パラグアイ、トレーサビリティ導入などで牛肉輸出を拡大


パイロットプランの始動により要求の厳しい市場への参入の第一歩と期待

 EU地域への主要牛肉輸出国になるため、EUの要求に応じ、拡大メルコスル加盟国は個体識別システムの変革過程にある。パラグアイについても同様に2004年5月5日付け政令第2504号により輸出向けと畜牛の識別および原産地証明を保証するトレーサビリティシステム(SITRAP)が創設された。農牧省(MAG)がシステムの機能と管理を担当し、パラグアイ農牧協会(ARP)が実施機関と定められ、パイロットプランが始動している。

  同プランは2005年8月から開始され、参加する農場では、各家畜に白色のカードタイプの耳標を装着し識別する。なお、パイロットプラン終了後、SITRAPでは識別装置として、(1)繁殖用には黄色のボタンタイプ、(2)肥育用には黄色のカードタイプの装着を定めているが、パイロットプランで使用する耳標は、SITRAPの本格的な開始後も有効とされている。

  現在、同プランには全国の30農場が参加し、2万8千頭の牛に耳標が装着されているが、すでに生産者に配布されている耳標は全国の牛飼養頭数の約1割に相当する9万7千頭分に上る。耳標のコストは0.5ドル(57円:1ドル=114円)で生産者負担となっている。

  また、6月1日にはこのプランに基づき、耳標を装着した80頭の去勢牛が初めて食肉処理工場に搬入、チリ向け輸出用として加工処理された。

  SITRAPの導入により、今後EUを含めた現在よりも厳しい輸入条件を求める市場への参入が期待されることから、同プランには今後さらに30農場が加入を希望していると伝えられている。

繁殖用
肥育用

2006年の食肉輸出は前年同期比大幅増

 一方、パラグアイ国立家畜衛生局(SENACSA)によると、2006年1〜4月の食肉輸出量は前年同期比37.3%増の7万9,259トン(製品重量ベース)、輸出額は同63.6%増の1億5,582万ドル(177億6千万円)となった。このうち、牛肉について、輸出量は前年比40.0%増の5万3,613トン、輸出額は同75.3%増の1億2,086万ドル(137億8千万円)となり、食肉総輸出額の8割を占めた。

  また、現在、パラグアイの牛肉輸出ではチリ、ブラジルが主要な相手先となっているが、台湾がこれまでの年間輸入割当枠220トンを今年から440トンと倍増することを明らかにするなど、EU、アジアにおける市場拡大を目指しているところである。

  ARPでは、この傾向が持続すれば、年間輸出額は年初予測の4億5千万ドル(513億円)が達成されるとみている。

国際的な衛生条件の承認も輸出拡大への一助

 なお、パラグアイは2005年に国際獣疫事務局(OIE)より口蹄疫ワクチン接種清浄国のステータスを得、さらに今年5月下旬に開催されたOIEの総会において、チリとともにBSE清浄国として暫定的な承認を受けたことで、国際的にも衛生水準が保証され、輸出拡大への追い風になるものと期待されている。


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