した。現在、ベネズエラが直面している国内消費向けの乳製品の供給不足を補うため、生産性向上を図ることを目的に、最終的には合計3千頭の乳用牛が輸出される予定となっている。

 今回の交渉の取りまとめはラエリサ人工授精センター(CIALE)という民間の育種機関が行い、1頭当たり約700〜1,000ドルで販売された。これらの乳牛は1日当たり平均30リットル、年間で7千〜1万2千リットルの乳量を生産する能力を持つ牛と同系統のものであるとしている。

 家畜はアルゼンチンホルスタイン協会(ACHA)に登録され、衛生証明を取得後、ブエノスアイレス州内の3ヵ所で40〜60日間の検疫を受け、船積みされた。

 初の船積みに立ち会ったチャベス大統領は、「ベネズエラはエネルギー資源の豊富な国である一方、アルゼンチンは農業大国であるため、相互交換は当然のこと」と語った。

 米国農務省(USDA)のレポートによると、ベネズエラでは国内生乳生産量は消費量の約55%(2003年)を賄うにすぎず、残りは主にニュージーランドから粉乳として輸入している。生産量はここ10年間減少が続いており、その結果輸入への依存度が高まっている。

 

遺伝資源の輸出拡大に期待

 CIALEの関係者は「今回の輸出はアルゼンチンにとって、大変重要なことである」とし、「遺伝資源の輸出可能性は無限にあり、世界中で要求があるはずなので、この機会を通じて門戸を広げていきたい」と大きな期待を寄せている。

 

2004年の乳製品輸出量は前年比59.4%増

 こうした中、2004年のアルゼンチンの乳製品輸出量および輸出額はいずれも過去最高を記録した。アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)によると、国内生産量の増加や輸出価格の上昇に伴い、輸出量は前年比59.2%増の26万8,177トン(製品重量ベース、ただし牛乳は粉乳換算ベース)、輸出額は同85.1%増の5億4,012万ドル(約573億円、1ドル=106円)となった。主要な相手国は、輸出額ベースで、アルジェリア(全輸出額に占める割合、以下同じ:21.6%)、ベネズエラ(17.3%)、メキシコ(10.5%)、ブラジル(9.6%)となり、また、その輸出先は115カ国に上った。今回生体牛が輸出されたベネズエラは2003年は9,420トンだったものが、384.9%増の45,680トンとなり、輸出先第6位から2位となっている。

 品目別に見ると、乳製品総輸出量の74%を粉乳が占めている。

 

生乳生産量は前年比17.0%増

 好調な輸出に支えられ、2004年の生乳生産量は前年比17.0%増の936万キロリットルとなり、2000年以降続いた減少傾向から4年ぶりに増加に転じた。この増大の要因は、2004年の生乳価格が比較的安定し、穀類などの飼料利用が増加したことにある。

 また、1日当たりの生産量の増加が規模拡大の進展による搾乳施設数の減少分を相殺している。15企業を対象とした調査では2004年12月の施設数は6,420戸と前年同月の6,600戸より2.7%減となった一方で、1日1戸当たりの生産量は2,500リットルと前年同月の2,200リットルより13.6%増となった。


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