季節変動から見た牛肉産業の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 牛肉生産の季節変動 ● ● ●

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が最近発表したレポートでは、過去15年間の豪州牛肉産業の季節別需給動向を追っている。

 通常、豪州の牛肉生産はクリスマスや年始の食肉処理場の休業などにより、12月〜1月に大きく減少する(図1参照)。その後、2 〜3 月にかけて生産は右肩上がりに拡大するが、4 月に一時的に減少し、冬季前の5月にピークを迎える。冬季(6月〜8月)に入ると、一年の中でも最も安定した時期になり、生産もほぼ横ばいで推移する。さらに、春季( 9〜11月)に緩やかに上昇に転じる。

 しかし、2001〜04年の生産動向は干ばつの影響が色濃く現れている。2001〜04年の牛肉生産量(加重平均)は、生産のピークを迎える晩秋から冬の初めにかけて特に目立った増加が見られるが、MLAによれば、これは干ばつ被害が著しかった2001/02年度の大幅な出荷増が要因となっているとしている。この時期は干ばつの影響による飼料の供給不安が生じたため、生産者は通常よりも出荷時期を前倒し、出荷頭数を増加させたものとみられる。

図1 過去15年間の牛肉生産動向
資料:MLA

● ● ● QLD肥育牛価格の季節変動 ● ● ●

 日本向けの6割を生産するクイーンズランド州(QLD)の肥育牛価格は、ここ10年間で目立った季節変動が見られるようになってきた(図2参照)。比較的安定した第 1四半期(1〜3月)を経ると、第2四半期(4〜6月)に年度最低価格の水準にまで価格は下落する。その後、冬から春にかけて上昇局面を向かえ、夏季には年度最高価格の水準に達する。MLAによれば、第 4四半期(10月〜12月)の価格上昇は、年末年始に需要のピークを迎える日本向けおよび韓国向けの頭数確保と、米国の関税割当数量の達成のため経産牛の引き合い増を要因としており、QLDの牛肉産業は輸出市場の動向に影響されやすい体質となっている。また、最近は干ばつの影響も価格に目立って現れるようになってきており、不確実性は増しつつある。

図2 過去15年間のQLD肥育牛価格動向(指数)
資料:MLA
  注:指数は、各年度における月平均=1.0とする


● ● ● 対日輸出の季節変動 ● ● ●

 豪州産牛肉の主要輸出先である日本向けの輸出は、日本の祝祭日による需要増と、豪州の供給側の要因により影響される。対日輸出で最初の山は4〜 5月ごろに現れる。ちょうどこの時期は、日本のゴールデンウィークとぶつかるのに加え、豪州の牛肉生産が最高水準に達する時期と重なる(左図参照)。第二の山は、7 月で、日本では8月初旬のお盆を控えている時期であり、牛肉需要が伸びる。9 〜11月に最後の山が現れるが、豪州では春の出荷期を迎え、国内の牛肉供給量が増加する。加えて日本では、年末年始を控えた手当ての需要のピーク期を迎えており、二つの要因が重なって対日輸出で最も活況のある時期が到来する。

 最近の輸出動向は、米国産牛肉の輸入停止の影響で、2004年以降16カ月連続の増加を記録している。2005年3月の時点では、2001〜04年の対日輸出量(加重平均)をすでに73.2%上回っており、日本は豪州産牛肉の一大市場として存在感が日増しに強まっている。


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