早急な酪農乳業対策を要求 ● タ イ


豪州に続き、NZとのEPA発効

 タイでは、豪州との経済連携協定(EPA)が今年の1月から発効し、7月からはニュージランド(NZ)とのEPAが発効した。両EPAとも乳製品はタイにとってのセンシティブ品目として関税の撤廃までの期限を最長で2025年とするなど、他の品目に比べて保護の水準を高めている。

 6月上旬に商務省から発表された1月から4月までの豪州との間の貿易実績は、タイ側の輸出が9億米ドル(1,017億円:1米ドル=113円)と前年同期比24%の伸びを示す一方、輸入は11億米ドル(1,243億円)となり、同77%増と輸出のそれを上回る大きな伸びとなった。

 タイ側の輸出品の中で大きな伸びを示したのは、コンピューター関連が前年同期比91%増、自動車関連同55%増、機械関連同27%増と工業製品が中心となっている。一方、豪州からの輸入では、宝石貴金属同164%増、鉄鋼関連同118%増、植物関連同54%増など、原材料が中心となっている。なお、乳製品の輸入に関しても7%の伸びとなっているものの、全体の伸びから比べて低い伸びにとどまっている。


タイ、NZ政府とも国全体の利益優先

 このような豪州とのEPA開始後の状況に関して、通商関係者は、1月から4月の実績では、タイ側の輸入が大きく増加し、タイにとってはマイナスに見えるが、急激に増加した金の輸入を除けばタイ側の輸出超過であり、金の輸入がこのまま継続するかは不明であるが、豪州からタイへの直接投資が増加していることも考えると、EPAの効果は単に貿易の輸出入の額だけで即断できないとしている。

 豪州の例を見れば、NZとのEPAの発効後は、タイ側の鉄鋼や自動車関連の工業製品の輸出が促進され、NZ側からは原料を中心とした輸出が促進されるものと考えられる。

 4月に行われた両国のEPA調印に関連した会合の席上で、NZのクラーク首相の「タイとのEPAにより、タイで作った車を輸入して、NZの農場を回って集乳する」との発言は、両国のEPAでの関係を示す言葉であるが、タイの酪農関係者の警戒を誘うものであった。


今年も余乳が発生

 今年も4月の学校の休暇に伴う学乳の停止により余乳が発生しており、酪農関係者を悩ませている。これは、学乳には国産の生乳を使用することとしているが、学校の休暇期間中は学乳仕向け以外の製品の製造が中心となり、国産生乳使用の条件がなくなるため、乳業メーカーは価格が安く保管の容易な輸入脱脂粉乳を原料とする傾向が強まるためである。政府は酪農振興対策計画の下、政策を展開しているが、余乳に関しては抜本的な対策はとられないまま現在に至っている。


酪農関係団体は早急な対策を要求

 タイの酪農関連団体である、ホルスタイン・フリージアン育種協会(HFRA)、タイ乳製品協会(TDPIA)および生乳収集者協会(RMCA)などは、NZとのEPAが同国の酪農に大きな影響を与えるものと懸念している。先に実施したNZの酪農事情の調査結果を基に、これらの団体は6月初旬、農業大臣に対して、(1)早急に乳業振興対策のための委員会を設立すること、(2)酪農家と乳業会社間での永続的な生乳取引体制の構築を指導すること、(3)生乳取引に関するデータ収集に責任を持つ機関を創設すること、(4)国産生乳を使用した牛乳の消費キャンペーンを行う基金を創設すること−について申入れを行った。


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