第4次ハワード政権下の農業関連政策と課題   ● 豪 州


農相および外相とも再任

 先に行われた豪州総選挙で与党が勝利し、保守連合政権が維持されたが、10月22日に第4次ハワード政権の閣僚名簿が発表された。農業関連では、トラス農相およびベール貿易相とも再任された。再任に当たって、両大臣とも同日に声明を発表し今後の抱負や政策課題などを述べた。以下にその概要を紹介する。

○トラス農相は輸入リスク評価体制の強化

 トラス農相によると、農業の現状については、干ばつ、環境や動物福祉問題、不公正な競争の増加などの多くの試練に直面しているが、一方で産業界が未来への展望を持って、それらの困難な状況に取り組む絶好の機会であるととらえている。

 また、農産物輸出による収益が年間360億豪ドル(2兆9,520億円、1豪ドル=82円)に及び、雇用の面でも、農業部門で働く者の数は最近5年間(1996〜2000年)で2%増加していると述べ、農業部門の豪州経済への貢献度を改めて示している。

 トラス農相が掲げている今後の政策や課題は、次の通り。

・ 最優先課題として、輸入リスク評価体制の強化のために、バイオセキュリティー・オーストラリア(BA)の組織改編を行うこと。その後、BAが今年2月に行った輸入リスク評価の見直しを行うこと。これは、BAの豚肉、リンゴ、バナナに関する3つの輸入リスク評価報告書がそれぞれの業界から反発を受けていることに端を発している。(「畜産の情報 海外編」10月号11ページ、4月号13ページなど参照)。

・ 次に重要度が高い課題として、砂糖産業の改革。

・ 干ばつ対策として、農家に10億豪ドル(820億円)以上の支援を決定しているものの、全体的な干ばつ支援対策の見直しが必要。

・ 政府は、土着の植物、種の多様性を保護する法律や規則の制定を勧告した生産性委員会の報告書に同意しており、その実施を図ること。

・ 電子標識(耳標)による牛の個体識別制度の普及;4年間で2千万豪ドル(16億円)

  用途は直接農家の耳票代の補助には使われず耳標の読取機代などとなる見込みで、トラス農相は「耳標への補助は州政府の仕事」と述べている。

・ 新食品表示ロゴオーストラリアン・ホームグロウン(Australian HomeGrown)」(AHG)のロゴの創設の支援;400万豪ドル(3億3千万円)(「畜産の情報 海外編」12月号12ページ参照)

・ 水資源管理;20億豪ドル(1,640億円)

・ 雑草の撲滅;4年間で4千万豪ドル(33億円)

・ マレーダーリング川の塩害の改善や土壌の改良;2,500万豪ドル(20億円)

・ 動物福祉の改善;4年間で600万豪ドル(4億9千万円)

・ 国外からの伝染病の侵入予防に関する対策;4年間で2,600万豪ドル(21億3千万円)

・ 新たな地域の食品加工産業の創設に1200万豪ドル(9億8千万円)など

○ベール貿易相はFTA、WTO

 ベール貿易相は、輸出市場への参入をさらに強く推し進めるとともに、貿易を通して雇用の創出を図ることを主要な課題として挙げている。

 豪州のFTAについては、過去2年間で、米国、タイ、シンガポールと締結しているが、ベール貿易相は「政府は現在、その成功に向け全力を挙げている」と述べるとともに、新たに「中国、ASEAN、マレーシア、アラブ首長国連邦とのFTA締結に向け精力的に活動している」と述べ、FTAによる貿易の拡大を図っている。さらに、選挙公約として、ベール貿易相は、豪州企業がFTAで利益を得られるよう支援するため、輸出市場の開拓に3千万豪ドル(25億円)を投じるとしている。

 また、世界貿易機関(WTO)交渉に関しては、G5の一員として「指導的立場を堅持し続ける」としている。これらWTOやFTAを通じて新たな輸出機会の開拓を図るとともに、「中小の輸出業者が、これらの機会に投資できるよう手助けする」と述べている。


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