米国農務省、BSEに関する円卓会議を開催


USDAは賛成反対両派に弁論の機会を提供

 米国農務省(USDA)は6月9日、ミネソタ州立大学内でBSEに関する円卓会議を開催した。同会議では、カナダからの牛・牛肉製品の輸入再開問題について、ファーム・ビューロー(AFBF)、米国食肉協議会(AMI)、州政府農業省全国協会、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全国食肉協会(NMA)、全国生乳生産者協会(NMPA)、全国レンダリング協会からは賛成意見が、米国牧場主生産者行動法律財団(R-Calf)、ファーマーズ・ユニオン(NFU)からは慎重または反対意見が述べられた。

 ジョハンズ米農務長官は同会議に終始同席し、R-Calfから示された懸念についてジョークも交えつつ、ディヘイブン動植物検疫局長ならびにコリンズ首席エコノミストに質問をし回答を促すなど、多勢に無勢の中で反論を繰り返すR-Calfに配慮しながら、カナダとの貿易の再開を妥当とする科学的な根拠や禁輸により米国の牛肉業界が直面している経済的な影響について理解を求めた。賛成派および反対派の主張は以下のとおり。



賛成派
・科学に基づいた政策の実施を支持する。

・USDAが実施した科学的な評価においてカナダにおけるBSE対策は機能しているとされており、カナダ産牛のBSEのリスクは非常に低い。

・米国の牛肉業界の受ける経済的な損失を懸念。特に、中小規模のと畜場の廃業も起きており、輸送費の増加が生産者に直接的影響を与えるのみならず、地域の雇用を損なっている。

・飼料規制の効果はイギリスの経験からも支持されており、カナダで誕生した4頭のBSE陽性牛は、BSE対策がすでに講じられた後に摘発されイギリスとは状況が異なることを考慮すべき。

・米国には公衆衛生・家畜衛生のための十分な防火壁が設けられていることをハーバードが実施し改定されたリスク評価でも確認されている。

・USDAにより適切な決定が行われ、消費者はUSDAのみならず生産者も信頼している。

・日本を含め全頭検査は不要と判断している。

・日本をはじめとする輸入国に米国が米国産牛肉の輸入再開を求めている条件を満たすカナダ産牛肉・牛生体の輸入を再開することが、米国産牛肉の禁輸問題を解決する上で重要。

・米国の食肉処理業者は生体価格の上昇により牛肉の生産コストが上昇し、利益率が低下している。米国の食肉処理業界が縮小を迫られる一方でカナダは競争力を増している。


反対派

・BSE対策の有効性について科学的確証はない。飼料規制についても、養鶏の飼料残さや血粉の使用禁止、リスク物品を扱う飼料工場の分離などがUSDAの伝達性海綿状脳症ワーキンググループから提案されており、これまでの対策で十分とは言えない。

・強化されたサーベイランスの結果、新たなBSE陽性牛は摘発されておらず、カナダ産生体牛の輸入により米国内の牛群のBSEに関するリスクを増大させるべきではない。

・カナダでは飼料規制の実施後7カ月後に誕生した牛でBSEの発生が確認されており、この事実は飼料規制が適正に実施されなかったことを科学的に証明している。

・BSE発生国においては、高リスク牛群について世界的に義務的な検査が実施されているが、カナダの検査体制は十分に強化されたとは言えない。

・カナダから米国への生体牛は輸入禁止前には年間150万頭であったが、禁輸後はメキシコからの輸入増もあり実質的なと畜頭数の減少は100万頭に過ぎない。米国のと畜頭数は全体で280万頭減少しており、このような減少はカナダからの輸入禁止以外にも多くの理由がある。

・輸入再開を急ぐ理由はない。


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