亜国農牧庁、2005/06年度ヒルトン枠の配分数量を発表


昨年度40%を占めた司法枠が激減

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は7月1日付け決議第502/2005号(7月4日公布)により、各パッカーへのヒルトン枠の配分数量を発表した。

 今年度の配分における最大の注目点は、裁判判決などを根拠にした配分数量(以下「司法枠」とする)がどのように配分されるかであった。前年度の司法枠は10,975トンと全配分数量の約40%を占めていたが、今年度は2,644トン※1と極端に減少している。

 アルゼンチンはEUから、一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当制度(通称ヒルトン枠)により、当年7月1日〜翌年6月30日の1年間に28,000トンが割り当てられ、国内の食肉パッカーへの配分方法および数量は、SAGPyAが決定してきた。

 しかし、利幅の大きいヒルトン枠を獲得するため食肉パッカーが訴訟を起こすなど問題が絶えず、また配分数量をめぐり不正があったとして、カンポス同庁長官などは訴えられていた。

 よってこれらの状況を収束させるためカンポス長官は、5月26日付け決議第394/2005号※2により、同庁が所有していたヒルトン枠の全体管理、配分方法、割当数量の手続きに関する権限を、食肉パッカーの脱税防止を目的に設立された独立性の強い機関である国立農牧取引管理事業団(ONCCA)に移譲した(本紙通巻第675号などを参照)。


最終決定権は依然SAGPyA長官が握る

 これらのことについてカンポス長官は7月4日付けプレスリリースで、「政府が司法枠問題を終えんさせるため、多大な努力を実施してきた結果である。配分対象となるパッカーの必要条件を満たすことなく利益を得ようとする司法枠を、われわれは劇的に削減することに成功した」とし、また長官コラムのコーナーにおいて「ONCCAに配分などに関するすべての手続きを移譲したことが、今回の成功をもたらした」と話している。

 しかし、先の決議第394/2005号に係る新聞取材の質問「SAGPyAはすべての決定権をONCCAに移譲したのか」に対しカンポス長官は、「ヒルトン枠の管理などについてSAGPyAは権限を移譲したが、最後の決定権、つまり署名するのは自分である」と回答しており、SAGPyA自体の作業や手続きはなくなったものの、同庁長官が最終決定権を握っていることには変わりないようである。

 また同プレスリリースの副題には「今回のヒルトン枠配分数量の決定は、その歴史上、初めて該当期間前に配分された」と書かれており、過去、ヒルトン枠の配分がいかに政策的、政治的に困難であったかをうかがわせている。

 なお、すでに訴訟が起こり枠確保の裁判所命令が下りているが、SAGPyAは上訴している状況である。

※1:カンポス長官は「昨年度の11,000トンが800トンに減少した」と長官コラムの中で話しているが、当方の比較調査では2,644トンが整合。

※2:8月9現在、いまだ未公布の状態であるが、ONCCAは決議内容を実行していると回答。


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