米国農務省、家畜個体識別制度への財政支援を公表


2005年会計年度は総額1,436万ドルの支援

 米国農務省(USDA)は6月21日、州および連邦政府公認の先住民政府に対する、全国個体識別制度(NAIS)における農場登録の継続実施に係る財政支援の実施を公表した。これにより約1,436万ドル(16億2千3百万円:1ドル=113円)が各州などで利用可能となる。

 ここ10年以上にわたる世界的な家畜疾病の発生増加を背景に、全国家畜個体識別プログラムの開発は家畜衛生の保護手段として関心が高まってきた。実際、米国内のいくつかの先住民部族は、数年前から家畜疾病撲滅活動の一環として個体識別が要求され、また、畜産の主要地域においても独自のプログラムにより個体識別が実施されてきた。しかし、これまで米国における統一的および義務的なシステムは存在していなかった。USDAは、国内の家畜に対する疾病対策を統制するためには、(1)個々の家畜および集団、(2)飼養された農場、(3)各々の施設へ搬入された日付−などが確認可能なシステムを統括し、疾病の確認後直ちに情報検索および対応策の実施の必要があることから、2004年にNAISの実施に着手し、本年5月にはその方針案を公表した。

 現在、動植物検査局(APHIS)は、農場で記録された家畜疾病の発生状況、他の州への移動証明および品種登録などの既存の記録を利用して家畜疾病の追跡調査を実施している。しかし、現在の疫学的調査は、記録が紙のまま保管されていたり、州により規格が異なるため調査完了まで数日から数週間を要している。


農場データの登録が最優先課題

 USDAの最優先課題は、本年7月までにすべての州で実施されている全国農場登録システム(the national premises registration system)を確立させることである。このことは、全国のすべての生産者がNAISの第一段階に関与することを意味する。その次のステップとして、8月以降、農場所有者により家畜の個体識別と登録が本格的に開始されることとなる。

 今回公表された財政支援は、州やアメリカ先住民政府が昨年来着手している各地域内の全国農場登録システムおよびNAISの実施および保守管理を支援するために提供される。

 予算全体額のうち1,352万ドル(15億2千8百万円)は直接各州に配分され、州別では全米で最大の牛飼養頭数を誇るテキサス州が120万ドル(1億4千万円)と最大で、カンザス州が68万5千ドル(7千7百万円)、ネブラスカ州が67万2千ドル(7千6百万円)と続いている。

 また、USDAは、生産者と食肉加工業者の協同の要求に対処するため、各州、関係団体およびほかの関係者などと連携していくとしている。なお、今回の財政支援には、個体識別の推進に係る調査の実施や家畜の移動データの収集に対する援助は含まれていない。

 USDAは、今後2008年初期までにはすべての家畜が個体識別番号やロットID番号により個体識別され、2009年1月までにはNAISへ家畜の移動履歴が明確に記録されることになるとしている。


◎USDA、2例目のBSE感染牛の農場調査を終了

 USDAは7月12日、今回BSEの感染が確認された患畜が飼育されていた農場における調査対象牛の仕分け作業および目録作成作業が終了したと公表した。当該農場では、BSE陽性牛の子孫および当該患畜と同時期に生まれ同一牛群で飼養されていた他の牛の調査が行われていた。これまで67頭の牛からBSE検査のため採材を行い、アイオワ州の連邦獣医局検査施設(NVSL)でBSE検査を実施した結果、すべて陰性との結果が得られていた。USDAは、以上のことから当該農場の移動制限措置を11日に解除したとしている。なお、同省は当該農場から移動した牛について追跡調査を継続中である。


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