需要の増加で拡大が続く牛肉輸入


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 牛肉輸入の増加傾向続く ● ● ●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)の発表によると、2005年1〜9月のEU25カ国の牛肉輸入量は、前年同期比11.9%増の22万5千トンとかなり大きく増加した。2004年における前年同期比も12.2%増加しており、EUの牛肉輸入は高水準の増加が続いている。今回公表された輸入動向を国別に見ると、全体の9割が南米から輸入されており、上位3カ国からの輸入量すべてが大きく増加している。中でも、第1位のブラジルからの輸入は、同14.5%増の14万トンと伸び率が最も高くなっている。なお、EUは2005年10月、ブラジルでの口蹄疫発生に伴い、発生地域などからの牛肉の輸入を制限している。
一方、EUのと畜用生体牛の輸出は、ブラジルからのより安価な生体牛との競合で大幅に減少しており、2005年1〜9月におけるEUの生体牛の輸出頭数は、前年同期比25.6%減の23万7千頭となっている。中でも輸出市場として第1位のレバノン向けは、同期間に同48.2%減と大幅に減少して6万8千頭となった。

EU25カ国の牛肉輸入量(1〜9月)

資料:MLC


EU25カ国の生体牛輸出(1〜9月)


資料:MLC


● ● ● 牛肉の価格および消費量は改善の傾向 ● ● ●

 こうした中で、EUの牛肉市況は改善が進んでおり、2005年9月までの100キログラム当たりの雄牛価格(1〜9月の平均)は、2003年の同期と比較して6.1%高の288.8ユーロ(40,432円:1ユーロ=140円)とかなりの程度上昇した。一方、EU15カ国の1人当たりの牛肉消費量も、各国政府による各種の対策が奏功し2002年以降は上昇に転じている。2003年は、BSEが牛肉摂取を通じ人にも感染する可能性が発表された前年(95年)の20.2キログラムと同水準にまで回復している。


● ● ● 生体牛の輸出補助金廃止 ● ● ●

 2005年12月18日、世界貿易機関(WTO)の香港閣僚会議が農産物などの関税引き下げの具体的数値を記した「細目合意」の達成を2006年4月末とした「香港閣僚宣言」を採択し閉幕した。同会議の中でEUは、2013年末までに農産物の輸出補助金を廃止すると宣言した。

 この2日後の20日、欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、EUの牛肉市況の改善が進み、もはや農家への援助を継続するに値しないとして生体牛の輸出補助金を廃止する意思があることを発表した。これについて、欧州委員会は12月23日、EU牛肉管理委員会にと畜向け生体牛の輸出補助金を廃止する提案を行い、合意となった。

 EUの牛肉生産は、2003年の共通農業政策(CAP)改革による生産から切り離した単一の直接支払いなどにより減少している。牛肉消費量が上昇に転じ輸出が減少する中で、今後はますます輸入が増加する傾向が続くとみられる。


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