堅調に推移する牛肉生産 ● 中 国


2006年の牛肉生産量、前年比6.4%増の765万トン

 中国の経済は近年、力強い成長を続けている。国家統計局が発表した2005年の中国のGDP成長率は、第1四半期が9.4%、第2四半期が9.5%と、当初示された通年8%の見通しを大幅に上回った。これに伴い、今年の1人当たり所得の伸びは農村地帯で前年比12.5%増、都市部は同9.5%増となり、食生活の西洋化や外食産業の発展などにより牛肉など畜産物の需要はますます増大すると思われる。

 米国農務省(USDA)の発表によると、中国における2006年の牛肉生産は堅調に推移し、牛肉生産量は前年比6.4%増の765万トンになる見込みである。中国は第11次五カ年計画(2006〜2010年)の農業に関する最重点事項の一つとして牛肉産業の発展を掲げており、肉牛振興地域の創設や放牧肥育農家に対する補助などさまざまな支援が行われることから、肉牛産業は今後も発展を続けるものと思われる。


飼養条件の好転により枝肉重量が増加

 中国の食糧生産量は、2003年に前年比5.8%減の4億3,070万トンと近年の最低水準まで減少する事態となったことから、耕種農家に対する農業税の免除や直接補助などにより、農家が穀物を生産するインセンティブを与えることで穀物生産量を増加させる方策が採られている。こうしたことから、2004年以降の食糧生産は増加に転じるとみられており、潤沢な飼料穀物に加えて飼養技術の向上などにより、2006年の牛枝肉重量は2002年と比較して1.4%多い134.7キログラムに増加すると予測されている。このことも牛肉生産の増加に大きく寄与するものと思われる。


輸入の減少により牛肉価格も上昇傾向

 USDAは、2005年前半の牛肉価格は、前年同期比5.5%高のキログラム当たり1.93ドル(約217円:1ドル=112.4円)とやや上昇し、これを受けて小売価格も8%程度上昇すると予測している。その要因として、海外におけるBSE発生により米国産牛肉などの輸入が規制され、輸入数量が減少していることが挙げられるとしている。2005年前半の輸入牛肉価格は前年同期と比較して約2.3倍のキログラム当たり6.47ドル(約727円)と大幅に上昇しており、USDAは、こうした状況が続けば、国民のし好が安価な国産品に向かう傾向が強まると分析している。


自然環境の悪化など成長抑制の懸念も

 一方では、中国の肉牛産業は、牧草地の荒廃や水資源の減少といった自然環境の悪化をはじめ、他産業との競合によるエネルギーの枯渇や人件費の上昇など幾つかの要因に脅かされる懸念もあることが指摘されている。肉牛産業は、養豚に集中していた中国の畜産の多角化を図り、牧草利用による穀物節約型畜産となる重要な部門であるだけに、これらの諸問題に抜本的に取り組む政策が望まれている。


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