欧州の乳業団体がWTO交渉に関する提言を公表


乳業二団体が連名で提言

 欧州乳業協会(EDA)は5月23日、欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)と連名で作成した、世界貿易機関(WTO)ドーハラウンドの農業交渉に関する提言を、欧州議会の農業委員会で説明した。

 この提言は、欧州市場の現状の徹底的な分析に加えて、2003年にEUの共通農業政策(CAP)の改革とともに合意されたEUの共通市場制度の進展状況、2004年7月に合意されたWTO交渉の枠組み合意などを踏まえて作成されたものである。

 

三分野に焦点

 提言は、輸出支援、市場アクセス、国内支持の三分野に焦点を当てており、その概要は以下のとおり。

(1)輸出支援
  輸出補助金は、乳製品に関するEUの共通市場制度の中で非常に重要な施策の一部であり、2014年度まで生乳生産割当枠(クオータ)制度が継続するなどの現行の政策枠組みにおいては、廃止することはできないものである。また、このような主要施策を廃止することは、EUにおける乳製品市場全体のバランスと酪農・乳業界の利益を危険にさらすこととなる。

  EUの輸出補助金の廃止に当たっては、他の国において実施されている輸出支援策が、EUの輸出補助金と並行して廃止されることが極めて重要である。


(2)市場アクセス
  EUは2003年1月29日に、WTO農業交渉のモダリティとして関税を36%引き下げることを提案しているが、ほとんどの乳製品にあっては、この提案を受け入れることは可能である。しかし、この提案よりかなり大幅に関税を引き下げることは、全く受け入れることができないものであり、ホエイおよび調整ホエイにあっては、EUの提案ですら厳し過ぎる水準である。

  とりわけバターと全粉乳は、潜在的な重要品目と見なされなければならないが、関税の削減方式などが不明確な状況にあること、重要品目を設定することが低率の関税割当枠を受け入れることとなることなどから、当面は、乳製品を重要品目とすることを求めない。しかし、香港での閣僚会議において、モダリティ文書の一部としてEUの提案以上に関税を削減することが合意されるのであれば、乳製品を重要品目とすることを求めないとした意見を再検討しなければならない。

  市場価格が低下したときにあっても、輸入品に対する関税が従量税であれば、必要な保護を確保することとなることから、輸入品に対する関税を従量税として維持することが必須である。


(3)国内支持
  WTO交渉の結果は、CAP改革において合意された、生産と切り離した直接支払い制度(デカップリング)およびその他の措置を保証するものでなければならない。

 

COPA/COGECA欧州委員に提言

 また、欧州農業者のロビー団体である欧州農業組織委員会(COPA)と欧州農業協同組合委員会(COGECA)の両組織の会長は5月12日、欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業および農村開発担当)と会談し、WTO農業交渉において、輸出支援策の段階的廃止については、すべての形態の支援策を同様に扱う必要があることなどを提言している。


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