アジア地域AI対策に1億米ドルが必要 ● マレーシア


アジア地域AI会議開催

 マレーシアの首都クアラルンプールで7月4日から3日間、鳥インフルエンザ(AI)と人の健康に関する会議が関連国際機関の共催により開催された。

 この中で国連食糧農業機関(FAO)代表は、関連研究機関による新たな家きん用、特にアヒル用のワクチンの開発および効用の評価を急ぐ必要があるとし、FAOは国際獣疫事務局(OIE)との共同で、ベトナムおよびインドネシアでのアヒル用ワクチンの試験使用計画があることを明らかにした。

 また今後数年間のアジア地域AI対策に必要な費用はおよそ1億米ドル(113億円:1米ドル=113円)であるが、現状ではその1割程度の予算執行額しかないとして、EUや米国などの援助国に対し可及的速やかな行動を促した。

 世界保健機関(WHO)からは、2005年当初から7月までの人への感染例は64件と、2004年の44件と比べて増加しており、うち22名が死亡しているとし、依然として被害が継続しているとともに、今後のウイルスの変異による人への大規模感染について警告した。


各国のAI発生状況

 6月20日現在のFAOの報告によると、東南アジア各国の状況は以下のとおりとされた。

    カンボジア:AI感染の疑いで5月13日、ベトナムの病院に収容された20代の女性はその後の検査の結果陰性とされた。同国家畜衛生・生産予測センターはメコンデルタに近い村に置いた指標アヒル飼養群の監視を続けている。

    ベトナム:メコンデルタのベンチェ省の農場で6千羽がへい死した後の6月11日、7百羽がとうたされた際のサンプルから血清亜型H5が同定された。人への感染としては5月中旬に北部で3人が陽性判定を受け、うち1人が死亡している。

     農業・農村開発省は先に行われたワクチン使用試験で良好な結果が得られたことを受け、今年後半に全国2億1,200万羽の家きんにワクチン接種を行うために必要な予算額として、およそ630万米ドル(7億1,190万円)を政府に要望している。

    インドネシア:東ジャワ州スラバヤの豚の血液サンプルおよび咽喉スワブにより血清亜型H5N1が同定された後、養豚場の全国調査を行った結果、そのほかに西ジャワ州で陽性判定が5月16日に得られている。保健当局のモニタリング調査で農場労働者を調査した結果、南スラウェシ州の血清サンプルからAI抗体が発見されている。

    ブルネイ:6月10日に、AI発生の疑いが報告されたがその後、これは政府による発生時のための対策の演習であったとされている。

◎供給不足によりマレーシア鶏肉価格が統制価格上限で推移

 マレーシア国内では新たなAI発生が確認されていないが、周辺国での発生状況から政府は国境検疫の強化などにより警戒している。一方同国の一部ではウインドウレス鶏舎建設に際し人民銀行から融資(1案件当たり25万リンギ(750万円:1リンギ=30円))の提供を行うなどにより生産段階での防疫措置強化に乗り出している。

 また、生産者はAI再発による被害への恐れにより鶏肉生産を抑制する傾向にあり、さらに政府によって近隣のAI発生国からの初生ひななど生体鶏の輸入禁止措置が継続していることなどの各種要因から、同国内では鶏肉供給不足が続いている。5月以降のブロイラー生産者販売価格は6月末日現在でも政府統制価格上限である生体1キログラム当たり4リンギ(120円)で推移している。


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