2005年1〜9月のEUの生乳出荷量は前年を上回る


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 2005年1〜9月の生乳出荷量、前年同期比1.2%増 ● ● ●

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2005年1〜9月のEU25カ国の生乳出荷量は、前年同期と比較して1.2%増の1億53万トンとわずかに増加した。これを地域別に見ると、EU15カ国は8,772万トンと同期間の伸び率は0.6%にとどまったのに対し、2004年5月にEUに参入した新規加盟国(NMS)は同5.5%増の1,281万トンとなり、伸び率はEU15カ国を大きく上回っている。NMSの生乳出荷量はEU全体の12.7%を占めており、域内の生乳需給に大きな影響を及ぼす存在となっている。

 近年のEUの生乳生産量は、共通農業政策(CAP)に基づくクオータ制度により安定的に推移している。ZMPによると、2003年の出荷量は前年比0.6%増の1億3,155万トン、2004年は同0.5%減の1億3,088万トンとほぼ前年並みが続いていることから、2005年第4四半期(10〜12月)の伸び率は今回公表された1〜9月と比較すると縮小する可能性が高い。

EUの生乳出荷量の推移(1〜9月)

資料:ZMP


● ● ● EU15カ国は上位2カ国がけん引 ● ● ●

 生乳出荷状況を国別に見ると、EU15カ国では多くの国で前年を下回ったものの、生乳生産が最も多いドイツが前年比1.7%増の2,105万トン、第2位のフランスが同2.9%増の1,762万トンとわずかながら増加したことから、全体では前年同期を上回った。なお、ZMPによると、ドイツやフランスなどの酪農家は、クオータ数量を超過することを避けるため生乳生産を減らしつつあるとされる。


● ● ● EUの生乳需給の中で影響力が高まるNMS ● ● ●

 一方、NMSはハンガリーが前年同期比6.4%減の124万トンとかなりの程度減少した以外はすべての国で前年同期を上回った。特に、NMSの中で最大の生乳生産国であるポーランドがEUへの加盟後の乳価の上昇を背景として、同10.4%増の660万トンとかなりの程度増加している。このほか、第2位のチェコが同4.6%増の196万トン、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)が同5.7%増の175万と大きく増加しており、これらがNMSのみならずEU全体の増加に大きく寄与した。なお、昨年の7月下旬に欧州委員会が公表した2012年までの生乳需給予測によると、2005年におけるNMSの乳牛1頭当たりの泌乳量は、2003年と比較して7.3%増の4,866キログラムに上昇すると予測されている。この伸び率はEU15カ国の2倍近くとなっており、このことがNMSの生乳出荷量の増加率を高めている理由の一つと考えられる。


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