EU全体での野鳥から家きんへのAI感染防止策を決定


新たな鳥インフルエンザ対策の適用

 フードチェーン・家畜衛生常設委員会は2月16日、欧州委員会による高病原性鳥インフルエンザ対策の提案を承認した。

 今回承認した鳥インフルエンザ対策は、野鳥において感染を確認した場合の対策と、さらに家きんにおいて感染を確認した場合の二つの対策からなる。現在の理事会指令92/40/EECおよび2005/94/EECは、家きんでの感染を想定して講ずるべき対策などを規定したものであり、現状のような野鳥での感染を想定したものとはなっていない。このため、現状を踏まえ、各加盟国において野鳥および家きんの双方の感染に、理事会指令に加えて対応できるよう提案したものである。

 今回の承認を受け、キプリアヌ委員(保健・消費者保護担当)は、「今回の二つの対策は、理事会指令や、ここ数カ月に適用してきたサーベイランスの強化、高リスク地域における家きんの屋内飼育の実施、リスク産品の輸入停止措置などの予防措置に基づくものである。皆さんが本件に対し、非常に関心が高いことは理解できるが、必要な対策はこれまで採ってきており、また今後も引き続き採っていくので過度に不安になる必要はない」と述べている。


野鳥において感染を確認した場合の対策

 既に2月16日の時点で野鳥におけるH5N1型の鳥インフルエンザの感染が確認または疑われた6カ国に対しては、同疾病の拡大を防ぐため、保護対策を各国ごとに決定し順次適用してきた(詳細については海外駐在員情報第708号参照)。

 しかし、野鳥から家きんへの感染を防ぐには国レベルでの対応ではなくEU全体での対応が必要となっていた。このため、欧州委員会は2月17日、今回の承認を受けて、それぞれの国ごとに規定していた委員会決定を廃止し、高病原性鳥インフルエンザの感染国が即座に適用する委員会決定2006/115/ECを新たに施行した。本決定では、各国で取り組む保護対策に加え、感染国においては、欧州委員会やほかの加盟国に対し必要な情報を定期的に報告することなどが規定されている。


家きんにおいて感染を確認した場合の対策

 現行の理事会指令では、家きんにおいて高病原性鳥インフルエンザの感染が確認または疑われる場合には、野鳥での感染で設定された場合と同様の保護区域および監視区域を設定するとともに、感染が確認された農場や感染が疑われる周辺農場の家きんのとうたなどが規定されている。

 今回の対策では、この二つの区域設定に加え、さらに広範な二つのリスク管理のための地域設定が盛り込まれている。まず、A地域として監視区域を取り囲む地域、そしてその周辺に感染が確認されていない地域との緩衝地域となるB地域を設定するとしている。なお、これらの地域には具体的な設定距離に関する規定はなく、例えばA地域を関連する県や郡全域と設定すれば、B地域をA地域を除く国内全域や周辺国とすることを想定している。この二つのリスク地域においては、厳しい管理下のものを除き、生きた家きんなどの区域外への移動の禁止や、それぞれの地域の家きん産品を移動する場合に流通や販売の過程において区別して管理するなどとしている。

 なお、本対策は2月22日付け委員会決定2006/135/ECに規定されている。


フランスおよびオランダにおける予防ワクチンの接種計画について

 フードチェーン・家畜衛生常設委員会は2月22日、フランスおよびオランダから提出があった家きんへの高病原性鳥インフルエンザに対する予防ワクチンの接種計画を承認した。フランスの計画では、高リスク地域で屋内飼育が困難な3県のカモとガチョウ90万羽を接種対象とする。オランダの計画では100〜300万羽の自家消費用の家きんと500万羽の放し飼いの採卵鶏を接種対象とし、ワクチン接種か屋内飼育のいずれかを選択する。

 予防ワクチンの接種を行った場合には、接種した鳥やその種卵を対象とした移動制限、ワクチン接種群において鳥インフルエンザが発生した際に速やかに認識するための厳密な監視、記録保持などが必要となる。

 なお、ワクチンを接種した場合、生きた鳥やその種卵は出荷できず、肉などの生産物はウイルスに感染していない健康な鳥から生産されたとの衛生証明がある場合にのみ出荷が可能となる。


元のページに戻る