増大する米国からの豚肉輸入 ● 中 国


豚肉は最も重要な食肉

 中国では、伝統的に「食肉と言えば豚肉を指す」とされるほど、豚肉は国民の食生活にとって重要なものとなっている。近年の目覚しい経済発展による豚肉需要の増大によって豚飼養頭数は年々増加しており、中国の国家統計局によると、2003年の豚飼養頭数は前年比2.7%増の10億5,802万頭となった。これは、5年前の1998年と比較すると14.4%とかなり大きく増加している。



豚肉輸入量は増加の一途

 一方、海外からの食肉輸入も増大しており、米国からの豚肉の輸入量も増加傾向にある。米国農務省/海外農業国(USDA/FAS)によると、2004年に中国が米国から輸入した豚肉の輸入額は、前年の約3.7倍の5,130万ドル(55億4千万円:1ドル=108円)と大幅に増加した。

 従来、中国が米国から輸入する豚肉の割合は他の食肉の合計より低い水準が続いていたが、米国におけるBSE発生の影響や、鳥インフルエンザ発生により2004年2月〜12月の期間の鶏肉輸入が禁止されたことで豚肉のシェアが急激に拡大した。2004年には、米国から中国へ輸出された食肉の79%を豚肉が占めている。



米国産豚肉の消費地域は大都市圏

 中国で米国産豚肉を最も多く取り扱う場所は、上海をはじめとする大都市やその周辺地域に住む外国人や高額所得者などを対象としたホテルやレストランである。次いで外資系スーパー・マーケットや大型量販店であるが、一般の消費者はいまだウエット・マーケット(伝統的な対面販売方式市場)で食肉を購入することが多いため、一般消費者が米国産豚肉に触れる機会はまれなことと思われる。

 なお、こうした伝統的市場は衛生面の不備や法的管理が困難であることなどから、中国政府は、豚肉をはじめとした食肉や他の生鮮品の全国的な流通システムの早急な近代化を迫られている。



中国へ輸出攻勢をかける米国業界

 中国は、社会主義市場経済の下で、上海などの都市部が多い沿岸地域の経済発展を先行させる政策をとっており、現在はこうした地域を中心として米国産豚肉の消費が拡大していると言える。そうした中、米国食肉輸出連合会(USMEF)をはじめとした米国の業界関係が、上海や養豚が最も盛んな四川省などに米国産豚肉の販促に係る戦略的拠点作りを着々と準備していると伝えられるため、米国産豚肉の中国への輸出は今後も伸びていくものと思われる。


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