カナダからの生体牛輸入再開をめぐる動き ● 米 国


カナダからの生体牛輸入差止決議が可決

 米国上院は3月3日、ノースダコタ州選出のコナード議員および11名の賛同者により提出された決議案について議論し、投票の結果、賛成52票、反対46票の僅差で同案を議決した。この決議は米国農務省動植物検査局(USDA/APHIS)が1月4日に公表した最小リスク地域としてカナダを認定し、同国からの生体牛などの輸入を認めるとの最終規則を承認しないことを米国政府に求めるものである。

 決議案に反対するコロラド州選出のアラード議員らは、(1)日本をはじめとする海外市場への輸出再開のためにも米国が最善の科学に基づき判断すべきであること、(2)カナダからの30カ月齢未満の牛由来の部分肉のみの輸入は米国の食肉処理業者の経営を圧迫しており、長期的な米国の牛肉産業の縮小が懸念されること−などを力説したが、これまでカナダでは米国のワシントン州の例も含め同国産で4例のBSE陽性牛が確認されており、解禁を急ぐべきではないとする推進派が反対派を上回る形での決着となった。

 ただし、賛成派からは、輸出国との協議への影響を考慮し本件を慎重に扱うべきとの意見も出されており、賛成派、反対派ともに本件の日本への輸出再開問題への影響を懸念しているとの点では認識を共有している。



米国政府は遺憾の意を表明

 ホワイトハウスのマクレーン報道官は3日、記者からの質問に対し、USDAの規則は公衆衛生・家畜衛生上の完全な保護の観点から実施されてきたと信じており、今回の上院決議は、米国の肉用牛産業が受ける経済的打撃や海外市場を最善の科学に基づき開けようとする努力を妨げるものであり残念であると回答した。

 また、ジョハンズ農務長官も同日、「ブッシュ政権に強く反対するこの決議の採択を阻止するために米国下院と協調するとともに、米国産牛肉に対する海外市場の開放のために積極的な努力を継続していく」との声明を公表した。



下院では対日経済制裁を求める決議案が提出

 カンザス州選出のモラン議員は3日、日本が米国産牛肉に対し市場を開けないのであれば、米国通商代表部は日本に対する経済制裁を検討するとの決議案を下院に提出したことを公表した。米国内では全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)が会員に対し2月18日付けで、米国政府、主要議員および加藤駐米大使などに、日本などの海外市場と牛肉および牛肉製品の貿易再開に関する合意を求めるとともに、必要があれば経済制裁を課すことを求める書簡の送付を呼びかけていた。モラン議員の今回の提案はこのような要請を受ける形で行われたものと考えられる。同協会はカナダからの生体牛の輸入再開に伴い、米国内での生体牛価格の低下が懸念されるとして、経済的な側面から対日輸出再開問題とカナダからの生体輸入解禁問題を関連付けている。



AMIの30カ月齢以上の輸入請求は棄却

 米国食肉協会(AMI)は3月7日、同協会がカナダから30カ月齢以上の生体についても輸入を認めるよう求めて連邦地裁に起こした請求が棄却されたことを明らかにした。
 AMIは、「米国の食肉業界は、カナダからの牛肉および牛肉製品の完全な貿易の実施は科学および国際的な家畜衛生のガイドラインの双方から支持されると確信している」と、今回の棄却を非難する声明を公表した。


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