成長が鈍化する中国の酪農業


近年の生乳生産は大幅上昇も、伸び率は次第に低下

 米国農務省(USDA)によると、中国における2006年の生乳生産量(ヤギ乳およびバッファロー乳を除く)は、前年比20.7%増の3,380万トンへ大幅に増加する見込みである。しかし、生乳生産の伸び率は、経済発展に伴う生産コストの増大や牛乳消費の伸び悩みなどにより年々低下しており、今回USDAが公表した2006年の予測値も、先に出された予測と比較すると3%程度下方に修正されている。

 中国は乳牛および肉牛の改良を畜産部門の最優先課題の一つと位置付け、酪農が最も盛んな黒龍江省、河北省、山東省および内蒙古自治区、新彊ウイグル自治区などで優良品種の増殖や普及定着に向けた取り組みを行ってきた。2006年は第11次五カ年計画実施期間の初年度に当たり、飼養頭数の増頭をはじめさまざまな畜産振興スローガンが掲げられることが予想されるが、USDAは乳牛頭数の伸びの低下を予測している。

 USDAは、乳牛飼養頭数に占める未経産牛の割合を、2002年の5割から2006年の37%へ減少する見込みとしているが、中国の酪農家は一頭の雌牛を8〜9年間飼養するとされていることから、このことは乳牛飼養頭数の伸びが鈍化することを意味している。また、2004年に中国は13万2千頭の乳用種繁殖雌牛を輸入したが、中国側の説明では能力の問題でその3割は改良に使用されなかったとされている。


乳牛一頭当たりの生乳生産の増加を目標に

 中国は2001年にWTOに加盟し、輸入関税の削減など貿易障壁の低減に努めている。今日では多くの粉乳類の輸入が行われており、中国乳業協会によると、1トン当たりの粉乳類のCIF価格が1,734〜1,858ドル(20万6千〜22万1千円:1ドル=119円)であるのに対し、これから作られる8トンの還元乳と同量の生乳は2,478ドル(29万5千円)と後者が3〜4割高価となっている。こうしたことから、乳業会社は牛乳を製造するために輸入粉乳を使用するケースが増えており、このことが酪農家が廃業する一因となっているとの指摘が強まっている。

輸入粉乳類との競争が激化

 酪農の収益性の低下から乳牛の雌牛価格も下落傾向にあり、現在、黒龍江省における雌牛1頭の価格は2004年の2,106ドル(25万1千円)から1,611ドル(19万2千円)へ大幅に下落している。乳牛1頭当たりの利益も次第に低下しており、現在は248〜372ドル(3万〜4万4千円)となっているとされる。中国では、乳牛一頭当たりの年間生乳生産量は先進国の半分にも満たないことから、USDAは、中国の酪農の目標は今後、乳牛の増頭から一頭当たりの生乳生産量の向上へ移行していくものと予想している。


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