拡大する口蹄疫の感染地域 ●ベトナム


AIと入れ替わりにFMDが発生

 ベトナムでは昨年の12月中旬発生の鳥インフルエンザ(AI)を最後に5月末まで新たな発生確認の報告はなされていないが、AIと交代するかのように口蹄疫(FMD)が全国に広がっている。ベトナムの衛生当局から国際獣疫事務局(OIE)への報告によれば、1月下旬に南部のメコンデルタのカントー県で発生が確認されたFMDは、2月に入り中部高原地帯に広がり、3月以降も感染の拡大は続き、5月下旬までに全国64の県と都市うち36の地域で発生が確認されている。


政府の対策は殺処分とワクチン接種

 同国政府は、FMD対策として殺処分とワクチン接種を実施することとし、5月18日付けの首相指令738号により、適用期間を5月1日から終息までとした。FMD発生地域におけるワクチン接種に対しては全額政府補助、緩衝地域での接種には中央政府と地方政府が折半で費用負担をする。また、家畜を処分した農家や組合に対し、豚の場合1キログラム当たり1万ドン(68円:1円=146ドン)、牛、水牛、ヤギやシカの場合は同1万2千ドン(82円)を支給するほか、殺処分費や薬品代などとして、1頭当たり、牛と水牛に対しては15万ドン(1,027円)、豚やヤギなどに対しては5万ドン(342円)を支給することとした。

  これと平行して政府は、動物衛生、税関、市場監視、国境警備および警察などの関係部署に対して家畜および家畜由来の製品の監視と、密輸などの違反に対する罰則の適用を強化するよう指示した。これは、特に国境を接する地域での牛や水牛の監視の目をくぐった売買が、同国へのFMDウイルス侵入の原因との観点から行われたとされている。


5月12日までに牛と豚それぞれ1万5千頭以上を処分

 公表によると、1月の発生から5月12日までに、30の地域においてFMDにより死亡または処分された家畜は、牛と水牛が15,232頭、豚が15,492頭となっている。中でも5月初旬に発生が確認された中央高原部のラムドン県では、牛3,969頭、豚14,316頭の罹患が確認されており最大の被害となっている。また、非公式ではあるが、5月下旬までに36の県と都市に拡大し、17,100頭の牛と水牛および18,400頭の豚が処分されたとしている。


O型に続きアジア1型も発生

 FMDウイルスの血清型はO型をはじめとする7タイプで、それに数十の亜型が存在するため、ウイルスの型と亜型に適合したワクチンの使用が重要となっている。

  同国で発生したFMDの血清型は近隣諸国でも多く発生しているO型であったが、中国と国境を接するハギャング県で5月6日に確認された血清型は、アジア1型であった。


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