豚肉調製品の輸出に活路を模索 ● タ イ


日本向け加工処理施設、相次いで承認

 タイでは3月に入り、2日付けで日本向け輸出承認を受ける加熱処理家きん肉加工施設15施設が追加指定され、合計48施設となった。また、8日付けでは偶蹄類に関する加工処理施設(対象品目:肉、ハム、ソーセージ、ベーコン)も新たに 施設が指定され全22施設になるなど新規指定が相次いでいる。

 同国では、食品輸入国で厳格化する食品安全基準に対応し、安定的な食品輸出を推進するため、加熱するなど高度に加工した食品の輸出振興に近年積極的である。これらの相次ぐ加工施設の指定は食品製造各社の生産・流通ラインの竣工と同時にしており、今後これに伴い日本向け食肉調製品の輸出が一定量増大する見込みである。



輸出不振が加速、調製品に活路

 豚肉の場合、ここ数年の輸出量は、冷蔵・冷凍品では急速に減少しており、同国農業協同組合省畜産開発局(DLD)によると冷蔵・冷凍品の輸出は2002年の合計約1万2千トンをピークに減少に転じ、2004年には約5,500トンにまで低下している。輸出先は2003年実績では9割以上が香港、残りがブルネイなどとなっている。

 一方調製品の輸出は、増加傾向で推移し2002年には1,890トン程度だったものの、その後、2003年は3,320トン、2004年には4,320トンにまで増加している。これらの輸出先は2003年実績では約8割が日本、1割余りが香港、その他カンボジア、イギリスなどとなっている。

 同国の豚肉需給構造は大部分が国内仕向けで、ここ10年余り生産量は30万トン台を維持している。輸入は毎年数トン、輸出(冷蔵・冷凍品)は生産量全体の3%前後で推移している。



養豚振興の阻害要因

 伸び悩む国内豚肉消費を背景に、同国の養豚業界はその活路を加工品輸出に見いだそうとしている。市場規模の点などから同国が注目しているのは日本およびEUで、日本向け輸出を目指すサプライヤーの多くは日系企業との合弁会社(米国など例外を除き、同国では外資の出資比率制限が最大49%と定められている。)を設立し、日本で求められる品質の製品を提供するためのノウハウを共有している。

 一方、タクシン政権が掲げる国際的食品安全基準への準拠により、国内向けには消費者への安全な食品提供の促進、対外的には食品輸出促進を目標としながら、依然としてその達成には多くの困難が生じている。

 一例として先頃、イギリス資本の業者が契約農家の自社基準達成状況を検査したところわずか1割の農場しか基準を達成していないことなどから、今後EU向け輸出が大幅に伸びるには時間がかかるとの見方がある。

 またチュラロンコン大学は政府の方針に従い2004年8月から1年間の計画で全国の農場の認定制度を推進しているものの、過去5カ月で進展状況は1割程度であり、事業の期間内終了を危ぐしている。

 使用禁止薬剤の使用も依然として広く行われており、豚肉需要が急増する中国正月の期間中、DLDが調査したところ同国の豚主要産地の一つであるナコンパトム県では大規模農場産の豚肉からも禁止薬剤が検出されたものの、政府の公式見解は今後の厳格な措置を表明するにとどまっている。

 口蹄疫(FMD)撲滅対策の遅れは、同国にとって地理的利便性の高い大規模市場である日本、シンガポール、韓国などへの冷蔵・冷凍豚肉の輸出機会を損ねている。同国では1956年に定められた家畜疾病対策指針に基づきFMD撲滅対策を行ってきたが、近年では周辺国との共同により広域対策を行っており、ラオス、カンボジア、ミャンマーなど後発発展途上国に対してはワクチン生産と家畜検疫の強化などを柱とした南南技術協力のほか、マレーシア、タイ、ミャンマー(MTM)地域での清浄化地域指定事業を行うなどの対策を続けている。


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