米国農務省、カナダ産生体牛輸入再開へ向けた措置を公表


差し止め決定から一転輸入再開へ

 ジョハンズ米農務長官は7月14日、サンフランシスコ連邦高裁によるカナダ産生体牛などの輸入再開に係る規則差し止めの仮処分を覆す決定を受け、30カ月齢未満の生体牛の輸入を直ちに再開するための措置を講じることを発表した。

 カナダからの生体牛輸入は、同国でBSE陽性牛が初めて確認された2003年5月以降一時停止措置が採られていた。米国農務省動植物検査局(USDA/APHIS)は2004年末、カナダをBSE最小リスク地域と認定し、同国から30カ月齢未満でと畜されることが確実な生体牛などの輸入を認めることを柱とする輸入規則を定め、本年3月より輸入を再開する予定であった。しかしその後、米国牧場主・肉用牛生産者行動法律財団(R−CALF)の申請により、モンタナ州連邦地裁が同規則の差し止めを認める仮処分を決定したことから、同国からの生体牛の輸入停止措置は長期化を呈していた。

 同長官は今回の連邦高裁の決定を受け、「本件は、米国牛肉産業の将来のため、特に輸入停止により経営がひっ迫していた牧場経営者、肥育牛農家およびと畜業者にとってすばらしい知らせであるとともに、これまで貿易相手国に対し説明してきた科学に基づいた輸入再開の決定を示すことにより、米国の地位を高めるものである」と述べた。また、カナダのミッチェル農業・食品大臣も同日、「これまでカナダ政府は、輸入停止措置の継続において科学に基づく根拠は無いと主張してきた。今後、われわれはカナダ畜産業界およびUSDAとともに今回の決定を実行していく」と歓迎の意を表明した。


3つの具体的措置を公表

 さらに同長官は15日、輸入再開に向け今後必要な3つの措置を発表した。これは、米国は可能な限り早急に、輸入再開を実施するとした上で、BSE最小リスク地域の規則と同等であることを保証するため慎重に行うとするものであり、概要は次のとおり。

    (1)APHISは、その全事務所、カナダ食品検査庁(CFIA)および米国税関や国境を管理する部局に対し標準運用手順を発出

    (2)USDA食品安全検査局(FSIS)は今回輸入が承認された製品のリストを発出、また、FSIS検査官に対して輸入生体牛が直ちにFSIS検査施設でと畜されることが確実であることの確認を指示

    (3)USDAは州の獣医、国内輸入業者、税関およびカナダ当局と連携し、輸入条件が明らかであること、船積み検査が適切に実施されていること、そしてBSE最小リスク地域の規則に適合していることを確認

 以上が措置され次第、CFIAは牛の月齢や個体識別を証明し、BSE最小リスク地域の規則に合致することを保証するため衛生証明書を発行することとなる。そして、米国税関で当該輸入が適切であることが書類審査された後、APHISの獣医により、国境の検査施設で当該生体牛がBSE最小リスク地域の規則に適合していることが確認され、カナダの衛生証明書の承認手続きが行われる。その上で、FSISの検査官がと畜段階で米国の条件を満たしていることを確認するものとしている。

 なお、ミッチェル農業・食品大臣は18日、2003年5月以来2年2カ月ぶりにカナダ産生体牛が米国へ渡ったと発表した。


日本に対しては科学に基づく措置を主張

 同長官は、会見の中で日米牛肉問題についても触れ、今回の連邦高裁の決定は、特に20カ月齢以下の牛に関して輸入再開を承認していることからも、米国がこれまで何度も日本に対して説明してきたとおり、米国が科学に基づいて本件に取り組んでいることをはっきりと示しているとし、日本が早急に米国産牛肉の輸入再開に関する措置を進めることを切望すると述べた。


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